学校のクールなヒロインの私服がめちゃくちゃダサかった件
その日は日曜日。
僕は目覚まし時計をかけずに惰眠をむさぼっていた。
ちゃんとホノカの了承済みである。
と言うか、昨晩遅くまで2人でアニメ見ていたせいで、お互いに寝不足なのだ。
ホノカは人間と同じように、ちゃんと睡眠時間を取る必要がある。
人工だろうと知能を持った生命体なのだから、頭使えば休ませる必要があるのも当然。
これまで言及した記憶がなかったため、改めて、ホノカの仕様説明。
そんな僕たちの元へ、朝8時に眠りを妨げる連絡がやって来た。
『ふわぁ……。んん……。大晴くぅん、メッセージが届いていまふ……』
「ええ……。日曜の朝なのに? もう、何となく予想はつくなぁ。日曜の朝から元気な僕の知り合いって、ものすごく限られるもの」
『松雪さんからでふ……。今日、コスプレイベントの会場の下見に行かないかい!? との事ですけど。お返事どうしますかぁ?』
「うーん。衣装でお世話になってる上に、参加の手続きとかも全部任せてるからなぁ。……正直断りたいけど、ものすごく断り辛い」
数分のシンキングタイムののち、「昼からでも良いですか?」と念を押したうえで、下見に同行することにした。
そして、僕もホノカも二度寝に突入。
今度はちゃんと、11時半に目覚ましを仕掛けておいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
出かける時はジーパンにシャツがベター。
変にオシャレしようとして力むと、大概アレな事になるのがオタクの常。
『大晴くん、見て下さい! 梅雨の晴れ間コーデですよぉ! 肩出しのトップスと、フワフワスカートがポイントです!!』
「ホノカは可愛いなぁ! よし、僕もとっておきのネルシャツ出そう!!」
オタクがどうしてネルシャツ、特にチェック柄のものに心惹かれるのかは、残念ながら現在の研究では明らかになっていない。
だけど、忍者の忍び装束よろしく、大衆に溶け込めるからではないかと僕は密かな見解を持っている。
ネルシャツ?
ホノカがやんわりと『今の方が良いです!』と言ってくれたので、クローゼットに叩き込んだよ?
身支度も整ったところで、いざ出陣と気合を入れていると、下の階から親父の声がする。
「おおい、大晴! お客さんだぞー!!」
高虎先輩、わざわざ出迎えに来てくれたのか。
そう言えば、待ち合わせ場所とか決めていなかったな。
待たせちゃ悪いと思い、急ぎ階段を下りて玄関に向かうと、そこには。
「こんにちは。来間くん。ホノカちゃん」
小早川さんがいた。
どうして住所を知っているのかとか、それ以前にどうして日曜日の昼間に僕のところへ訪ねてくるのかとか、聞きたい事は色々あったが、まずは一言。
私服がダサい!!
先日、あれほど見事なチアレッドのコスプレで、僕の心を少しばかり三次元に引っ張った小早川さん。
そのアドバンテージをかなぐり捨てるファッション。
なんかよく分からないアメリカのキャラが描かれたTシャツ。
サイズが合っていないのか、キャラが歪んでいる。彼女の胸部の膨らみで。
スカートに関しての造詣が深いわけでもない僕が言うのも憚られるが、僕しか言えないので敢えて言うけども。
シルエットは普通のタイトスカート。
ちょっと短めなのは、クラスメイトの三次元によってもたらされた情報を律義に守っているからだろう。
問題はカラーリング。
赤とか、ショッキングピンクとか、攻めた色ならまだフォローができる。
永谷園のお茶漬けをほぼ再現している、目に優しくないストライプ模様。
むしろ逆に、どこでそれ売ってるのかな? と疑問に思わずにはいられない。
見つけたら、欲しくもないのに「これ見た事ある!」とか言って、買ってしまいそうだ。
「えへへ。来ちゃった」
「そうか。来ちゃったのかぁ」
オタクって、服を買いに行く服がないとかネタで言うけど、小早川さんにはその自覚がなさそうなのが実に切ない。
この子、僕に三次元で「可愛い」と思わせただけでは飽き足らず、「気の毒」とまで思わせてくるなんて、どれだけ欲張りなのだろう。
『美海さん! おはようございます!!』
「おはよう、ホノカちゃん。わぁ。可愛い服だね。お出掛けファッションだ」
そして、自らファッションの話題に首を突っ込む小早川さん。
もしかして、体を張った高度なボケなのだろうか。
『美海さんも、私服でお会いするのは珍しいですね! 普段遊びに行くときも、だいたいが部屋着ですから! んー! 新鮮です!!』
「えへへ。この服、イギリスのおばあちゃんが送ってくれたんだ。似合うかな?」
一気に触れにくくなった。おばあちゃんの話出すのは反則だ。
僕は考えた。
小早川さんを傷つけず、小早川さんのおばあちゃんも傷つけず、平和的なファッション問題の解決をどうしたら図れるのか。
コスプレイベント会場の下見してる場合じゃない。
とりあえず、高虎先輩に電話だ。
ダメだ。ホノカにバレるじゃないか。
よし、分かった。パソコンからメールだ。
「いやぁ、小早川さん久しぶりだね! 日本で会うのは初めてだ!」
「あ。博士。お久しぶりです。ちゃんとご挨拶に伺えなくてすみません」
「なんの、なんの! 息子とホノカちゃんから様子は聞いていたから、オッケーさ!」
親父がしょうもない世間話で小早川さんの足を止める。
さすがは僕の父親。
咄嗟の判断が早い。これが第一線で戦う研究者の素養か。
僕が自分の限界を超えたタイピング速度でメールを送り終えるまで、昨日食べたマグロの刺身の話で場を持たせてくれた親父に、今は深い感謝を。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「今日はイベント会場の下見に行くんだよね? 実はまだこの辺りの地理に慣れていないから、楽しみなんだぁ」
僕は小早川さんに問いたい。
「そんな装備で大丈夫か?」と。
彼女は表情を変えずに答えるだろう。
「大丈夫だ、問題ない」と。
家の前に車の停まった気配がした。
どうやら、救世主がやって来たらしい。
「なんかさ、高虎先輩が下見に行く前に寄りたいところがあるんだってさ。いやぁ、困った先輩だよね。だけど、仕方がないから付き合おうよ」
「あ、うん。分かった。松雪先輩にはお世話になってるもんね」
君は今から、またお世話になるんだよ。
今回は口に出せないセリフが多すぎる。
敵は『禁句』の能力者だろうか。
これはなんとも、厳しい戦いになりそうである。
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