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side千鶴――恋する乙女は忙しい

そろそろ切ないタグとかすれ違いタグとかをつけてもいいかなと思った。

なお、後ろにはもれなく(笑)が付く模様。



そういえば、すっごくどうでもいいことだけど、相手が自分を好きだって信じようとしないヒロインに「わからせてやる」とか言って物理的接触(年齢制限のつく場合もあり)で証明して「……わかったか?」「うん……///」みたいな流れに遭遇すると、笑いがこみ上げてしまうこむるです。あと、「所有印」的な表現とか、作者は全然違うはずなのに判で押したようにおんなじなチッス(その他)のお作法とか。

こういうのって、遡っていったらどこにたどり着くんだろうとときどき考えます。ハーレクインかな?それとも団鬼六――それはないか。

「好きだ……チズル殿――いや、チズル」


 花の咲き乱れる庭園で、その人は熱っぽくわたしを見つめる。


 とくんとくんと高鳴る胸を押さえながら、わたしは彼の視線から逃れるように俯いた。


「うそ……そんなの、嘘に決まって、ます……」


「どうしてそう思う?」


 脳裡を過る、白いドレスの裾が――


「だって、わたし知ってるんです、アルスさんにはあの女性(ひと)が……」


「――彼女のことは、確かに愛していた……愛していると、そう思っていた」


 その後悔を滲ませたような声に、はっと顔を上げると、アルスさんは優しく親指でわたしの目元を払う、それでやっとわたしは、自分が泣きそうになっていたことに気付いた。


「でもチズルに出逢ってわかったんだ。俺が、本当に愛しているのは誰なのか」


 そう言って甘やかに微笑むアルスさんに、わたしの目から再び涙が零れる。


「アルスさん……わたし……」


「チズル……」


 アルスさんの両手が頬を包み込むように添えられて、わたしは、そっと目を……――――








「……最低だ、わたし」


 朝の目覚めは最悪の気分だ。


 ベッドに横になっても明け方ちかくまで眠りは訪れず、やっと眠れたとしても、見る夢は()()()を繰り返し再生するか、さもなくば自分の願望を具現化したはいいけど、目が覚めた後酷く自己嫌悪に陥るか……つまり、総じて悪夢ばかりと言える訳で。


「はぁ……」


 ここ最近、すっかり朝の習慣となってしまった溜め息をひとつ吐いたタイミングで、ドアをノックする音が聞こえた。この客室付きの侍女さん達だ。


 きっと出来ているだろう目の下の隈や、身体の芯に重く残った疲れを無理矢理治癒魔法で誤魔化して、笑顔を作る。


 ――大丈夫。まだちゃんと笑えてる。


 笑わないと――


 皆に……アルスさんに、心配掛けちゃいけないから……






 ()()()、酷い顔で戻ったわたしに、王子は軽く眉を上げただけで、何も聞かないでくれた。


 赤くなった目元に治癒魔法を掛けぽんぽんと励ますように頭を撫でて、ただ静かに側に居てくれた。


 やがてわたしが表情を取り繕えるようになった頃、崩れてしまったメイクの手直しに、東屋まで侍女さんを呼ぶよう手配もしてくれた。


 世の中を斜に見ているような、適当な人みたいな印象でいたけど、なんだか、王子って意外といい人かも――? って思った。


 迎えに来てくれたエドガー達が、なんだかわたしの元気がないと心配するのに「ライトアップされた庭園が綺麗で感動しただけ」と言い訳して遣り過ごし、会場に戻ったけど、この日もやっぱりアルスさんは最後まで帰って来なくて――


 次の朝、アルスさんにいつも何処に隠れてるのか、と冗談混じりに訊ねるレオン君に、じゃあ次の夜会は一緒に探してみる? なんて、笑って。


 ……こうして、わたしの、アルスさんへの想いを必死で押し殺す日々が始まったのだった。






 淡い桜色のドレスを侍女さん達に着付けて貰って――今日のコンセプトは春を一足早く先取り、とのことだ。本日の予定は午前中にこの国の公爵様と会った後王妃様主催の昼食会、午後は神殿を訪問――こうさ、騎士服よりドレスを着る割合の方が高い勇者って、何なんだろうね(遠い目)。


