第3匹 あの人の好きな花。
途中出会った荷馬車に乗せてもらい、小一時間ほどで着いた。
入国検査を受ける時、パーティの皆がパスみたいなのを出していた。
何それ、全く知らないんだけど。
もちろん、男性管理官に止められる俺。
何としても通りたいところだ。
だが、俺は今13歳の女の子……俺がされて嬉しいことは、こいつにとっても嬉しいこと。
すなわち……上目遣い……ぶりっ子口調……
「外で無くしちゃってぇ、ダメですかぁ」
自分でやって、恥ずかしいやつ。
「次は無くすなよ。あと、再発行はしっかりな。」
「はぁ〜い」
中身がおっさんであることを加味すると、キモイを通り越してもはや……汚い。
でも、気にしても仕方ないしこれが、最善だろ。
「着いた。」
荷馬車で聞いた話だと、ここは「アルカー王国」という国で、近代的な国が築かれているらしい。
転生先って大体中世の世界観だと思ってたけど、意外とそんなことはないんだなぁ。
外側は国を囲むようにに大きな防護壁が建っていて、
国の中心にはレンガでできた円柱状の建物が建っている。
「あの円柱みたいなとこは、王様が住んでるんだよ。」
女の子(魔法を使う子)が教えてくれる。
「そうなんだ。てっきり秘密結社とかかと……」
「それ全然、秘密じゃなくない?国の中心だし。」
色々なビルが競うように建っているけど、ここはほんとに異世界か?
中世を期待していた俺は少し残念とか思ってしまう。けど、これはこれでハリーポッター感はある。
「バーレヌスっていう国はおとぎの国みたいな綺麗な所なんだ。一回行ってみたいな。」
絶対言わなそうな盾役(男)が言う。
一応、中世感は出しているんだな。
また荷馬車に乗って移動していると、どんどん国の中心が近くに見えてくる気がした。
30分ほどだった頃、円柱は目の前にあった。
そういえばパス再発行いや、発行をしないとな。
そんなことを考えていた。
その時は、数分後に王様の前で直立していることなど、知るよしもなかった。
ということで今。
どうして俺は、こんな所に。
「そなた、名は?」
「ナギです。」
若い男の王様が続ける。
「エレメントを一撃で倒したらしいな。」
俺を見ながら言ってるし、答えるの俺だよな。
冒険者パーティはなぜ俺をこんな所に……
ちなみに、皆跪いているけど、俺は直立している。
「エレメントって、やっぱ強いんです?」
「いや、そこまで……」
冒険者パーティを見ることが出来なかった。
結構弱かったんだな。やっぱり。
「しかし、HPが多いのが特徴で一撃はなかなか」
難しいらしい。
「ところで、そなたはどんな能力を使っているのかな?」
まさか、マグロとは言えない。
な、なんて言おう。とか、かんがえていると、
「言えないならば仕方ないが。」
とか言われた。言わなきゃ行けない感じだ。
というわけで仕方なく、恥ずかしげに言った。
「マ、マグロです。」
「マ、マグロ!?それは、一体どういう意味……」
身を乗り出して言う王様。
そっちなわけねぇだろ。はぁ……
「変化マグロ」
ボカロっぽい可愛い機械音声が聞こえる。
そして、ピチピチと跳ねる音が聞こえる。
王様が椅子に座り直した物音が聞こえる。
王様の輝きを無くした目がため息を誇張させる。
「変化ヒューマン」
王様は何故そんなショックを………。
「そうか、どういう理屈か知らんが努力を続けてくれ。近い日にまた、声をかける。」
その日は、パスを発行して、ホテルに泊まることになった。
ヒロインはいつ出てくるんだろう。
可愛い子がいいな……。
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凪達が帰ったあと。
広い部屋で話す王様と付きの女性の話。
「陛下、まさかあの子狙ってませんよね。」
「ま………さか。そんなことは無いよ。」
「ですよね。それに………」
女性は目を細めて言う。
「あの子は、私が狙ってるんですから。」
「え……」
驚いた王様に見向きもせず朗らかな笑顔で続ける。
「取らないでくださいね。あの子。」
「見境ないな……。」
呆れた顔の王様。
「だって、女の子のくせに男の子みたいに気が強そうで………それでいて可愛いじゃないですか。」
可愛すぎてずるい、と彼女は言った。
そう、彼女の好きな花は白百合だった。
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ホテルで鏡を見てオッドアイだったことに気づいた凪。
一体いつ、ヒロインと会えるのか………。
イカ墨少女 保科舞 の日記
今日は、砂のボールにの後ろ隠れていたら、急に
ボールが崩れて砂に埋まりました。
それに、海の近くの村に行くと、すぐに追い返されました。
今日は、泣く泣く野宿です。