衣替えだけでカノジョはどうしてあんなに輝くのか
朝の目覚めは、その日を占う大事な瞬間。
僕の起床は基本的にホノカの甘い甘い「おはよう」から始まるので、毎日が最高のスタート。
「大晴! おおい、大晴! 父さんがすごいもの作ったぞ! おおい、起きろよ!!」
かつてない殺意の波動と共に目覚めた僕だった。
そして、あまつさえホノカの「おはよう」を、ファーストおはようを、親父は奪い去る。
『おはようございまふー。壱成博士ー。早いですねぇ。まだ6時ですよぉ?』
「おはよう、ホノカちゃん! いやぁ、いい朝だ! 徹夜して迎える朝ってのは、いくつになってもちょっとテンション上がるよね!!」
僕も仕方がないので、むくりと布団から起き上がる。
「親父……」
「おお! 起きたか大晴!」
「1050年、地下行き」
「なんで!? 息子におはようって言うのはそんなに罪なのか!?」
僕は親父の犯した罪の重さを語って聞かせた。
ギルティである。甘めに見積もってもギルティ。
「いや、まあ悪かったよ。父さんも、ちょっとはしゃぎ過ぎてた。すまん」
「もういいよ。自分の父親にガチトーンで謝られるのもなんかテンション下がるし」
『あ! ああーっ!! 博士、博士! もしかして出来たって、アレですかぁ!?』
「おお! そうだとも、ホノカちゃん! 君に頼まれていた、アレだよ!!」
僕をのけ者にして、ホノカと盛り上がる親父。
これはもう、再びジャッジメントだな。
「早速ネットワークから拾っておいで。一番新しいデータだから」
『はーい! ありがとうございます、博士! 行って来まーす!!』
「親父。前歯、何本折られたい?」
「お前ホノカちゃんの事になると、結構ギリギリだぞ!? 人として!」
2分と36秒でホノカが帰って来た。
なんで分かるのかって? そりゃあ、時計眺めてカウントしていたから。
恋人と会えない時間を数えるのって、普通の事だろう?
『大晴くーん! 見てください、見てください!! じゃーん! どうですかぁ?』
そこには、涼風西高校の夏服を着たホノカが立っていた。
そうか。今日から衣替えなんだ。
6月の2週目から、うちの学校では衣替えの移行期間に入る。
そういえば、僕も昨日、自分の制服を用意したんだった。
『えへへ。大晴くん、さてはホノカのあまりの可愛らしさに言葉がありませんね?』
「うん。もう、死んでもいいかなって」
うちの女子の夏服は、半そでシャツにリボンが付いて、スカートの生地がちょっと薄くなるという、実にありふれたデザイン。
が、ホノカが着ると、もうありふれているはずがないのである。
その豊かな胸が冬服よりも激しく強調されるし、胸のボタンが1つだけ開いているところに、優等生のちょっとした冒険心が垣間見える。
スカート丈は少し短め。
ホノカが『どうですかぁ?』と動き回る度に、裾がヒラヒラと揺れる。
控えめに言って、最高だった。
「親父。父さん。いや、お父様。僕、あなたの事を誇りに思うよ!」
「すごい手の平返しだな。あと、お前な、さっきからすごい勢いで鼻血出てるよ?」
これは僕としたことが、お恥ずかしい。
鼻にティッシュを詰めて、親父の偉業を労うために朝食を作り、ホノカと3人で食べたら学校へ出発。
夏服カップルのお通りである。
三次元よ、頭が高い。
◆◇◆◇◆◇◆◇
教室に入ると、小早川さんの席の周りに三次元の山が出来ていた。
つまり、僕の席が埋まっている。
いいさ。好きにすれば良い。
今日の僕は気分がいいから、その無礼も笑って許そう。
廊下の巡礼へと旅立つ僕とホノカ。
予鈴が鳴るまで「ほら、守沢がたかが三次元の服装についてガチギレしてるよ。実に滑稽だね!」と、校門の方を眺めてホノカとお喋り。
教室に戻って来ると、さすがに三次元も解散していた。
やれやれ。やっと自分の席に座れる。
「おはよう。来間くん」
「おはよう。小早川さん。朝から大変だね。三次げ……クラスのみんなに囲まれて」
「ふふっ。別に、私の前では普段みたいに喋っていいよ? 内緒にする」
「そう? じゃあ、お言葉に甘えて。たかが薄着になっただけで、よくもまあ、あんな風にはしゃげるななぁ。僕にはとても理解ができない」
「あはは。その言い方、来間くんっぽい。でも、ギャルゲーで夏服の差分があったら、コンプリートしたくならない?」
「……確かに。周回してフルコンプするなぁ」
小早川さんは、三次元のヒロインのくせに話の分かるオタクなため、僕の中で未だに扱いについて審議ランプが点ったままである。
節電のためにも、早いところランプを消灯させたいのだが、こればかりは致し方ない。
そして、とりあえず授業クエストを1から6までこなした僕。
昼ご飯を食べた直後に体育を設置した教師には、人の心がないだろうか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『美海さん、美海さん! 夏服、可愛いですね!』
「ね! アメリカではあんまり制服のある学校ってないから、すごく新鮮だよ」
部室でも、未だにホノカと小早川さんが夏服談議で盛り上がっている。
だが、それもやむなし。
どちらも生まれて初めての衣替えなのだから、興奮する気持ちも分からない訳ではない。
あと、ホノカがぴょんぴょん跳ねる度に、スカートの裾がヒラヒラなって、なんだかとても充足した気分になった。
『大晴くん、メッセージが届いています! 松雪さんからですけど、読んでもいいですか?』
「もちろん。お願いするよ」
『ええと、ワタシ高虎さん。今、校門の前まで来ているの。だそうです!』
「あの人も急に来るなぁ。お待ちしてますって返事してくれる?」
『了解しましたぁ!』
10分ほどで高虎先輩が部室にやって来た。
「ホノカたんの夏服、キタコレ!! キタコレ! キタコレ!!」
最初にホノカの衣替えに気付けるその眼力は称賛ものです。
だけど、あんまり僕の彼女を凝視しないでくれますか?
『美海さんとお揃いですよ! お揃い!!』
「おお、小早川氏もよくお似合いでござるよ。小生、少しばかり見惚れてしまったでござる。いやはや、これは参った」
さっきまで「キタコレ」って連発していたのに、侍キャラで通すんですね。
分かりました、お付き合いします。
「今日は、コスプレの案を持って来たのでざごる! ホノカ氏と小早川氏からは希望を聞いていたので、それも踏まえて、色々と詰めていくでござるよ!」
「わぁ。松雪先輩って、本当にすごいんですね」
「高虎先輩の作るコスプレ衣装は芸術品だからね。そこは僕も異論なし」
『むーむー! 大晴くんが認めるなんて、これは本当に凄い事ですよぉ!!』
すると、ドアがノックされる。
違った。アメフトのバンプされる。
「御用改めである! あれ、また開いてる。ってぇぇ、松雪高虎ぁぁぁ!!!」
「守沢氏、おつー。でござる。さて、役者は揃ったでござるよ!」
高虎先輩の最後のセリフに、そこはかとなく嫌な予感を覚えたのは僕だけか。
「なかなか良かった!」
「続きが気になる!」
「更新されたら次話も読みたい!」
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