 “何か”をやり切った感のある清々しい笑顔を浮かべる彼女達に見送られて、朝食の用意されている部屋へ――


「あ、チズルだ! おはよう!」


 向かう途中、レオン君と出会った。


「おはようっ、レオン君!」


 わたしを見つけてにぱっと笑い駆け寄って来たレオン君は、ふと眉を潜めるとわたしの顔を覗き込むようにして、


「チズル、何か元気ない……?」


 心配そうな顔で訊いてきた。


「えっ? そうかな――?」


 内心ぎくりとしながら、わたしは努めて平静を装う。そこにレオン君の手が伸びてきて、わたしの前髪をさらりと掻き上げ――


 こつん、とレオン君の、おでこが、わたしのおでこに……


「~~っ!?」


「うーん、熱はないみたいだけど……」


 額を当てたまま、そのように(のたま)うレオン君の吐息が微かにかかってイケメンはやっぱり息も爽やかじゃないとね! 流石だね、でもちょっと距離が、距離が近過ぎるんじゃないでございませんでしょうか、レオン君!?


「あ、あのっ! 大丈夫、大丈夫だから!」


 ぱっと一歩後退り、両手でおでこを隠しながら自分は元気だと主張する。


 うぅ、絶対今わたし真っ赤な顔してるよ……。だから、純正日本人に西洋式のスキンシップは難易度が高いんだって!


「でも、最近なんだか考え事とか溜め息とか増えてる感じするし――」


 心配なんだ、と真剣な目で囁くように告げるレオン君は、いつものやんちゃな男の子のイメージから一転、凄く大人の人みたいに見えて、不覚にもどきっと心臓が跳ねた。


「そ、そうかな……何処のお城でも良くしてもらって凄く快適なんだけど、それでもやっぱり少し疲れちゃってるのかな?」


「ま、連日昼はどこぞのお偉いさんと会って、夜は夜会で愛想笑いして、なんて気疲れするに決まってるか」


「ほんと。最近、わたし早く魔の森に入って夜会まみれの暮らしから解放されないかな、って思う時もあったりして」


 そう言うと、レオン君は可笑しそうに笑った。


「ははっ、なんかチズルらしいな、そういうの」


「でも、野宿が続いたら続いたで、至れり尽くせりのお城生活が恋しくなる自信があるんだけど……」


「あー、絶対俺もそうなる気がする」


 二人で一頻り笑い合って、少しだけわたしの気分も上向きになる。いつも明るいレオン君に感謝すると同時に、わたしが落ち込んでる“本当の理由”に気付かれなかったことにほっとしていた。


 ――そう。魔の森に入って本格的に勇者としての旅が始まるのが待ち遠しいというのは本当。


 勿論、それはレオン君が言うような理由からでもあるのだけど。


 でも。


 一番の理由は――


 夜会で何処かに隠れてしまうでなく、神殿の訪問に興味はないとギルドへの定期連絡に行ってしまうでもなく。


 森の中でなら、アルスさんと、ずっと一緒に居られるから……。







 アルスさんへの想いを自覚した今だからこそ、見えて来るものがある。


「――では、森に入ったら当初の予定通りこのルートで?」


「いや、そこから少し南下するように通ろう」


 朝食の後、わたし達は地図を広げて魔の森に入ってからの予定を確認していた。


 魔の森に着くまでまだもう少しかかるけど、食料や水の準備、荷物の確認等、今から少しずつ進めていっているのだ。


「え? でもアルス、それだと遠回りにならないか?」


 首を傾げるレオン君にアルスさんが顔を上げる――しゃら、と胸元に垂れていた黒い髪紐が微かな音を立てた。


(――あ、)


「そうすればほぼ最短で砦跡に出られる」


「砦……?」


 頷くアルスさん。紐の両端に通された茶色の石が揺れて……。


(ほらまた……)


「――魔の森には、過去の勇者達が討伐の足掛かりに築いたとも、魔王軍が侵略の拠点として築いたとも言われる砦が点在している」


「魔の森にそのようなものが……」


 視界の端に髪紐が映る度、ほんの少し……よくよく注意して見ていないと分からない位に、アルスさんの目が柔らかく細められるのだ。


(やっぱり、あの髪紐は――)


 旅立つ少し前、マリアさんに教えてもらったことがある。


 本当は騎士服の色に合わせた髪紐を用意していたんだけど、アルスさんが絶対にそれを結ばせてくれなかったんだ、って。


 余程思い入れのあるものなのでしょうね、とマリアさんは苦笑していたけど……。


(きっと、あの女性(ひと)から貰ったんだ)


 黒い色が彼女を思い起こさせるのだとしたら、もしかしたら指輪の女性(ひと)は黒い髪、それか黒い目をしていて。


 だとすると、アルスさんがサキちゃんを可愛がってるのって、どこか彼女に似ていて放って置けなかったから、とか――?


