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side千鶴――新たな決意

定期的に剣客商売が読みたくなる病。



最近、おっさん主人公が流行ってますね。前からおっさんはいましたが、ランキングを埋め尽くすほどではなかったですものね。


これは、ラノベ型ファンタジーを書いてる年齢層が上がった、したがって自己投影される主人公の年齢も上がったのか、それとも勇者主人公をやりつくして、パーティーのモブ主人公も飽きて、パーティーの調整役おっさんの順番が回ってきただけなのか。


なんていうか、おっさんならではの切り口とかあんまりなくて、やってることはあんまり変わらないんですよね。あーなるほど、今度はおっさんがざまぁしたりスローライフしたりTUEEEEするだけなのね、はい。みたいな作品が多い気がする。


あと、おっさんはかわいい女の子を育てなければならない宿命を背負っている。


 次の日になって、みんな揃っての朝食。


 そこにはちゃんとアルスさんもいて、いつものように静かな佇まいで紅茶のカップを傾けている。


 レオン君が昨日の用事は無事に済んだのか、とアルスさんに訊ね、それに言葉少なにアルスさんが肯定するのに「そっか、なら良かった!」と屈託なく笑う。


 エドガーも微かに笑みを浮かべて二人の会話に耳を傾け、パンにバターを塗っている。


 キースさんを見ると、励ますようにこくりと頷いてくれて――わたしもひとつ頷き返した。


「あのね、皆……話があるの」






 そうしてわたしは相馬さんのこと、魔族について疑問を抱いたことを話した。


 三人はそれぞれ驚いてはいたけど、そんな話は聞きたくないと席を立たれるようなことはなかった。


 キースさんの言う通り、皆を信じて良かった……。


「なん、だよ……それ……、急にそんなこと言われても、俺」


 混乱した様子で机に乱暴に拳を下ろすレオン君。小さく跳び跳ねた紅茶のカップがソーサーに当たり、カチャンと音を立てた。


 その横で、アルスさんは僅かにではあるが驚いたような顔をして(表情の動いたアルスさんって、凄くレアかも……!)、「そう来たか……」と呟いている。


「まさか、本当に『賢者の手記』を読み解いてしまうとは……」


 腕を組み、苦い表情のエドガーに、しゅんと眉を下げながら謝った。


「ごめんねエドガー……ほんとは、すぐにちゃんと言わないと駄目だって分かってたんだけど……」


「ああ、いや……チズルの戸惑った気持ちは理解できるつもりだ。それに、国にいたときにこの事が他の者に知られていれば、確実に騒ぎになっていただろう。そうなると討伐の旅にも支障が出たか、それとも……」


「やっぱり、そんな簡単に信じては貰えないんだろうね……」


 そうしょんぼりとするわたしに、しかしエドガーは「それだけで済めばまだいいのだが」なんて、酷く不吉なことを言う。


「え、な、何……? なんか怖いんですけど……?」


「……チズルが国や王家にとって都合の悪いことを言わないように、監視は当然として、下手したら城に幽閉――」


 言い辛そうなエドガーに替わり、最初の衝撃から立ち直った様子のレオン君が思いっきり眉間に皺を寄せながら後を引き取る。

 なんでも、王城の目立たない一角には、気の触れた王妃とか表沙汰に出来ないような罪を犯した王族を“一生”幽閉していたとかいう謂れのある塔が幾つか建っているのだとか。……怖っ!


「――だからある意味では、『賢者の手記』が読めることを黙っていたのは良い判断だった、とも言えるのだ……」


 とエドガーは力なく笑った。


「恐らく神殿も、何としてもチズル様を取り込みにかかるだろうと思います。そして、偉大な賢者の言葉を今に伝える“聖女”が顕れたとか大々的に喧伝し、勢力拡大を図ることでしょう」


 そして、身内の恥と言わんばかりのキースさんに、わたしは漸くその可能性に思い至った。


「あ――」


 そう。『賢者の手記』を読めるのが、現状日本から召喚されたわたし一人しかいないということは、わたしが真実『賢者の手記』に書かれた内容を言っているかどうか、他の人からは証明のしようがないということ。


 つまり――


(それって捏造のし放題!?)


 神殿の教義に都合の良いように言わせたり、王候貴族には御布施の額次第で“便宜を図って”あげたり……。


 勿論それは、わたしが城側に取り込まれた場合にも言える訳で。


 城と神殿、何なら有力貴族達とか他の国とで奪い合いになる未来まで見える訳で――


「わ、わたし、そんなつもりじゃ……」


 考えて見れば、ここは魔法が存在する世界で、奴隷制度が残ってる国なんかも存在する世界で、だったらきっと隷属魔法なんてのもある……かもしれない。ほら、異世界もののお約束的に。洗脳魔法とかも見掛けるよね……。


 …………。


 拉致監禁、恐喝、洗脳、奴隷化、権力闘争の駒――そんな言葉が頭の中をぐるぐるして涙目のわたしに、ぽつりとアルスさんが呟く。


「暗殺待ったなしだな」


 はい、暗殺入りましたーっ!


