大人げない大人と見た目は子ども、中身は以下略
人気のある作者さんとか、人気のあるジャンルの作品って、けっこうすぐ書籍化するじゃないですか――こむる、実は”書籍化“って言葉そんなに好きじゃないんですけどね、じゃあどう言えばいいのときかれると困ってしまうわけですけど。
話数もしくは文字数がそこまでないような作品が書籍化します!ってなると、こうね、まだ10巻にもなっていないのにアニメ化が決定したジャンプマンガを見るような気分になるんです。
そんなに早く書籍化してしまって大丈夫……?って。
原稿の見直し、書き直し作業、滞る更新、エターな……おや、誰か来たようだ。
そういえば一月の終わりに落書き倉庫に1枚追加してた。
――サキ……
サキ……
よいですか……一刻も早くそのべっこう飴を……
あなたのお友だちに……お供えするのです……
するのです……
そんなしょうもないお告げと共に目を覚ましたサキは、腕を組んでじっとお供え用のテーブルを見つめた。
そして、バターとハチミツ添えのパンケーキをテーブルに乗せる――パンケーキは一瞬で消えて――すぐにそのまま戻ってきた。
サキは“お友だち”の無言の抗議に、パンケーキの上にラズベリーを追加する。
また戻ってきた。
ため息をついてクリームを山盛りにする。ついでにラズベリーも増量してやった。すると、今度はすぐではなく十秒ほど間を置いて、しょうがないからこれで許してやるといわんばかりにパンケーキは消え、もう戻ってはこなかった。
このテーブルに昨日作った飴を乗せるのは、あともう少しだけ待ってもらわなければならないのである――なにせ新年のお祝いなので。
朝っぱらから気の抜けるようなやりとりにやれやれと息を吐いて――そういえば、本当に肩から力が抜けていることに気がついた。どうやら、自分は思ったよりも緊張していたらしい。
「まったくもう……」
回りくどい気遣いのお礼に、サキはクッキーを2枚、空になったお皿に乗せたのだった。
侍女さんたちが、この日のためにと用意してくれた灰色がかった水色のドレスを着て髪もきれいに整えてもらい、サキはナタンと手をつないでお城の廊下を歩いている。
「今日の顔合わせで問題がないようでしたら、年が明けて早いうちに手続きを完了させてしまおうと考えているのです」
「うん」
先日のカティーナ嬢のような面倒を減らすためにも、できるだけ早く「お城をうろついている身元も不確かな子ども(セニエ家の後見予定)」から「お城に遊びに来ているセニエの養女」にランクアップしておいたほうがよいということなのだろう。
そう理解してうなずいたところ――
「そうしたら来月の姫のお誕生日に間に合いますからね。家族になった記念と合わせてみんなでお祝いしましょう」
とにこにこ顔のナタンに、サキはちょっと目を丸くして、それからはにかむように笑った。
「お誕生日のお祝いまでしてくれるの?ありがとう、ナタン」
「当然のことですよ」
ナタンとつないでいる手にきゅっと力が入る。
「うちの者もみな今から張り切っていますし、この城の者たちもなにかしら考えているはずですから、きっと当日は姫は大忙しでしょうねえ」
サキは、これまでは母とふたりで誕生日は祝ってきた――クラスのお友だちを呼んでお誕生会、などといったことは一度もしたことがないので、にぎやかなお誕生会とはどんな感じなのかあまり想像がつかない。
「なんだか、こんなによくしてもらって大丈夫なのかなっていうか……もったいないような気持ちになってくるわ」
「大丈夫なのですよ」
くすくすとナタンは笑った。
今日会うことになっているナタンの家族は、ナタンのお父さんとお母さんにご存知おじいさん。もう一人外に嫁いだお姉さんがいるそうだが、今日は来ていないそうだ。
何百年、下手したら千年近くも生きることのあるベルーカの人たちは、だからといって何十人と子どもが産まれるわけではないらしい。
のんびりな性格なのか、はたまた寿命の長い生き物は子どもの数が少ない傾向にある的な法則なのか――
「ああ、やっと会えた! いつもね、お義父様ばっかりずるいわって言うのだけれど、そうは言ってもわたくしも主人も、こちらに来たら来たでやらなければならないことがあるでしょう?」
そろそろ現実を直視しようとサキは思った。
「くだらないお茶会なんてこの世から消え去ってしまえばいいと、何度思ったことか!」
ナタンの家族はおじいさんと両親、そして今日は来ていないお姉さん一家。
「まだ時間に余裕のあるわたくしだけでも、お義父様といっしょに会いに行こうかしらって考えないではなかったのよ。でも、そうすると主人が拗ねてしまうから。ほら、主人ったらかわいい娘が増えるのをそれはそれは楽しみにしていたものだから」
ということは、部屋に入ったとたん喜びの声をあげて駆け寄ってきて、今は膝をついてサキの両手を優しく握っている、ナタンとそう歳の変わらないように見えるお姉さんは、つまりナタンのお姉さんではなくお母さんで――
「エリーヌ、少し落ち着いたらどうだい、小さなお姫様がびっくりしてしまっているよ」
おじいさんと一緒に座って苦笑を浮かべているお兄さんがお父さんということになる。
