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side千鶴――夜会の庭で

もうね、辛いのよ。そろそろやめたいのよ、こんなこと。

ことあるごとにシフォンがどうのグラデーションがどうの、編み込みに後れ毛にハーフアップにと、平凡な見た目(自称)で自己評価底辺のくせに、こんなとこだけやたらどや顔で話の流れもぶったぎる勢いと分量でだらだらだらだらと書き連ねるのって、なんか楽しいんですかね。

そもそもね、こむるってファッションセンスないんですよ、とっても残念なんですよ。絵を描いてるときだって、一週間くらいのたうち回って参考資料何ページもめくって服を考えてるわけ。

そんなこむるにまともなファッション解説なんてできるわけないじゃないですかやだー。

いったい誰なんだ、千鶴さんのファッションチェックやろうぜ!なんて言ったの――――自分でした。




お弁当検定してますか、みなさん。どうやら77、90話のあたりを予習しておくとよいらしいですよ。


 わたし達の旅?は順調に進んでいる。



 年越しのパーティーに参加して、何故かブロムステット王国の皇太子様に口説かれたり(いや、ラテンな人的な社交辞令だってわかってるよ!)。


 エドガー達は綺麗なお嬢さん達に囲まれていたり。


 いつの間にかアルスさんが会場から消えていたり。


 次の国に転移魔法陣で移動して国王様に謁見したり。


 公爵様とか侯爵様と会食したり神殿に招かれたり。


 夜会に参加して以下略――



 ……うん。


 毎回思うけど、これって世界の命運を背負った勇者の旅じゃないね。

 むしろ乙女ゲーム(戦い要素なし)の主人公的な……?







 そんなわたし達が今滞在しているのは、大陸の南、風光明媚なことで知られるカファロ王国。


 そしてその王国の風土を模して造られたらしい王城の庭園も、それはそれは見事なものだった。

 今日の夜会でも、会場からほど近い庭だけでなく、庭園全体をライトアップするという力の入れようで招待客を迎えている。


 でも、今のわたしには、庭園に気を取られているような暇はないのだ。


 それは何故かと言うと――



 ――今日こそアルスさんが夜会の最中に何処に行ったのかを突き止めてみせるんだから……!



 そんな決意と共に臨んだ今回の夜会な訳だが。


 あれ、ついさっきまで綺麗なドレスを着たお嬢さん方に囲まれていたはずなのに、今は一人で会場の端の方に移動してる……?

 

「勇者殿?」


 目の端でアルスさんの位置を追っていると、すぐ頭の上から怪訝そうな声が降って来た。


 今日のわたしは、シフォンを重ねたシャンパンゴールドのドレスを着ている。なだらかに広がるAラインのスカート部分は、光の加減によってはピンクがかっても見える。首から背中、手首までを繊細なレースが覆い、そこから先は指輪と一体に繋がったブレスレットへと続く。


 複雑に編み込まれた髪は高く結い上げられ、くるんっとカールさせた後れ毛が絶妙に配置されている。ドレスに合わせてピンクゴールドの髪飾りを挿し、きれい目メイクを施せば、本日の主賓“魔王討伐の旅の途中にカファロ王国に立ち寄った勇者様”の完成。


 ――他の皆は普通に魔王討伐パーティーとしての正装なのに、なんでわたしだけいつもドレスなんだろう……?


 会場に流れる音楽からワンテンポ遅れて、今回は足につけている魔道具のブレスレットがしゃらん、と音を立てた。


「あ、すみませんっ……」


 っと、いけない。うっかりステップを間違えちゃうとこだった。


「ダンスの最中に他の男について考え事ですか? 妬けるな」


「え――?」


 そう言って、彼――この国の第三王子様、ラベンダー色の髪をしたイケメンさんだ――はチョコレート色の目を細め、いたずらっぽく笑った――なんだか、チェシャ猫みたいな印象の人だと思った。


「アルス……といったかな、気になっているのでしょう? 金髪の彼。さっきからちらちら目で追いかけてる」


「っ……!」


 嘘、バレてた――!?


