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やっててよかったお茶会ごっこ(悪役令嬢風味)

入力補助機能便利! めんどくさくて見ないふりしてたルビとか傍点が楽に打てる、素敵!

そのうち大修正大会を開催していろいろ直そう。……たぶん。



みなさん、ちゃんと読者目線で小説書いてますか?作者目線でいろいろなあれやこれやを思いやってあげてますか?


ちなみに、こむるは「目線」という単語を「カメラに向けた視線」といった物理的な意味以外で使用することに否定的です。

選挙だのニュースのコメントだのでもうすっかり一般化してしまった感があるので、別に他のみなさんが使うことに反対はしませんが、こむる個人としては積極的には使わないでしょう。


だって、目線って言葉、なんか美しくないんですもの。


視点、視線、観点、立場――まあそれなりに他の言い方はあるものです。



 工房の仕事が終わって、ベルーカのお城の温室まで向かっているところだった。

 奇しくもはじめてカティーナ嬢を見かけた回廊で、ばったり出くわしてしまったのだ。


 どうしたものだろうと、サキは首をかしげる。話が長くなると困る。今日は、おじいさんとお昼を一緒に食べる約束をしているのに。


「精霊の子だのセニエ家が後見するだのと騒ぐから、いったいどれ程のものかと思えば……」


 カティーナ嬢は顔の前で扇をぱしっと開くと、これ見よがしにため息をついた。


「これなら貧民街にたむろする下賎の者たちのほうがよほどましだわ」


 くすくすとカティーナ嬢のお付きの侍女さんたちが笑った。


 案内に立ってくれていたメイシーが気色ばんで一歩前に出ようとするのを、小さく身ぶりで止める。


「――なあに? お前、未来の王妃たるこのわたくしに挨拶ひとつできないの? 無礼者」


 初対面の相手――しかも見た目は子ども――に対して言いたい放題のカティーナ嬢に、いったいどう対応するのがいいだろうかと、首をかしげたままじっと見つめていたのがお気に召さなかったらしい。

 不機嫌そうにカティーナ嬢は吐き捨てあと、すぐに「ああ、もしかして」と何かに気が付いたように眉を上げた。


「“外”の蛮族は人の言葉が理解できないのかしら――?」


 嘲笑がさざめく波のように広がる。


「カティーナ様! そのおっしゃり様はあまりにも失礼では――」


「いいの」


「姫様、ですが……!」


「いいの。下がって」


 憤るメイシーをどうどうよしよしとなだめ、改めてカティーナ嬢に向き直った。


「ごきげんよう、カティーナ様。この度縁あってセニエの末席に連なることになりました、サキと申します」


 にっこり笑い、ドレスをつまんで膝を曲げる。


「あら、そう。それなりに見られるじゃない。……まあ、犬でも仕込めば芸のひとつも覚えるでしょうから?」


「まあカティーナ様、それでは犬がかわいそうですわ」


「ええ、そうですわ。“外”の野蛮人などと比べては……」


 すかさず、お付きの侍女さんたちの追撃。なんとも見事な連携である。


(背すじは伸ばして笑顔を絶やさず、声ははっきり、でも大きすぎず……)


「ご存知の通り、わたしは“外”から来たばかりでベルーカの作法()()明るくないのです、どうかご容赦くださいませ」


 お城のお友だちとお茶会ごっこで遊ぶときのことを思い出しながら、努めてにこやかに振る舞う。


「カティーナ様のご高名はアルス陛下や兄からかねがね伺っておりましたの、ええ。――特に王城の“交流会”に参加なさったときのことなどは」


 ちょっと首をかしげてみせると、カティーナ嬢の目元がぴくりと動いた。


 サキは、別に喧嘩を売る方でも好んで買う方でもないが、だからといって全く買わないというわけでもない――とりわけ、サキの大好きなアルスに関わってくることなら、一歩も引かない覚悟である。


「陛下のご学友、未来の側近候補選びの場でもある交流会に、()()()招かれるほどに()()()()カティーナ様ですもの。もちろんご存知だとは思っておりますが、幸いなことに“外”とベルーカの言葉にはほとんど違いがないのです。元をたどれば同じひとつの国に行き着くからでしょうか、大変ありがたいことでございますね。カティーナ様には過分にお心遣いいただいたようで、痛み入りますわ」


 こういった嫌味の応酬の場においては、いかに慇懃に、あからさますぎず遠回しすぎず、一見誉め言葉のように聞こえてしかし明らかにけなしているという、ぎりぎりのラインを攻められるかどうかが胆、なのだそうだ……(ある日の「お茶会ごっこで実践するいじめっ子対策講座」より)。直接的な言葉を使っているようでは、言質を取られることにもなりかねず、二流、三流なのだとか。


