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悪役令嬢というほどではない――たぶん

溢れんばかりのちーとぱわぁを手に入れて異世界を闊歩する、もしくはスローライフを満喫する主人公に欠かせないもの、それはモフモフである。

鱗うろこしている場合もあり。

適当なイベントを起こしてかわいげな毛玉(鱗)がキューキューとかニャーニャーとか鳴いていれば、それだけで文字が稼げる、モフモフかわいい!と人気も稼げる。あざとい、なんてあざといんだ……!


もちろんこむるもマスコットキャラの参戦を検討しましたとも、ええ。

子犬子猫よりも大型犬デブ猫のほうが好みなこむるですから、でっかいオオカミとかトラとか黒ヒョウとかユキヒョウとか……

でも、それを出したところでどうなる?とセルフツッコミが入って終了しました。だって、あざといマスコットを登場させてもあざとい行動をとらせるのがせいぜいで、ちゃんとストーリーに絡ませるだけの技量がこむるにはないんですもの。



ていうか、最近不思議に思ってることなんですけど、モフモフって単語はいつ頃から普通に使われるようになったんでしょうね。

「――こうして、ユート王は頼もしい仲間と共に旅の途中で助けた人々を守り抜き、この地にたどり着いたのだよ。そして、一足先に逃げ延びていたお妃さまとも無事再会し、みんなで力を合わせて森を切り開き国を築き上げた――ユート王と、王の忠実な六人の仲間が興した家は何と呼ばれているかはもう知っているね。……そうそう、最古の七家だ。みんなよく勉強している、感心だね」


 おじいさん――マティアス・セニエ氏、御年……八百歳にはまだなっていないらしい――のお話が終わると、じっと息を詰めて聞き入っていた子どもたちは一斉に大きくため息を吐き出した。


「ああ、よかった! お妃さまが悪い王女さまに追い出されたときはどうなることかと」


「セニエのおじいさま! 悪い王さまが”しょうかん“した勇者さまはそれからどうなったのですか?もとの国にお戻りになったのでしょうか」


「でもユート王と友だちになったんだから、そのままここに残ったのかもしれないよ」


 暖炉脇に置かれた大きなふかふかの椅子に座るおじいさんは、うんうんとうなずいて子どもたちの疑問に答える。


「みんなに、いいことを教えてあげよう――勇者さまの名前はキョウヤ・アトリというんだ」


「アトリ……七家の!」


「じゃあ、勇者さまは――シドニー長官さまのご先祖さま!」


 子どもたちは、向かいのソファに並んだり絨毯にクッションを置いて座ったりと、思い思いの場所を陣取っている。

 そしてサキはといえば、おじいさんの座る椅子の――というより、おじいさんの膝の上にちんまりとおさまっているのだった。


「セニエのおじいさま、次はお姫様が出てくるお話をしてくださいませ」


「それより、騎士とドラゴンのお話がいい!」


「そうだねえ、それなら、はぐれドラゴンの生け贄にされた精霊の子と、彼女を救った勇敢な騎士のお話はどうかね?」


 わっとみんなは期待に満ちた声をあげた。






 楽しいお遊びの時間は終わり、子どもたちがそれぞれの家の人に連れられていったあと、サキはおじいさんと手をつないでお城の中を歩いていた。セニエの家の人が待っている控え室までおじいさんを送るのがサキの仕事なのである。


「ねえ、おじいさま、おじいさま」


「どうしたね、お姫さま」


 サキは隣を見上げ、今日聞いたお話で気になっていたことをたずねてみた。


「賢者さま――ユート王の子孫が王さまをしている国が“外”にあるの」


「ああ……なるほど」


「でも、ユート王はお妃さまを愛していらしたのでしょう?」


「そうだね、王は大変な愛妻家だったと伝えられているね」


 少しの間、沈黙が支配する。


「……たしかに、ユート王には騙されて王女さまと結婚していた時期があったらしい――あまりそのことを彼は語りたがらなかったそうだがね。しかし、王はお妃さまを裏切るようなことはなかったと誓って言ったそうだから、その“外”にいるという王の子孫は……」