(……わたしだって、髪も目も黒い、のに……)



 ――ねえ、アルスさん。わたしじゃ、代わりになれないんですか……?



「最初の砦まで何日か歩かないとならないし、その更に先となると、そんなところまで行って無事に帰って来れるような者もそうはいないから、余り知られていないことだがな。砦ごとの距離は歩きで二~三日かかる程度、これがどこまで続いているかはギルドでも確認できてはいないそうだ」


「成る程……砦を辿るように行けば、野宿の負担も森で迷う不安もある程度は軽減出来る、ということ……か」


「確かに、雨露を凌げる場所があるというだけでも、随分と違うでしょうからね……」


 そう言ってキースさんがわたしに目線を向けて慈愛の微笑みを浮かべる。


「そういうことだ。これは、おおよその目安だが…」


 ひとつ頷き、アルスさんは地図に幾つか×印を書き入れていく。


(っ……)


 わたしは、テーブルの下でこっそりと手を握り締めた。


 アルスさんに気遣って貰えた……!


 それは特別にわたしを、という訳じゃなくて、あくまでもパーティーメンバーとしてだと分かってはいる。


 分かってはいる、んだけど――


(でも、嬉しい……)


 ただの髪紐に落ち込んで、地図に打たれた印に浮上して。


 何となくクラスの人気のある男子や先輩に憧れるのとは全然違う、アルスさんが関わること全て、アルスさんからわたしに向けられること全て――そう、それがどんなに些細なことでも。


 その全てが、こんなにもわたしの感情を揺り動かす。



 もう少し、もう少しだけだから……。



 この旅が終わる迄には思い出にしてみせるから。



 だから、あと少しだけ、このまま貴方のことを好きで居させて下さい――――


餃子って、皮から作ろうとしなければけっこうお手軽……かもしれない。




材料:

・豚のひき肉 100グラム

・キャベツ 200グラム

・おろしショウガ、ニンニク 各小さじ2分の1くらい

・塩 小さじ2分の1

・こしょう 少々

・しょうゆ 小さじ1

・酒 小さじ1

・ゴマ油 小さじ1


作り方:

・キャベツをみじん切りにし、塩少々を振って軽く混ぜておく。

・ひき肉に塩を加えて色が変わるくらいまでよく混ぜ、残りの調味料を入れて混ぜる。

・キャベツをぎゅっとしぼってひき肉に加えて混ぜる。

・皮の中央にスプーン、ヘラなどですくってのせ、まわりに水をつけてひだをよせながら折り畳む。

・油をひいて熱したフライパンに並べ、水(できれば熱湯)を餃子の5~3分の1程度の高さに注いで蓋をし、強~中火で蒸し焼きにする。

・水気がなくなってきたら蓋をあけ、フライパンの底にゴマ油もしくはサラダ油少々をひいてぱりっと焼き上げる。



メモ:


・これで小さめの餃子20~30個くらい?


・キャベツのほかに白菜やニラ、ネギなどを加えてもおいしい。こむるは、冷凍してストックしておいたシイタケの軸を刻んで混ぜたりもする。


・豚のひき肉に対して野菜はだいたい2倍弱、キャベツもしくは白菜に対して他の野菜は3:1な感じで。


・塩分が気になる、もう少し薄味が好き、な場合は、塩揉みに使う塩はひき肉に使う塩から半量を取るとよいでしょう。


・砂糖を加えたい場合は、小さじ2分1~1くらい。


・こむるは、ニラを加える場合はニンニクは入れない。


・酒とゴマ油とショウガを入れれば、とりあえず中華っぽい風味になると覚えておこう。


・羽根つき餃子を作りたいなら、フライパンに片栗粉、もしくは薄力粉を薄く振ってから餃子を並べる。餃子の上から振ると、皮についた粉がそのままになったりするのでこっちのほうがこむるは好みかも。


・ぎゅっとフライパンに敷き詰めて焼くのも素敵だけど、間隔をあけながら並べるのが皮もひっつかないし素人向けではなかろうか。


・皮が余ったらキャンディチーズやリンゴと砂糖、一粒チョコレートなどを包んで焼いたり揚げたりしてパイにする、チーズやソーセージ、トマトソースマヨネーズなどをのせてミニピザにするなど可能性は無限大。


・餡が余ったら餃子ハンバーグに。大根おろしとしょうゆが好き。

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