急募! 三次元ヒロインとの距離感について!
「来間くん。部活、行く?」
「うん。行くけど。放課後だからね」
「じゃあ、一緒に行こう?」
「ぐぅぅぅぅっ!! そうだね!!」
学校のヒロイン、小早川美海が文芸部とか言う謎の部活に入ったと言う情報は、瞬く間に廊下を駆けまわった。
守沢は廊下を走る噂をどうして止めなかったのか。
鬼の副長が聞いてあきれる。これだから三次元は。
「来間! お前、文芸部だったんだな! なあ、それって楽しい?」
隣の席の大川くんが会話にカットイン。
さすがサッカー部で活躍しているスポーツ系イケメン。
インターセプトはお手の物。
彼に悪意がないのは知っているので、無視も出来ない。
だけど、そんな大声で言わなくても良いんじゃないだろうか。
「来間くん! 小早川さん! オレも文芸部に入れてくれ!!」
さらに会話に割り込むのは、エロ山田の異名を持つ細山田くん。
君のインターセプトもなかなか目を見張るものがあるから、柔道部辞めてサッカー部に入りなよ。
「いや、うちの部は新入部員募集してないんだ。僕の代で終わる予定だから」
「へいへい! じゃあなんで小早川さんはオッケーなんだい!?」
さすが柔道部。一度組んだらなかなか離れない。
やっぱり柔道で全国制覇を目指すと良いよ。
だからお願い。もう放っておいて。
「細山田、ヤメてやれよ! 来間が困ってんじゃないか! 小早川さんは特別なんだもんな!? そのくらい、オレにだって分かるぜ!!」
大川くん、ハットトリックをキメにかかる。
邪気がないのは最大の悪意じゃないかと思えてきた。
これは、僕が何を答えても自爆するパターン。
すると、渦中の人物が口を開いた。
「あのね、来間くんには、私が無理言って入れてもらったの。日本の文化について学びたかったから。部室でもマジメに文化について議論しているから、みんなが思ってるような活動じゃないよ?」
ヒロインの言葉は全てにおいて優先されるらしかった。
僕の必死の訴えを聞かなかった細山田くんが「マジか! じゃあ仕方ないね!!」と一瞬で引き下がる。
彼の黒帯がすすり泣く声を聞いた気がした。
「まあ、来間だって男だもんな! 普段から大人しいけど、小早川さんを独占した気持ち、分かるぜ! じゃあ、オレも部活行くから!!」
ハットトリックをしっかりキメて去って行く大川くん。
おかげで、クラスメイトにしか睨まれていなかったのに、廊下を歩く男子生徒にまで睨まれる始末。
しかも、部室に行くまで小早川さんがピッタリ横を歩くものだから、もはやこれはひとつの事故である。
完全な貰い事故。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ああ、疲れた。部室までの道がこんなに遠く感じた事はない」
『大晴くん、お疲れ様です! 美海さんを守りながら歩く姿、ステキでした!!』
違うんだよ、ホノカ。
あれは、小早川さんを少しでも衆目から消したら悪目立ちしないかなって試しただけで、別にボディガード気取っていた訳じゃないんだ。
「えっ。そうだったんだ。ありがとう、来間くん。ごめんね、迷惑かけて」
実際迷惑かけられているんだから、「そうだそうだ!」と野党議員のヤジよろしく元気よく叫べばいいのに。
小早川さんのしゅんとした表情が、ホノカと重なって強く言えない。
「いや、もう、全然平気。僕くらいになると、レディファーストが過ぎて、女子を三歩下がって付いてこさせるからね」
「そうなんだ。来間くん、索敵スキル持ちなんだね。頼りになる」
教室ではクールな表情を崩さず、多くを語る事を良しとしない小早川さん。
しかし、部室に来ると饒舌になる。
そんなに饒舌でもないじゃん? と思われるかもしれないが、既に教室滞在時の3時間分くらい彼女は喋っている。
『ややっ! 美海さん、美海さん! スカートの端に糸くずが付いています!』
「本当だ。ありがとう、ホノカちゃん。あはは、恥ずかしい」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
『わわわっ! どうしたんですかぁ!?』
「ビックリするよ、来間くん」
ビックリしたのはこちらである。
目の前でいきなりスカートの裾を翻すものだから、短めの丈が災いして、チラリと何か見えてはいけないものが見えた気がした。
いくら三次元が僕にとって住むべき世界じゃないにしたって、二次元女子のパンチラに興奮するという事は、条件反射が起きても仕方がない。
ここは、部室の風紀を守るために、厳重な注意をする所存。
「小早川さん。あのさ、ここには男子と女子がいるよね」
「うん。そうだね。私と来間くん。それにホノカちゃん」
「うん。そうなんだよ。つまりね、お互いにエチケットはしっかり持とう」
「分かる。そういうのって日本では重要だって知ってるよ」
『美海さん、美海さん! まだ糸くず取れてないですよ!!』
「あ。静電気のせいかな? もぉ。困っちゃうな」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! それだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
『大晴くん!? さっきからどうしたんですか!?』
「それ知ってる。リアクション芸ってヤツだね」
違うよ! むしろ、小早川さんのやってるヤツが天丼って言うヤツ!!
どうしてエチケットの話をした後に、スカートをバサバサするのか。
クールな学校のヒロインはそんな事しちゃダメでしょう!!
「小早川さん。お話があります」
「あ、はい。もしかして、告白されるのかな?」
「そんな想定をされるのは心外だけど、まあいいよ。大事な事を言います」
「フラグ立つ? ちょっと1回セーブした方がいいかな?」
「スカート!! 僕がいるんだから、もっと気を付けて! そんな無防備にはためかせたり、翻したりしちゃダメなんだよ!!」
『大丈夫ですよ! 美海さん、見せパン履いてますから! 女子の基本です!!』
「ねー。だから、来間くんも気にしないでいいよ」
僕が気にするのに、このヒロインは気にするなと言う。
なんという理不尽。
だから三次元って嫌なんだ。
ギャルゲーだったら「ど、どこ見てんのよ! この変態!!」とか言って、フラグが立つのに。
現実は「どこ見せてるんですか、ヤメて下さいお願いします」だった。
何のフラグ立ててるんだ、僕は。
『美海さんも部室に馴染んできた証拠ですよぉー。普段はビシッとしているので、ここではゆるーくさせてあげて下さい!』
「うん。それは分かるよ。そして、そうしてあげたいと思う。だけどさ、僕の心が緩まなくなるんだよね。そんな、いきなりスカートばさばさやられたら」
「気になるんだったら、見せようか?」
「だぁぁぁからぁぁぁぁ!!! そうじゃないんだよ、小早川さん!!」
三次元女子との距離感が未だに掴めない。
それどころか、どんどん曖昧になっていくような気がして、僕は冷や汗をかいた。
そのあと、「部室でパンチラも、見せパンチラも厳禁だから。やったら僕が部活辞めるよ!!」と、自分を人質に取る訳の分からない論調で、2人を納得させた。
「なかなか良かった!」
「続きが気になる!」
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