第2匹 マグロと少女と筋肉と……
漁村では今、作物不足が深刻化し始めていて人が増えるのは、喜ばしくないそうだ。
だからって……。鯖の1匹くらいくれたっていいのに。それに、1晩くらい……まぁ、仕方ないか。
というわけで、現在少女放浪中。
大きな草原のど真ん中で、非力な少女1人だけど、幸いモンスターもいない。そして人もいない。
でも、何時間も歩いているのに、建物すら見当たらない。ただ1つ、不自然な砂の球体を除いて。
「行ってみるか……」
近づいていくと、「トゥーン!」と、可愛い効果音が鳴って敵に赤いエンカウントマークがでた。
背筋が凍りつくほどの寒気と、視界に表示された
「レイドバトル開始」の文字。
どうやら、レイドボスとエンカウントしたらしい。
いや、ゴリゴリの1体1だけど……
戦い方はよく分からないので、とりあえず頭の中で、マグロになる自分を思い浮かべた。
すると……
「変化マグロ」と、機械音声が叫んだ。
そして、徐々に体が変化していく少女。
結果、全く需要のない着衣マグロがピチピチと音を立てて跳ねている……最悪な絵面だ。
一体、どうやって戦うんだろう。
その時、ピコンッと音がしてエンカウントマークが消えた。
どうやら今の俺はモンスター扱い、ってある種
化け物の風体をしているやつが言うことではないか……
でも、着衣マグロのままじゃ動けないし、敵も動かない。どうしよう。
そんなことを考えていると、ザッザッと音を立てて冒険者パーティが来た。
四人で組まれたパーティはテンプレ感溢れる、
剣、盾、魔術師、弓で構成されていた。
「なんだよこのマグロ。」
刺しとく?そう言った剣士は悪魔に見えた。
やばいこのままじゃ……
「変化ヒューマン」
「うわっ、マグロが……女に!?」
そんなに驚くことなのか?
剣と魔法の世界なら変身位あるだろ。
「わぁ、変化できるんだ。珍しいね。」
「変化ってそんなに珍しいのか?」
「いや、変化なんて選ぶ人は少ないかなって。
しかも魚介類は。」
「選ぶって?」
「能力だよ、選んでないの?」
そんなの初耳だ、ランダムで能力選ばれたぞ……
3分の3がおまけ能力みたいなのだったぞ。
下着限定の裁縫能力って一体……
とか、どうでもいいことを考えていた。
「一緒に戦わない?レイドボスっぽいし」
「いいけど……」
「敵、強いけど大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。」
とは言ったものの……マグロでどうやって……
そういえば、回遊魚は筋肉ダルマって聞いたことがある。
ってことは、筋肉だけをマグロと同化したら?
早速、筋肉を思い浮かべてみる。
「部分変化筋肉」
きたきた。ということは、ステータスが……
弘前 凪 Lv3 HP20 力180 魔力1
おぉ、力に極振り出来た。
でも基準がないからな、とりあえずバトルを少し観戦してみるか。
冒険者パーティが攻撃をする度にモンスターの頭の上にあるHPゲージがチクチク減っていく。
ほんの少しづつダメージを与え、4割程度ダメージが入った時、敵が回復魔法を唱えた。
「グルグルグルルる」
削れていたゲージは全快し、攻撃が激しくなった。
ちなみに今のは、俺のお腹の音。
なるほど、そろそろ出番かな。
「ツナパーンチ」
気の抜ける機械音声と共に、砂の塊は消え去った。
………一撃だ。恐るべしマグロチート。
ハズレ能力では無かった。
だがいいのか……これで……。
「凄い、砂のエレメントを一撃で……」
「な、なんの能力だ?一撃とか……」
マグロとは言えない。決して。
というか、そろそろヒロインは出てきていい頃のはずなんじゃないか?
まぁでも、その話はまた次回にするか。
とか考えながら、さっきのパーティと一緒に近くの国に向かうのだった。
【イカ墨】の能力士のステータス
保科舞 Lv3 HP20 力7 魔力6
【イカ墨】
【いつでも手鏡】
【早食い・常時空腹】