「あ、あの、そういうんじゃないんです! そういうのとは違くてっ」


「ふうん?」


 ちょっと自分でもよくわからないくらい必死になって説明する。ていうか、“そういうの”って何なのさ、自分……。


「アルスさん、群がってくる人達の相手が面倒だって、夜会の度に何処かに消えちゃうんです。一人だけ逃げて狡い……じゃなくて、一体何処にいるのか確かめてみたいなって」


「今後の参考の為に?」


「そうなんです! ……あ」


 はっとするわたしに、王子は愉快気に喉をくつくつと鳴らした。


「なるほどねぇ……でもそれを確かめるのは少々大変なのでは?」


 と、王子が目をやった方を見ると、色とりどりのドレスに囲まれながらもこちらを見ているキースさんとレオン君が。


 因みにエドガーは、王子がダンスの申し込みに来た時一緒にいた王女様――妹君だそう――とパートナーを入れ替わるようにしてダンスを踊っている。


 ダンスフロアから馴染みのある視線を感じるのは、きっとエドガーが時折わたしの方を見ているからなんだろう。


「勇者殿の保護者達も随分と過保護なことだ」


「……わたしがこういう場に慣れていないから、皆心配してくれているんです」


 恥ずかしさに赤くなりながらわたしは答えた。


「何をするにも付きっきりだった頃からは、だいぶましにはなったんですけど――」


 その証拠に、エドガー達以外の人と踊ってもどうにか失敗せずに乗り切れる……どころか、こうやってダンス中に雑談出来る程になったのだから。


 とはいえ、やっぱり緊張はするし、今回みたいに王子様とかどうしても断り切れないような時以外は、結局エドガー達に甘えてしまっている状態だ。


「ちゃんと一人で立ち回れるようにならなきゃ、とは思っているんですけどね」


「向こうが親離れさせてくれるとは思えないけどね」


「え……あの……?」


「ああ、何でもないよ。こっちの話」


 苦笑するわたしに王子がぽつりと呟いた内容は、華やかな音楽にかき消されてわたしの耳には届かなかった。


 でも、確かに王子の言う通り。いつものパターンだと、このダンスが終わったらエドガー達の内の誰かが迎えに来てくれて、そのままフロアを出るか、難しそうなら一曲一緒に踊ってから、ということになるだろう。


 普段なら、一人で周りとの会話やダンスの申し込みに対応しなくていいからとっても心強くて有り難いことなんだけど。


 こっそりアルスさんの跡をつけようとしている今だけは、ちょっと問題かもしれない。


 これ迄の観察と推測から、アルスさんは多分庭園のどこかで夜会をやり過ごしているのだと、わたしは思っている。


 現に、こうやって王子と踊りながら確認している間にも、テラスに近づいて行っているように見えるし。


 で、それの何が問題かというと。


 王子の言うところの“過保護”なエドガー達は、きっとわたしを庭園には行かせてくれないだろうってことだ。

 夜の屋外で足を取られて怪我でもしたら大変だとか、万が一刺客に襲われたらとか、理由は色々。


 でも、だからと言ってエドガー達と連れ立って探していたら、絶対にアルスさん気付いちゃうよね。


 ――いやいや、これはあくまでも純粋に見付かり防止の為であって、あわよくばわたしもアルスさんと一緒に夜会から避難させて貰おうなんて、思ってなんかいない。


 ……思ってないんだってば。


 なんてことをぐるぐると考えていたら、


「会場を抜け出すの、手伝ってあげようか?」


 王子が僅かに身を寄せて来て、耳元で、そう囁いた。


「え……? でも、どうして……」


 きょとんと見上げるわたしに、王子は例のチェシャ猫じみた笑みを浮かべ、


「何だか面白いことになりそうだから、かな? ――それに、どうしようもなく過保護な親には子離れを促さないとね?」


 くるりと曲の終わりに合わせて大きくターンした――アルスさんが、テラスに続くガラス戸の向こうで何か小さな物を手に、愛おしそうに微笑うのが見え――わたしの心臓が何故か大きく跳ね上がり――ふわりと花開いたドレスが元に戻った時には、もうアルスさんの姿はなかった。


「さあ、行こう」


「あ――……」


 王子は、こちらに向かって来ようとしているエドガー達からわたしを遮るようにしながら、実に紳士的な態度でわたしの腰に手を添え、ことさら陽気な声で、


「勇者殿、少しお疲れになりましたか? どうですか、涼みついでに我が国自慢の庭園の散策でも?」


 招待客の中には、この時にしか見られない夜の庭を目当てにやって来る者達も多い位なのですよ、とかなんとか、わたしは拍子抜けする位あっさりと会場を抜け出すことに成功していたのだった。


