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これ何て死にゲー?  作者: このは
2/12

2話でも死にゲー

え?こちらも読んでくださるのですか?本当にありがとうございます。

「・・・らぎさん・・・あららぎさん!」


女性の声で目が覚めて、ふと顔を上げると目の前にはディスプレイがあった。


画面には見慣れた表とグラフが映し出されていて、また眠ってしまったんだな。と気づく。


寝ぼけ眼で時計の針に目をやると夜の8時を回っていた。


周りを見渡すといつもの見飽きた事務室に自分と声をかけてきた女性の二人しかいないことがわかった。


「・・・あ、すみません。有難うございます。その・・・あの・・・起こして頂いて・・・」


ここでせっかく起こしてくれた女の子に、気の利いた台詞の一つでも言えたら良いのに、名前すら思い出せない事に気づき、ちょっと気まずい感じになった。


1日中パソコンでの業務なんだ。眼精疲労もピークを越えている。瞼を閉じ、そのままデスクに突っ伏して幾ばくかの時間、夢の国へ旅立つ。誰だって経験したことあるだろう?同じような職種ならさ。


「仕事が終わっているなら、施錠しますのでお帰りください。」


と言われるのも、定番の台詞だ。因みに仕事が終わってなくても同じ台詞で追い出される。どちら選んでも同じ展開になるゲームのイベントみたいだな。とちょっと思った。

しかし、家に帰ったところで誰かが帰りを待ってくれている訳でもないし、帰って何かしたいことがあるわけでもない。独身生活は切ないもんだね。腹も減ったし、一杯寄り道して帰ろうと、会社を後にした。


行き付けの居酒屋が珍しく閉まっていた。降りたシャッターには安っぽい貼り紙がしてある。


「鼻毛が抜けるまで閉店します」


珍しいというか、斬新すぎる理由に驚愕だ。・・・・・・正気だろうか?ただの冗談だろうか。

もしも本気だったのなら、閉店してまで抜きたい鼻毛って一体どんな物だというのだろうか?

ボボボボボとかいう「ボ」が沢山のキャラクターでもリスペクトしようというのだろうか?


そんな人生上、何のプラスにもならない下らない事を考えて路地を歩いていたら、見慣れない居酒屋が目に飛び込んできた。

果たして、こんなところに居酒屋なんてあっただろうか?首をかしげながら暖簾をくぐる。

店の名前は「居酒屋 の武」と看板が出ていた。


「際どいな。いや、アウトか?」


どうしてだろう。何故かそんな台詞が勝手に口からこぼれ出た。

店内は、なんの変哲もない居酒屋だ。幾つかの椅子が置いてあるカウンターに、二人席、四人席のテーブルが適度な間隔に並んでいる。時間も丁度賑わい時だったのかカウンター席が二つしか空いていなかった。

丁寧に料理を作ってくれるイケメンの大将に、忙しく駆け回る愛らしい女将さん。アルバイトなのだろうか?「年齢は大丈夫なのか?」と本気で心配になるほど幼い容姿の少女。アットホームな感じの大衆居酒屋だ。気になったのは、ハロウィンの時期ではないというのに中世を模したコスプレの客層が多かったのと、ビールを注文する時、「トリアエズナマ!」と、最早取りあえずじゃねえだろ?というタイミングでも、そうオーダーしている不思議な連中で賑わっていることだった。

居心地の良い店だったが、明日も朝が早い。簡単に食事を済ませた僕は、女将さんの笑顔に鼻の下を伸ばしつつ勘定を終え表に出た。


ふと店の扉を閉めて思った。ここの路地って、こんなに暗かったっけ?

腕の時計を見るとまだ22時前だ。街灯やビルの明かりが煌々と点いていてもおかしくない時間の筈だ。あまりの暗さに灯りが恋しくなり居酒屋を振り返る。

・・・・・・僕は飲みすぎたのだろうか?「トリアエズナマ」を一つしか頼んでいない筈のなのだが。振り返った先に、居酒屋はなかった。それどころか一寸先も見えない闇が広がっている。


おかしい・・・。


狐にでもつままれた気分だ。実際に狐につままれたことはないが、多分こんな心境の事をそう言うのだろう。ポケットからケイタイを取り出しスリープを解除する。

薄ぼんやりした画面のライトを頼りに周りを見渡してみると、どこかの部屋にいるらしいことがわかる。

大分薄汚れていて長年使っていない様子の机やベッド、棚が無造作に並べられていた。


「どういう・・・ことなんだ?」


思わず声が漏れた。

そして、再度振り返ると店を出た時には暗闇でわからなかったがそこに何かがあった。人だろうか?

形は人だが色が黄色っぽい。そう、古びた彫像の様な「骨」が目の前にある。下から順にライトで照らしていく。精巧な足の骨の模型だ。

脛・膝・腰に至るまで、古い骸骨模型が完璧に作り上げられている。

映画のセットか何かだろうか?背骨・肋骨・手・腕まで、結構なこだわりようだ。

でも実際は「凄い!」などと感心している場合ではなかったのだ。

頸・顔を照らした瞬間、僕の背筋は凍り付いた。


怒涛のように押し寄せる緊張と恐怖で顔面に電気が走ったような気がした。模型などではない。

殆ど面積のないぼろ布をまとった骸骨が、まるで生き物のように口を動かしているのだ!動いている!

腕を前に突き出した骸骨の手は僕の肩を強くつかんだ。思い切り骸骨に引き寄せられるのと同時に、笑うような表情になった骸骨の顎が大きく開かれ僕の首筋に食らいついてくる!

ガシュ!とリンゴ丸かじりの様な音がして、首元から肉が食いちぎられたのがわかった。


痛い!


などという暇はなかった。一瞬のうちに骸骨の顎は閉じ僕は首から大量の鮮血を周囲にぶちまけた。


なんだってこんなことに・・・・・・。


薄れる意識の中、不条理で理不尽展開に文句一つこぼすこともできず、僕は真っ白な世界に墜ちていった。

読んでいただき有難うございました。前置きが長かったですよね?それでもお付き合いいただきましたことに深甚なる感謝を申し上げます。

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