「言わせておけば……」


 カティーナ嬢の、扇を持つ手に力が入る。


「陛下は物珍しさからお前をかまっておられるだけ、どうせすぐに見向きもされなくなるでしょうよ。ちょっとちやほやされたからって調子に乗らないことね!」


「――カティーナ様」


 サキはすっと無表情になり、鋭くカティーナ嬢を見つめた。


「たとえ()()わたしがどのように見えていようと、精霊の子として陛下直々にお声をかけていただき、セニエが後見しようという事実、そこに何があるのか――本当に、()()()()()()()()()()()?」


 そんなだから、お友だち選び第一次選考に落ちるのだと、言外に込めたのが伝わったのか、さっきからかわいそうなことになっている扇がさらにきしんだ音を立てた。そろそろ壊れそうだ。


「生意気なのよお前、蛮族の分際で……!」


 柳眉を逆立ててカティーナ嬢は手を高く振りかざし――


(あ、想像以上に沸点が低かった――)


「お待ちください、カティーナ様――!」


「姫様!」


 さすがにそれは止めようとカティーナ嬢お付きの侍女さんたちが手を伸ばし、メイシーがサキを庇おうとするが間に合うはずもなく、サキの顔めがけて叩きつけられた扇はその直前、乾いた音を立てて弾け飛んだ。