 ザーッと、血の気が引く音が聞こえた気がした。


「チズル! 大丈夫、大丈夫だから。チズルのことは俺が絶対に守るから!」


「レオン、君……」


 身を乗り出したレオン君が、ぎゅっと両手を包み込むように握ってくれる。そこでやっと、わたしは自分の身体が震えていることに気付いた。


「命に換えても貴女を御守りします、チズル様。――本来、信仰を権力の道具にする……その為に誰かの人生を奪うなど在ってはならないことなのですから……」


 手を胸に当てて、祈るように誓うように、真摯な瞳でわたしを見詰めるキースさん。


「キースさん……わたしの為なんかに命まで賭けちゃだめですよ?」


 くすりと笑った拍子に、ぽろりとわたしの目からひと粒零れた涙をそっと親指で払い、エドガーは微笑んだ。


「わたしもいる、チズル。だから心配するな」


「うん、うん……エドガー。皆も、ありがとう――」


 皆の気持ちが嬉しくてお礼を言うと、三人とも照れ隠しなのか目を逸らしたり口元を片手で覆ったりしながら、大したことじゃないと言ってくれる。


 ――また、情けないとこを見せちゃったなぁ……。


「……それで」


「「「「……っ!?」」」」


 めでたしめでたし、なんて字幕が流れそうな雰囲気を切り裂くように、冷静過ぎる声が降りかかった。


「魔族が思っていたような存在ではなかったかもしれないとして、勇者殿――チズル殿はそれを知ったところで“どうしたい”んだ?」


「わたしは……」


 感情の読めない目で見てくるアルスさんは、わたしに何かしらの“覚悟”を問い掛けているような、そんな気がして――


「わたしは、魔族についてもっと知りたい」


 無意識のうちに姿勢を正して、わたしはアルスさんの目を正面から見詰め返していた。


「ううん、知らなきゃいけないんです。だって、倒してそれで終わり、なんて……なんて言うのかな、勇者として何か違うって感じるし……。それで、もし、相馬さんの書き残した通り魔族にもいい人がいて、魔王の世界征服に従いたくないと思っているのなら、その人達に協力したい」


「「チズル!?」」


 エドガーとレオン君が、『賢者の手記』の内容を話した時よりも更に驚いたように目を見開いている。


 キースさんだけは、夕べのうちにわたしの気持ちを聞いていたから落ち着いてるけど……。それでも、やっぱり最初は反対されたんだ。何があるか分からなくて危険だからって。


「それに、もし魔王とも話し合いが出来るなら、手を取り合えないか説得したい……ううん、してみせる」


「そんなっ、危険過ぎる、チズル!」


 がたんっと音を立ててレオン君が立ち上がる。


「魔王がチズルの思った通り、説得に応じるかどうかも分からないのに……。それ以前に、魔の森を抜けるのだって――」


「うん、凄く難しいことだって分かってる」


「だったら……!」


 懇願するようなレオン君の声。


 記録によると、魔王城の前に立ちはだかる魔の森の守りは厚く、歴代の勇者、討伐軍で魔の森を抜けるどころか中層に辿り着けたことすら稀であるみたいだった。


 きっとわたしもそう。本当は魔王を倒すところまで求められている訳ではなくて。



 ある程度魔王軍の力を削いで人類の勢力圏を、均衡を守る。きっと、そんなことを期待されているんだ。


 でも――。


 それで本当にいい筈がない。


 わたしは立ち上り、皆の顔を順番に見た。レオン君だけじゃない、エドガーも、キースさんも心からわたしのことを案じてくれているのが伝わってくる。


 そして、アルスさんは。静かにわたしの“答え”を待ってくれていて。


「やってみない内から諦めたくはないの――皆には苦労とか迷惑とか一杯掛けちゃうと思うけど、わたしは。――わたしは、魔の森を抜けたい」


 深く、深く頭を下げた。


「お願いします、皆の力を貸して下さい」


 そうやって頭を下げ続けていると、やがてエドガーは苦笑混じりに溜め息をついて、


「チズルはもう決めてしまったのだな……。ならば我々も覚悟を決めない訳にはいかないだろう」


 と、何かを吹っ切ったような声で言った。


「ええ、わたくし達で守ればいいだけのことです。魔物からも……そして人々の思惑からも」


「まっ、そうだよな、魔族の脅威を取り除くのは間違いなくいいことなんだから、しがらみがどうこうなんて、言ってる場合じゃない、か」


「皆……」


 顔を上げると、三人は笑って頷いてくれる。



「本当は理解していたのだ――今の勇者魔王討伐の在り方が正しいとは言えないと……」


 ふっと自嘲してエドガーは、わたしの前にやって来て片膝をついた。


「エ、エドガー……?」


「誓おう。今この瞬間からわたしは、国も王族としての立場も関係ない、ただ一個人のエドガーとして、チズルの為に闘う、と」


 そのままわたしの右手を取り、まるで物語の騎士がお姫様にするように、エドガーは手の甲に恭しくキスを落とした。


「ぴゃっ!?」


 ボンッと真っ赤になったところに、今度はキースさんが。


「人心を操作してまで信仰を集めたところで、それは真に神に通じる道ではないと――そう教えて下さった貴女は、勇者というよりむしろ聖女に相応しいのかもしれませんね……」


