学校のヒロイン・小早川美海。ガチオタだった
小早川美海は、帰国子女で、銀髪碧眼。
運動もできて学業も優秀。おまけにモデルみたいなスタイル。
脚は長いし、腰はくびれているし、胸だって大きい。
設定盛りまくり過ぎて、キャラクターとしては失敗作だ。
一般受けは良いだろう。
だけど、僕に受ける要素はこれっぽっちもない。
そう思っていたのに。
まず、ホノカのオリジナルモデルだったという事実で、少し距離を詰められた。
正直、興味が0から1になったくらいの微差だった。
けれど、学校中の女子を全員集めて来ても、僕の興味は0な訳で。
そう考えると、1は微々たるものだけど、0との差は著しいものになる。
そして、トドメの一撃。
これは少々、してやられた。
彼女はオタクだった
これまで、同好の士は、思えば全て同性だった。
そして、彼らとは良好な関係を築き、お互いの好みをリスペクトし合って来た。
二次元の嫁について熱く語り、好きな漫画やゲームについて議論を戦わせる。
生まれる友情。オタクに垣根はないのだ。
そうは言うけどさ、僕。相手が女子だった時はどうするの?
自問に自答できない。僕もそこで困っているんだよ、僕。
とりあえず、一旦現実に戻ろう。
目を閉じて思考世界に閉じこもるのは1分が限度。
それ以上は、死んだのかなと思われるので、注意が必要。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「来間くん。ちょっと聞きたいんだけど。いいかな?」
「うん。何かな? 答えられる事だと良いんだけど」
「あのね、このキャラ知ってる?」
小早川さんが手にしているのは、アニメ雑誌。
小早川さんが指さしているのは、アニメのキャラ。
『ガチで戦うチアリーダー』という、いわゆる萌えアニメ。
萌えアニメとは言え、燃える要素もある、戦うヒロインものでは良作の部類に入るけど、主人公が可愛いので僕の中では傑作の枠に入れている。
というか僕さ、言ったじゃないか。答えられる事だと良いけどって。
オタクとは言え、相手は女子。
しかも学校のヒロイン。
彼女を相手に「チアレッドってマジで最高! 脚がいいよね!!」とか言って良いのか。
多分ダメ。絵的に最悪。下手すると防犯ブザー鳴らされる。
僕が考え込むように、正確には考え込んでいる振りをしていると、小早川さんが言った。
いつもの声のトーンで、いつものクールな表情で。
「私ね、チアレッド。あ、ごめんね。このキャラ、チアレッドって言うんだけど。チアレッドの腰から脚にかけてのラインがすごくいいと思うの。何て言うんだろう、エロさはあるんだけど、上品で、見てて幸せな気持ちになる」
「分かる!!!」
魂が呼応してしまい、僕は慌てて訂正する。
まだ訂正が間に合うのなら、もっと言えば間に合ってくれと思いながら。
「ああ、いや、うん。そういうアレは。うん。とてもいいと思う」
訂正が負うべき責任を放棄するものだから、僕の言葉はふにゃふにゃになった。
それどころか、さらに追い打ちをかけられることとなる。
『大晴くんも好きですよね、そのアニメ! フィギュアも机に飾ってありますよ!』
「ホノカさん!? 待って、それは言わなくてもいいんじゃない!?」
『そうですかぁ? ホノカは、同じ趣味は共有した方がステキだと思います!』
同性なら、とっくに握手している展開なのは分かっているけども。
相手が女子だと言うだけで及び腰になっているのは、ある意味では差別だと、分かってはいるのだけども。
生まれてこの方、三次元の女子を『女の子』として扱った事のない僕に、この展開はいくらなんでもハードモード。
危険物取扱者の資格持ってるからって「爆弾解体しておくれ」とオファーされているようなものである。
無茶を言うな。爆発するよ。
「この前、松雪先輩が来たとき、コスプレしようって話になったでしょ?」
「うん。そうだね。そうだ、そうだ」
話が逸れる。
僕は好機だと確信して、そちらのレールに乗り換えた。
「それで、色々考えてみたんだけど。私、このチアレッドがいいかなって思うの。来間くんはどう思うかな?」
どっちに行っても爆弾が待ち構えている。
初手をミスったボンバーマンじゃないか。
「ど、どう思うって!? いや、別に、良いんじゃない!?」
「私に似合うかな?」
小早川さんのチアレッド姿を想像してしまう。
チアレッドは、短いスカートとノースリーブ、大きめの武器『チアハンマー』が主な特徴。
チアハンマーはこの際もうどうでも良い。
目の前の三次元女子が二次元のコスプレをするところを想像するだけで、血圧が上がって倒れそうになる。
「い、いや、どうだろう。実物を見ないとね。ああ、喉が渇いた。麦茶を飲もう! 小早川さんも飲むよね!」
僕は強引に話を打ち切った。
自分では打ち切ったつもりだったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
麦茶にはリラックス効果があると、林先生の今でしょ講座で言っていた。
まったく興味はなかったけど、今は林先生が救世主に思える。
麦茶を口に含んで、じっくりと香りを堪能。
『実はですね、大晴くんにお見せしたチアリーダーの衣装! あれ、美海さんが着る予定なんですよ!! ほら、わたしと美海さん、体型が同じですから! 大晴くん、すっごく褒めてくれましたよね! 食い入るように見てくれましたよね!!』
「ぶふぅぅぅぅっ」
僕の口からリラックス効果が噴き出した。
『だ、大丈夫ですか!? むせちゃいましたか!?』
「ご、ごめん! 大丈夫! 小早川さんも、ごめん!」
「ううん。私は全然平気。これ、ハンカチ。使って。ティッシュもあるから、私拭くね」
一瞬迷うも、タブレットに麦茶ぶっかけた事実が「早く拭かないと壊れますよ」と警報を鳴らしており、僕は小早川さんのハンカチを受け取った。
そして、てめぇが噴いた麦茶を学校のヒロインに拭かせている事実に気付き、僕は口の中にもう噴き出すものがなかった事に感謝した。
「いや、ごめん。僕としたことが」
『もしかしてー? ホノカのチアコス思い出して、興奮しちゃいましたかぁ?』
ここはもう、そう言う事にしておこう。
これ以上の遅延行為は、命にかかわる。
「そうなんだよ。あれはすごく似合っていたからなぁ。もう、世界で一番!」
『わぁ! 聞きましたか、美海さん! わたしたち、チアレッドのコスプレ、似合うみたいですよ! やりましたね!!』
まあ、そういう解釈になるだろうなと思っていた。
そして、次は小早川さんのターン。
「うん。そうなんだ。来間くん、ああいうのが好みなんだね。勉強になる」
「ごめん! 本当にああいうのが好みで、ごめんなさい!」
「……? どうして謝るの? なんだか、来間くんの事をひとつ知る事ができて、私は嬉しいよ。あのね、もっと、色々そういうお話、したいな」
結局、その日は下校時間になるまで、散々僕の好きなアニメについて語らされた挙句、小早川さんにメモまで取られた。
これはとんでもない事になったのでは。
やっと気が付く僕の危機管理意識の低さに、我がことながらうんざりした。
「なかなか良かった!」
「続きが気になる!」
「更新されたら次話も読みたい!」
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