最終話
無尽蔵に成長し続ける漆黒の宇宙……そこに赤と青の光を交互に輝かせながら、何処へ向かうでもなく移動する白い船体があった。
その白い船体の船上員は七人の女性で構成されていて、船体内部で移動定食屋を営んでいた。
この移動定食屋は『月刊 異世界宇宙定食』という雑誌にも取り上げられられるほど有名で、今までに色んな旅人や、宇宙配送人の心を鷲掴みにしてきた。
……そんなある日、とある惑星から『貴女の定食が食べたいです』という手紙が送られて来た。
その手紙の送り主は、不治の病でもう長くはないとの事だった。
この手紙を受け取った七人の船上員は『この子の為に』と、最高の、最上の定食作りに取り掛かる。
そして、一週間後……遂に最高の、最上の定食が出来上がった。
後は、この定食をあの子の前に届けてあげるだけ……
七人の船上員は早速、定食屋を臨時休業にしあの子のいる惑星に最大速度で向かった。
だが、どこから聞きつけたのか『新作定食を一番で口にしたい』という宇宙セレブや、『あの有名定食屋の特ダネ』として沢山の宇宙マスコミが、移動定食屋の後をつけてきた。
『この最新の定食はあの子の為に……』と、何とか宇宙セレブや宇宙マスコミ達を降りきろうとする、七人の女性船上員達。
しかし、生き物の欲というものは恐ろしく、自分の物にならないものは排除という心の闇を見せつける。
宇宙セレブ達は白い船体に向かって無数のレーザーを打ち、宇宙マスコミ達はそれを傍観するかのようにカメラを回し続ける。
白い船体にレーザーが容赦無く被弾し、七人の女性船上員はひとり、またひとりと命を落としていく……
それでも、彼女達はあの子の為に『新作の定食』を届けようと必死になる。
中には勝てないと解っていても、『時間稼ぎになるならば……』と単身、宇宙セレブ達の中に飛び込み、星になった女性もいた。
不幸にも、船体の修理中に事故で命を失った女性もいた。
白かった船体は見る影も無くなり、かつて七人いた女性船上員達もふたりだけになってしまう。
それでも彼女達は宇宙セレブや宇宙マスコミを振り切り、遂に、あの子のいる惑星の目の前まで来ることが出来た。
しかし、神はここでも彼女達に試練を与える。
いざ、あの子のいる惑星に向かって大気圏突入する白かった船体。しかし、今までに受けた無数の傷がここに来て悲鳴をあげ始める。
少しづつ分解、炎上していく白かった船体……このままではあの子に新作の定食が届けられない、と思った彼女達は急いで脱出口へ移動する。
脱出口へ移動してきた彼女達。しかし、そこにあったのは一人乗り用の脱出ポッドひとつだけ。
その脱出ポッドにひとりを無理やり押し込んだ彼女は、指令室に戻り有無を言わさず脱出口を解放する。
あの子のいる地上に向かって降りていく脱出ポッド。その頭上で崩壊する白かった船体。またひとりの命が失われる。
生き残ったのは、八歳の女の子……
彼女は『新作の定食』とそのレシピを手に、あの子のいる病院に走っていく。
遂に、あの子に届けられた『新作の定食』……あの子は、八歳の女の子の目の前でその定食を、とても美味しそうに口にする。
『新作の定食』を食べ終えたあの子は、八歳の女の子に深々とお辞儀をし、お礼を言葉にする。
涙する八歳の女の子……
あの子は最後にこの定食の名を聞いた。
八歳の女の子は泣きながら、この『新作の定食』の名を口にする。
『この定食の名は……』
『かつれふぉーす』
……おしまい。




