始まりの終わり
「見つかった生存者は全員避難しました。あとは、我々だけです」
「よし、分かった。小隊、番号!」
複数名の自衛隊員達は点呼を取り、全員いることを確認し、撤収を開始する。既に他の部隊や米軍も撤退を開始している。奴等はちらほら見えるがそれを無力化しながら撤退していった。
『全部隊に通達、滅菌作戦は1時間後に行われる。至急退却されたし。繰り返す。滅菌作戦は1時間後に行われる。至急退却されたし』
「全員急ぐぞ!」
「「「「「了解!!」」」」」
隊員達は足を早める。あと少しで町を抜けられる。町を抜けさえすればもう安全だ。滅菌作戦は単に核ミサイルを撃ち込むだけでなく、崩壊後の町での滅却作業などもある。ただ、時間がかかる。
「若狭!危ない!!」
「っ!?」
―――――――――――――――――――――――――
若狭side
「っ!?」
叫ばれ、とっさに避ける。さっきまで俺がいた場所には刀を持ったあの化け物がいた。またお前かよ!最悪の状況になってしまった。
「各員散開!奴等には十分気を付けろよ!!」
隊長はすぐに指示を出した。救援要請もだし、俺は覚悟を決めた。
『こちらチャーリー!やばそうだな!援護する!』
チャーリーは航空自衛隊の上空支援部隊だ。彼らの乗るF-15改はとても強力で高性能。援軍には最高だ。
「よし!皆はやるぞ!ここであいつを仕留めよう!!」
『OK!』
『任せな!!』
『やったるぜ!』
『負けへんで!』
皆は俺に答えてくれた。俺も皆に答えよう、そう思った。ただ、簡単には終わらない。終わらせてはくれなかった。皆が空元気でいること、それは理解していた。誰もが恐怖しているなんて、分かっていた。
一人、また一人と死んでいく。隊員達に焦りが見える。射撃が徐々に乱れていく。もうだめだ、そう思ったときだった。化け物にミサイルが撃ち込まれたのは。
『待たせたな!ここは俺たちに任せてさっさと撤退しろ!時間が無いぞ!!』
「ありがとう!」
俺たちは急いでその場から離れ合流し、退却を急いだ。いくらか進んだところで後ろを振り向いた。航空支援部隊は未だに戦っているようで、まだあの場所にいた。あと少しで街を抜けられる。時間はある、大丈夫だ。俺は少し足を速めた。
―――――――――――――――――――――――――
街に残っていたいくらかの部隊も全て撤退し、核ミサイルが発射された。街の周辺は完全に閉鎖されているので、奴らが出てくる心配もない。ものの数秒で、川名市は消滅した。だが安全のため、しばらくは隔離地域となることが決定した。
これで、パンデミックは終わる、はずだった。