なるほど、魔法大国ベルーカ。“外”の感覚で見た目と実年齢を考えてはいけない。
「まあ、ごめんなさいね。やっと会えたと思ったらつい……」
ナタンのお母さんはサキの手を離して微笑んだ。
「はじめまして、サキちゃん。ナタンの母のエリーヌです。仲良くしてくれるとうれしいわ」
「こんにちは、お父さんだよ。お父様でもオリヴィエパパでも、好きなように呼んでおくれ」
お父さんもお母さんの隣に立ち、ナタンとよく似た笑顔を見せる。
「さ、姫。ご挨拶を――」
ふわりとナタンに背中を押されて、サキは丁寧に頭を下げた。
「はじめまして、サキと申します。このたび、縁あってセニエの一員に加えていただけますこと、大変光栄に思います。どうぞよろしくお願いいたします、旦那さま、奥さま――オリヴィエ父さまとエリーヌ……母さま?」
挨拶の最後に、二人を――特にお母さんを――なんと呼べばいいのかちょっと迷って、名前に父さま母さまをつけてみたのだが、そっと様子を伺うと二人ともそう呼ばれたことで大変満足そうにうなずいていたので、どうやら間違ってはいなかったらしい。
「さあさあ父上、母上も。こんな扉の前で固まっておらずに。姫を立たせたままにするおつもりですか。それに、おじい様だけ仲間はずれにしてはかわいそうですよ」
「まあ! でもナタン。毎日のようにサキちゃんとあれをした、これをしたと自慢されてわたくしたちがどれだけ悔しい思いをしたか……!」
着席を促すナタンに、お母さんはかわいらしく(それはもう、かわいらしく)口をとがらせた。
「お気持ちは察しますが――」
「いいえ、毎日サキちゃんに会ってそのうえお茶まで一緒しているあなたにわかるがありません。だいたい、わたくしたちが王都に出てくるのを待つまでもなく、あなたがサキちゃんを領地まで連れてきてくれればよいことでしょう、それを――」
おじいさんへの不満が、いつの間にかナタンに飛び火してしまっている。
困ったように笑ってお父さんはサキの肩に手をやり、おじいさんの座っているソファへと歩きだした。
「いったんああなると長いんだ。こっちにおいで、父さまの隣にお座り、なんなら膝の上でも……」
「そうそう、息子のいう通り。あの二人は放っておいて、おじいさまにもいつものように挨拶をしておくれ」
おじいさんもおいでおいでと手招きをしている。なので、サキはおじいさんに抱きついた。
「ごきげんよう、おじいさま! お会いできてうれしいわ」
「ああ、昨日ぶりだね、かわいいお姫様」
などと言って自慢げな顔をするものだから、お父さんとお母さんからずるいコールがあがり、ナタンは大人げないとおじいさん両親の双方にあきれ返り、サキは、どうやら新しい家族は想像以上に愉快な人たちだったらしいと苦笑するのだった。
階段で転けて首がいたい。
前回からの飴つながりで、キャラメルナッツでも作ろうと思う。
作り方は色々あるけれど、ハチミツとバターの大好きなこむるは(赤いシャツを着た熊さんばりにハチミツをむしゃむしゃしたい)、両方入れたタイプを作るのが好きです。飴部分はあまりたくさんまわりにがりがりしていない感じで。
材料:
・ナッツ(素焼き) 100グラム
・グラニュー糖 40グラム
・水 大さじ1
・塩 ひとつまみ
・ハチミツ 大さじ1
・バター 5グラム
作り方:
・ナッツをフライパンで軽く焼き色がつく程度に炒る。
・いったんナッツを別の容器に移し、ナッツの欠片や薄皮をフライパンをざっと水で流す。
・フライパンにグラニュー糖と塩、水を入れそのまま混ぜずに火にかける。
・大きな泡が落ち着いてうっすらと端が色づいてきたら弱火にし、バターとハチミツ、ナッツを入れてフライパンを揺すりながらかき混ぜる。
・焦げないように注意して水分をとばす。バターでとけた飴が茶色くなってきたかな、くらいで火からおろし、クッキングシートを敷いた金属バットなどに広げて冷ます。
メモ:
・ミックスナッツ、アーモンドのみ、クルミやカシューナッツのみなど、お好みのナッツでどうぞ。
・塩、バター、ハチミツはお好みで入れても入れなくても。
・ハチミツなしで作る場合は砂糖を50グラムにする。
・バターを多く入れると飴部分がでろっととけて広がりやすいので、今回はバター少なめで作っています。気にならない人は倍ぐらい入れても問題なし。
・砂糖と水(それと塩)のみで作るときは、飴が色づく直前くらいにナッツを一気に入れて、がしがしかき混ぜながらフライパンを揺すりましょう。炒飯かペペロンチーノかというくらいに激しくがっしょんがっしょんと。すると、再結晶化した砂糖が白くまとわりつく。
・焦がさないように気をつけながら混ぜて、きれいなキャラメル色になれば出来上り。
・こむるはヘラより菜箸を3~4本持って混ぜるほうが作りやすいかも?
・クッキングシートはそのときになってあわてないように最初に用意しておこう。ロールタイプのやつはくるくる丸まってしまうので、端に重しを置くか、テープではっつけるとかするといいでしょう。
・広げるときはなるべく薄く、バラバラになるように。




