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変身完了!!

「大晴くんはハンマーを頼めるでござるか?」

「ハンマー、よく車に収まりましたね。僕の身長よりはるかに大きいんですけど」

「原作の設定集からサイズは流用しているので、リアリティ満載でござる!」


 僕の記憶が確かならば、チアハンマーは2メートル。

 いくら鍛えているオタクだとは言え、100キロとかあったら無理ですよ。


「……では。ふんっ!」


 気合を入れて、腰を痛めないように注意しながら持ち上げると。


「あれ!? 軽い! どうなってるんですか、これ!?」

「ふふふ。気付いたでござるか。外装はプラスチックで、中身を極限まで空洞化する事により、女子でもどうにか持てる重さに仕上げたでござる」


「確かに。持った感じだと、10キロないですね」

「その分、耐久性に難があるため、取り扱いは慎重に頼むでござる」

「分かりました。こんなハイクオリティなギア、壊したら僕も泣きますよ」


 高虎先輩が両手に小道具を抱えて先頭を行く。

 それに続くのが小早川さんと守沢の女子チーム。

 ホノカは小早川さんのスマホに遊びに出掛けている。


 最後尾を行くのが僕。

 小早川さん、チアハンマーに興味津々で5歩進むたびにこちらを振り返る。

 危ないから、ちゃんと前見て歩いて欲しい。


「では、着替えるでござる! 女子更衣室の場所は分かるでござるか?」

「はい。この間、下見の時に確認しているので、平気です」

「あたしは美海ちゃんに着いて行くよ! 案内よろしくぅ!」


「なにかあったら連絡して欲しいでござる」

『ただいまです、大晴くん! 美海さんのスマホとオンライン状態でこっちに戻って来ましたから、すぐに通信できますよ!』



「ホノカたんは優秀でおじゃるなぁ。尊い」

「ええ。まったくもってその通り」



 こうして、僕たちは男女に分かれて、三次元にさよなら。

 これから限りなく二次元に近づくのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「思ったよりも空いてますね。と言うか、かなり余裕があるような」

「まあ、男性レイヤーの人口比率を考えると、イベントの規模からしても更衣室3つは確保のし過ぎだからね。運営の人に教えてあげたいよ」


 高虎先輩、侍モードをアーマーパージ。

 そして流れるように服もキャストオフ。

 動きに一切の無駄がない。


「ホノカ。僕も着替えていいかな?」

『オッケーです! わたしも着替えているので、お互いに姿は確認できません! 恋人同士でもエチケットは必要なのです! むーむー!!』


 さて、彼女の許可も出たところで、まずはズボンから。

 下はスラックスなので、普通にジーパン脱いで履き替えるだけで変身完了。


 上着は少し面倒。とりあえず全部脱ぐ。

 順序としては、まずシャツを着て、銀色のネクタイを締めてから上着を重ねる。

 19世紀のイギリス貴族がモデルなので、現代の一般的なスーツより若干タイト。


 さらに銀色のマントを羽織り、高虎先輩謹製(きんせい)のマスクをかぶる。

 マスクと言うか、仮面である。

 テイルズオブディスティニー2に出て来る、ジューダスが似たようなのをかぶっていた。

 さてはガチチアのキャラデザ班にテイルズオタが混じっているな。


 僕が仮面を装着したところで、更衣室がざわついた。

 やれやれ。デビュー戦で場を圧倒してしまったか。


「大晴くん、早速注目を集めているな! さすがだね!」

「……いえ。僕も一瞬だけそんなおごりが湧きましたけど。違いました」


 高虎先輩の出で立ちを見よ。

 180センチの長身に纏うは鮮やかなスカイブルー。


 チアレッドが割とフリフリなチアリーダーなのに対して、チアブルーは徹底的に無駄を排除した機能的なデザインが特徴。

 他の2人と違って、ワンピースタイプのバトルコスチュームとなっており、靴下がニーソックスなのもチャームポイント。


「どうしたんだい? 小生はもう完成しているけど」

「やっぱりクオリティが高いなぁと思って。普通、男がヒロインのコスプレしたら、それって女装した男なんですけどね。高虎先輩のこれは、何と言うか、一つの芸術作品ですよ。女装とは完全に別ジャンル」


 ツインテールのウィッグを付けたら、高虎先輩、変身完了。

 既に更衣室にいる数名の男性レイヤーに「すみません、1枚いいっすか!?」と声をかけられている。


 僕?

 なんか変な仮面かぶった、普通の高校生だよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「さて。外に出て来たは良いけど、小早川さんたちはまだかな?」

『ちょっと呼びかけてみますね。……ん? どうしましたか、大晴くん?』



「いや、ホノカのバーニングフォームを網膜に焼き付けておこうと思って」

「ブレないなぁ。大晴くんは」

『もぉ! そんなに画面に近づかれると、わたしも照れちゃいますよぉ』



 確か、ドラえもんのひみつ道具で本の中に入れる靴があったはず。

 その応用で、どうにかスマホの画面に入れないものか。

 帰ったら、親父に研究させよう。


『美海さーん。牡丹さーん? そっちはどうですかぁ?』


 周りに人がいる事を想定して、小声で呼びかけるホノカさん。

 こういう細やかな気配りが、三次元にはなかなかできない。


「あ、ホノカちゃん。こっちは着替え終わったよ。今ね、守沢さんが日焼け止め塗るのを嫌がってるけど、力づくで済ませるから。待っててね」

「ちょ、美海ちゃん! 衣装の中に塗る必要なくない!? ひゃっ! 待って、お願い、ちょっ、まっ!! 胸は良いじゃん! ね、美海ちゃん?」


「もうすぐ仕上がるから。来間くんたちに待たせてごめんねって伝えてくれるかな」

「美海ちゃぁぁぁん!!!」


 そこで通信は途切れた。

 なんか、大丈夫そうである。


「順調そうですね」

「そうだね。初めてはやっぱり、気恥ずかしさが先立つものだから。小早川氏のパワープレイは、そこから守沢氏の気を逸らしてあげる高度な戦略だろう」


『ほわぁー。美海さん、すごいんですねぇー。なんか牡丹さんがもみくちゃにされてましたけど! 作戦なんだぁ!』


 僕たちの共通認識も一致した。

 なんか、大丈夫そう。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「お待たせ。どうかな、来間くん」


 分かっていても心臓に悪い、小早川さんのチアレッド。

 「僕って二次元に入れるようになったんだっけ?」と錯覚しそうになる。

 その後に「ああ、二次元が出て来たんだ」と納得しそうになる。


「良く似合ってるよ。こればっかりは、本当に」

「そっかぁ。えへへ。嬉しい」


「守沢氏、既にライフゲージが黄色いようでござるが、何かあったでござる?」

「べ、別に!? なんかもう、怖いものはなくなった感じ! 地獄ならとうに見た!!」


 ここに集合、ガチチアチーム。


 僕たちは、周囲のレイヤーさんたちと、カメラを抱えた同士たちの視線を一気に集める。



 どうやら、お祭の始まりのようである。

「面白かった!」

「続きが気になる!」

「更新されたら次話も読みたい!」

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新参者ですので、皆様の応援がモチベーションでございます!!


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