「何、が――」


 結界に弾かれた扇で痛めでもしたのか、手を庇いながらカティーナ嬢はサキをにらむ。


「……何をしたの、お前」


「あら、カティーナ様は魔法――魔道具にお詳しくない……?」


 心臓はまだどきどき鳴っているが、平気なふりで首をこてりっと倒した。


 かっと顔を紅潮させたカティーナ嬢が、今度は素手を振りかぶろうとしたその瞬間、


「怪我はないか? サキ」


 虚空からあらわれたアルスに、サキは抱き上げられていた。


「アルス」


 今日のアルスは、最近すっかりおなじみになりつつある緑と白の服――お仕事ご苦労様です。


「うん、大丈夫そうだな」


 アルスは、ひととおりサキの様子を確認して優しげに笑いかけ、それから一転して冷たい目でカティーナ嬢に目を向けた。


「ペンダントの反応があったから来てみれば……。カティーナ嬢、サキに何をした?」


「へ、陛下……ですが元はといえばその娘が無礼な態度を……!」


 それまで急にあらわれたアルスに呆然としていたカティーナ嬢は、必死に言い募ろうとするが、


「わたしのことを言葉もわからない野蛮人だと、最初に馬鹿にしてきたのはカティーナ様だわ」


 口を尖らすサキと深く吐かれたアルスのため息に、怯んだように一歩後ずさる。


「――城内で、それも子ども相手に暴言を吐き、手を上げるとは」


「そんな、そんなことはけして……」


「カティーナ嬢」


 その視線に負けないほどに冷え冷えとした声。


「サキは、防御の結界が張られる魔道具を身に付けている。そして、それが発動したらわかるようになっているのだ」


 つまり、今ここにアルスがいることこそが、サキに暴力が振るわれた証明なのだと――


「ですが、ですが陛下」


 青い顔のカティーナ嬢はそれでもなんとか切り抜けようと、祈るように手を胸の前で組んでアルスに訴えかける。


「わたくしは、陛下の――」


「婚約者だから、次期王妃だから何をしても許されると?」


 びくりと、カティーナ嬢の肩が揺れた。


 騒ぎに気づいた誰かから知らせが行ったのだろう、ナタンとタニアが後ろに何人も引き連れて回廊にやって来るのが見えた。


「これまでは、さして実害があるわけでもなし、関わるのも面倒だとそのまま放置していたが――」


 一瞬サキに視線をやってからアルスは続ける。


「金輪際、カティーナ嬢がわたしの婚約者だなどと、そのような()()を口にすることのないように」


「そんな、だって……」


「ファーレス家令嬢カティーナ様」


 カティーナ嬢の前に立ったナタンが冷ややかに告げた。


「我がセニエ家の――陛下から大切にお預かりしている姫への行い、許せるものではありません」


「わ、わたくしは別に」


「セニエ家から正式に抗議が行くものとお思いください」


 動揺を隠せないカティーナ嬢たちのまわりを、衛兵たちが取り囲む。

「今日のところは、どうぞお引き取りを」


「な、何をするの、無礼者! わたくしを誰だと――」


「お引き取りを」


 迅速かつ丁寧にカティーナ嬢たちは()()()()()されてこの場から退場し、あとにはサキたちと数人の侍女さんたちが残った。


「……なんていうか」


 サキとアルスは顔を見合わせ、大きくため息をついた。


「疲れたわ」


「だから、あれに関わるとろくなことにならないって……いいや、行こうサキ。今日はナタンのとこのじいさんと昼を食べるんだったか、場所はどこだ?」


「えっとね、向こうの温室――」


 庭園の方を指さすと、わかった、と言ってアルスは歩き出す。


「大丈夫だったか? 嫌なことたくさん言われただろう」


 心配そうにサキを見るアルスにおでこを合わせて、ぐりぐりと前髪をこすり付ける。


「たしかに強烈だったけどね、わたしもだいぶ言い返しちゃったし、平気よ。それにね」


 サキははにかむように笑った。


「こんなこと言うと怒るかもしれないけど、こうやって夜じゃないのにアルスに会うことができて、ちょっとだけあのお姉さんには感謝してるの――え、なに、ちょっとアルス苦しいんだけど」


 ナタンはメイシーから詳しい事情を聞くのに忙しいし、タニアは侍女さんたちに食事の追加やおじいさんへの連絡の手配で手が離せない。助けを期待することもできず、サキはアルスに抱き締められるままでいるしかないのだった。






「アルス、向こうに戻らなくてもいいの?その服、お仕事中だったんでしょ」


 結局、こちらからキスを贈ることで解放してもらうことに成功し、サキはさっきから気になっていたことをたずねた。


 なぜだか、このままアルスもおじいさんとのお昼に参加する流れになっているような気がするのだ。


「別にかまわんだろ、どうせあっちにいたところでお偉方との食事会だ神殿の視察だと、俺が一日いなかったところでなんともないさ」


 なるほど、華々しく魔王討伐に旅立った勇者さまがたは、そんな日々を過ごしていると――。


「だから……どうした、なに笑ってるんだ、サキ」


「え?ああ、ごめんなさい。なんだか、アルスが王さま王さましてるとこ、はじめて見たなあって」


「はじめてって、ひどいなあ。俺は今この瞬間だって王さまなんだけどな」


 あんまりなサキの言いようにアルスは苦笑する。


「アルスって、王さまのときは自分のこと“俺”って言わないのね」


「あー、それなあ……ナタンのやつがうるさいんだよ、あとタニアも。そうは言われても、余とか朕とか我とか……こう」


 恥ずかしくて、と目をそらしながら聞こえるか聞こえないかの声で言うアルスに、サキは自分の場合だったらどうだろうかと想像してみた。


「わたしも、自分のこと妾とか言えって言われたらちょっと……」


 ――だいぶ頑張って、いいとこ“わたくし”までかな。


「えーっと、こういうときはどうすればいいの?」

「お姉さまの持っている本によれば、こけたふりをしてドレスに紅茶をかければいいそうですわ!」

「反対に紅茶をかけられてしまったときは、ことさら儚げに、あと健気に振る舞えば完璧でしてよ!」


 こんな会話が繰り広げられるお茶会いやだ。





前回からの和え物つながりで、ごま和えについて熱く語る。


好きです、ごま和え。かつおぶしとしょうゆのおひたしもいいけれど、でもやっぱりごま和えが好き。

練りごま、すりごまも手軽でいいけど、ぱちぱちのごまを自分でこれでもかと擂るのが一番。多目にごまを擂って、茹でた野菜にたっぷり乗せる贅沢。なんて素敵。

白菜、ホウレン草、サヤエンドウ……アスパラガスもおいしい。いろいろあるけど、こむる的ベストはサヤインゲンですかね。

味付けは、白だしとかめんつゆとかまあ適当にすればいいと思うけど、砂糖としょうゆ1:1――よりちょっとしょうゆ多目に勝るものはないと信じている。



ホウレン草とニンジンとモヤシのごま和え


材料:

・ホウレン草 ひと束

・ニンジン 3分の1本程度

・モヤシ 2分の1袋程度

・ごま

・砂糖

・しょうゆ



作り方:


・ニンジンを拍子木切り~せん切りにし、茹でる。茹で上がりが同じタイミングになるようにモヤシを入れる。


・引き上げたニンジンとモヤシを、熱いうちに擂って味付けしたごまと和える。


・そのままの鍋でホウレン草を茹で、冷水に取る。水気を絞って食べやすい長さに切り、ごま和えに加える。



メモ:


・モヤシは太いほうがこむるは好き。


・ホウレン草については85話参照。


・時間をおくとすっごい水っぽくなるので、その日のうちに食べきるのがおすすめかも。


・茹でたニンジンとモヤシは白だしやめんつゆで下味をつけておいて、食べる直前に水気を切ってホウレン草、味付けしたごまと和えるのもよいでしょう。

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