 庭目当ての人も多いと言うだけあって、幻想的にライトアップされた庭園には、想像以上に沢山の人達がいた。


「うわぁ……凄い……」


 木々に吊り下げられたランプは、まるで星を散りばめたかのよう。


 昼間見たときには清楚に花開いていた冬のバラが、青白く仄光る様はいっそ妖艶ですらあり――


「じゃあ、僕はここにいるから思う存分庭園を“散策”しておいで。もしここを離れないとならなくなったとしても、必ず誰かはいるようにさせるから」


 目を丸くして見惚れているわたしを、程々に人がいなくて、でも会場から離れすぎてはいない一角。そこにひっそりと佇んでいる東屋に案内した王子は、備え付けのベンチに座ってひらひらと手を振った。


「もし道が分からなくなったら、警備の者に「北の東屋で僕と待ち合わせしている」と言ったら通じるから」


「はい、あの……ありがとうございました。なるべく早く戻って来ますから」


「別にそのまま帰って来なくても全然構わないけどね――どうぞごゆっくり?」


 頭を下げるわたしに王子はそう言って片目を瞑って見せた。


「だから、そういうのじゃないんですってば!」


 赤くなった顔を見られないようにと、ぱっと身を翻してぱたぱた走り去るわたしの背中で、笑い声が上がった。






 もう殆んど人はいなくなっても、ライトアップが途切れることはない。

 庭に出る人に貸し出されるショールを胸元できゅっと握りしめ、足元を照らすように設置されたランプを辿りながら、庭園の奥へ奥へと進む。


 ――ヘンゼルとグレーテルは、こんな気分で森を歩いたのかな……?


 やがて、夏には睡蓮が一面を埋め尽くすという池までやって来た。水に浮かべられたいくつもの灯りが、満開の頃はこんな光景なのかなと思わせる。


 池の真ん中には小さな東屋の置かれた離れ小島があって、アーチ状の橋が岸辺と島とを結んでいる。この国に来て二日目に庭園を案内してくれた侍従さん曰く、ちょっとした隠れ名所的なスポットなんだそう。


「あ、いた。アルスさ――……」


 東屋の柱から覗く人影に、急ぎ足で小島に向かおうとして――


「っ……!?」


 次の瞬間、わたしは思わず、近くの茂みの陰に隠れていた。


 何故か鈍い痛みを訴える胸を押さえ、声にならない声で、呆然と呟く。



(――あれは、誰……?)



 甘い笑顔を浮かべるアルスさんに寄り添うように、ふわりとドレスの裾が広がっていた……。




やー、いったいだれなんだろーなー(棒)





ステーキをおいしく食べる


……とはいえ、そんな高級な食べ物を食べる機会なんて年に何回もあるわけでなし。



ざっくりしたステーキの焼き方


・固そうな肉は包丁の背で叩いたりすると、なんとなくそれっぽい気分になれる……かも。


・肉の片面に塩とコショウをふる。けっこうがっつり、できれば粗びき。


・強火で熱したフライパン(テフロンなら油なしでも)に味付けした面を下にして置き、一気に両面焼き色をつける。


・お好みの焼き加減や肉の厚さによって、蓋をして弱火で中まで火を通す。


メモ:

・ニンニクのスライスを使う場合は、黒焦げの炭になる前に取り分けておくとよいでしょう。


・筋切りとか、こむるよくわからない。



おいしいソースを作ろう


・しょうゆとみりん、酒を1:1:1でステーキを焼いたあとのフライパンに入れ、軽くアルコールを飛ばす。



メモ:


・あらかじめ作っておく場合は、肉汁部分をバターやオリーブ油などに置き換える。


・甘めが好きなら砂糖を、塩の鋭さがほしいならしょうゆを少々足す。


・玉ねぎのみじん切りなどを加えてもよいでしょう。


・タイム、またはローズマリーをひと枝入れるのもおすすめ。葉っぱがばらけると食べにくいと感じる人が多いだろうから枝のままフライパンに入れて、ソースができたら取り出す。

ステーキの上にそれとは別に、生のひと枝を飾るとオサレなディナーを演出できるでしょう。


・ソースが余ったら、次の日に食パンや焼いたお餅に付けて食べてもなかなかいける。


・ハンバーグのソースにもグッド。


・お酒を赤ワインに変えるのもよし。なんかモ○バーガーのとびきりなサンドのソースに近い味わいがあるので、おうちで再現してみたいときなんかにもどうぞ。


・オリーブ油にしょうゆを半々でまぜて、タイムをひと枝入れるだけでもおいしい。焼き肉にもなかなかいける。


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