 神々しいまでの微笑みを浮かべ、エドガーがやったのと同じく跪いて――唇が触れる感触。


「やっ、ちょっ、まっ……」


 あわあわしてるわたしの前にレオン君が……って、もうやめて! わたしの(心の)ライフはゼロよ!


「魔石なんて自前で調達すればいいだけのことだもんなっ」


 にぱっとお日様みたいに笑うと、どこかおどけた仕草で跪き、キ、キス、を――


「俺、何があってもチズルの味方だから」


「あ、あう……」


 もう無理ーっ! 誰か助けて!


 最早顔どころか全身茹でダコ状態でアルスさんを見ると、ごく冷静に眉一つ動かさず何時もの調子で、


「チズル殿の心積もりは理解した。ではそのように動こう」


 とだけ言われた。


 ……いや。別に、ちょっと残念だなとか思ってないから! エドガー達に加えてアルスさんまでその……膝をつかれるとかキャパオーバーだから!


 だから、そんなこと全く思ってないから! うん――。





 因みに、始めの方は緊張で、次は気恥ずかしさで一杯一杯になっていて、この話を給仕の人とかもいる朝食の場なんかでやっちゃ駄目なんじゃないの? ってことに、やっとのことで落ち着いてから気付いたんだけど。


 話を始めた時点でキースさんが防音結界を(実は夕べの話し合いの時も張ってくれていたそう)、内容の重要性に気付いた時点で、レオン君とアルスさんが結界の強化と更には人避けの結界を重ねてくれていたらしく。


 お気遣いに深く感謝すると共に、こう、もっと時と場所を選ぼうよ自分とか、周りに気を配ろうよとか、大いに反省したのでした、まる。


える しってるか おはなばたけは でんせん する



最近、料理に興味が出てきた娘が、週末家族にベーコンエッグを作ってくれるようになりました。

ただいま焼き加減の修行中。




朝ごはんに食べたいラピュタトースト


パズーとシータが食べてたアレ。どうやって剥き身でかばんにしまっていたのかものすごく謎。



作り方その1:

・中央をへこませたもしくはマヨネーズで土手を作った食パンに卵を割り入れてオーブントースターで焼く。


メモ:

・卵は常温に戻しておくとよい。

・温泉卵を使うのも手軽でよい。

・トースターはとりあえず五分くらい卵の様子を見ながら、パンの下側に焼き色がついたらヒーターを上側のみに切り替える。



作り方その2:

・薄くマヨネーズを塗った食パンをトーストする。

・目玉焼きを乗せる。


メモ:

・トーストしてからバターやマーガリンを塗るでもよい。

・ハムエッグやベーコンエッグを乗せるでもよい。



ベーコンエッグの作り方:


・薄切りのベーコン1枚を半分に切り、フライパンでよく焼く。


・2枚並べたベーコンの上に卵を割り入れて蓋をし、やや中火よりの弱火で3~4分蒸し焼きにする。


・お好みの焼き加減で火を止める。



メモ:


・かりかりベーコンが苦手な人は、熱したフライパンにベーコンを並べたらあまり時間をおかずに卵を割ろう。


・水少々を入れて蓋をするとかあるけど、こむるはめんどくさがりなので1分くらいしてから蓋の裏にたまった水滴を落として代用してる。それで黄身に膜が張らなかったら改めて水を入れる。


・黄身に膜みたいに張ってる白身が白くなってピンクがかって見えるくらいが半熟。黄身の縁の白身に透明感があってフライパンをゆするとプリンみたいにゆれるようだと人によっては生っぽく感じるかも。


・黄身が白っぽい黄色になったら完熟。


・蓋をして1分過熱、あとは余熱で火を通す焼き方もあるけど、なぜか他の作業に気をとられてつい火を通しすぎてしまう……。


・黄身のピンク色がきらい、きれいな黄色がいいの!という場合は蓋をせずに弱火で9~10分。




ベーコンエッグの作り方なんて誰でも知ってるよ、だからこんなことでどや顔してんじゃねーよ!と自分で思わなくもない。

こむるは、半熟ベーコンエッグの黄身に穴をあけてしょうゆを1滴入れるのが好きです。もちろんプレーンなのも大好きです。

黄身は最後までとっておいてベーコンで巻いて食べる派。

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