猫ちゃん’s UP
暇つぶしで執筆。
これは小説と呼べるのか(不安)
ま、いいや。
「ようよう君は元気かい?」
ある日の朝、猫のリブは河土手の草場で横になっている黒猫のムクロに声をかけた。
「ああ元気だば!」
ムクロは真っ黒な毛並みと漢気を醸し出す雰囲気とガッチリした成人猫の体格に似合わない透明感のある透き通った声でリブに話しかけた。
「あいも変わらず変わった喋り方をするねえ君は」
ふふっと笑い、ムクロも自覚しているようでこちらも笑った。
「こりゃ仕方ねえこったば。それにおみゃあも低い声だば? 似合わんちゃ」
そうなのである。リブは低い声に似合わず体格は小さくまるで子猫を思わせる。
もし捨て猫として人間が見かけたら迷わずペットにしてしまうくらいの儚さを感じさせるだろう。
「ところで君はここの居心地はどうだい?」
リブはムクロにいつも聞いている疑問を投げかける。ムクロはいつもの調子で当然のように答える。
「ああ、悪くなーっちゃ、さすがオラの飼い主、オラの好みをわかってらっしゃらあ」
「それを聞いて安心したよ、君は油断するとすぐに消えそうだからね」
「何をいうだばあ? おみゃあも知ってるでよ? オラは消えん。飼い主がオラを思う限り絶対にな」
リブは安心した。実のところ友と呼べる猫は知人を除けばムクロの他に片手で数える程度であり、ムクロ以上に親密に話せる仲の猫は存在しないのだ。
とどのつまりただ自分が安心したいから。それだけ。本当にそれだけのためにムクロの元へ行く。
ムクロは何も詮索しない。ただ話に乗ってくれる。たわいもない平和な話を。
「今日も話せてよかったよ、またここにいてくれ、そしたら明日も行くから、君に会いにね」
別れおしさが少しの真剣味をセリフに含ませたが、ムクロはそれを笑って流した。
「わーっとる! わーっとる! おみゃあは心配しすぎなんだぎゃ。オラは消えん。飼い主の思いが続く限りな」
リブは安堵した表情で微笑みかけた。
「安心したよ。君またやすらぎたもれ」
「ああ、また会おうみゃ」
ムクロは自身の標にすうっと戻って行った。
二時間後、人間の女性が石に手を合わせているのをリブは目撃した。
「これでよし」リブは確かな明日を感じて去っていった。