 全くのでまかせか、それとも件の王女さまが、ユート王に目や髪の色が似ている相手との間に子どもを作って彼の子だと言い張ったか――


(うーん、闇は深い……)


 垣間見てしまった“何か”に恐れおののきながら、ふたり絨毯の敷かれた廊下を歩いた。






 おじいさんと別れた帰り道、中庭に面した回廊にさしかかったとき――


「――陛下がいらっしゃらないって、どういうことなの!?」


 神経質そうな女の人の声が響きわたった。


 思わず足を止めて回廊の向かいに目をやると、豪華なドレスに身を包み、赤みがかった金髪を見事なまでの縦ロールに巻いたお姉さんが、周りの制止を振り切ってどんどん先に進もうとしているのが見えた。


「どうかお待ちを、カティーナ様!」


 追いすがるお城の人たちを、お姉さんが無礼な、と一蹴する。


「お前たち、わたくしに指図しようというの? 次期王妃である、このわたくしに?」


「ですが陛下は――」


「婚約者たるわたくしが、陛下にお会いするのに、なぜ邪魔をされなければならないの! もういいわ、お前たちでは話にならない」


「あ、カティーナ様――!」


 つんと顎をそらして去っていくお姉さんとそのお付きの侍女さんたち、慌てて追いかけるお城の侍女さんや侍従さんたち。


「……強烈なお姉さんだね」


「ファーレス家のご令嬢、カティーナ様でございますね」


 右から左へと首を動かしてお姉さんたちを見送りながらサキが感想を述べると、付き添ってくれていたメイシーも、どこか呆れたような声で応えた。


「ファーレス家……」


 いつだったか、タニアが話してくれた中に名前が出てきたような気がする、たしか最古の七家には劣るもののけっこう有力な家だったっけ……いや、それより気になるのは――


「アルス、あのお姉さんと結婚するの?」


「まさか、とんでもない!」


 即座に否定が返ってきた。








「ファーレスのカティーナ嬢……」


 焼きたてかりかりのワッフルに生クリームとキャラメルソースをトッピングしながら、アルスは苦虫を噛み潰したような顔になる。


「――報告にありましたね、そういえば」


 その向かいでは、ナタンも同じような表情でワッフルの上にシロップ漬けのベリーを山盛りにしていた。


「なんかね、あのお姉さんってばアルスの婚約者さんらしいのよ」


 不思議よね、とワッフルに乗せたバニラアイスを顔に見立ててチョコレートソースで猫の絵を描いていると、頭の上から「勘弁してくれ」と盛大なため息が降ってきた。


「ファーレス家は、なんと言いますか――とても“元気”な派閥の中心的存在なのですよ」


「なんとなく想像できるわ」


 そして、きっと自分たちの一派から王妃を出すことにもたいそう意欲的なのだろうなと、昼間の一件を思い返しながら眉を寄せた。


「非常に忌ま忌まし――いえ、彼らにとって喜ばしいことに、カティーナ嬢は陛下の婚約者候補――とはいえ、実際には陛下との魔力の差がありすぎて候補のそのまた候補止まりだったわけですが――その中では最有力候補とされていました。ですが……」


「俺、あいつ嫌いだから」


 ぎゅうぎゅうと膝の上に乗せたサキを抱き締めながらアルスが宣言する。


「アルス、お茶がこぼれちゃう」


 飲みかけの紅茶をテーブルに戻して抗議するが、聞き入れてはもらえなかった。


「――と、陛下はご覧のとおりですし」


 苦笑してナタンは続ける。


「それに、最有力というのも“魔力のみを見た場合の”という注釈付きでしたし、カティーナ嬢が選ばれることはまずなかったでしょうね」


「そうなの?」


 そこまで断定できるのはなぜだろうと、サキは首をかしげた。


「ええ――わたしや陛下が子どもの頃にも王城で“交流会”が開かれていたのですが、彼女……カティーナ嬢は二度目以降は姿を見せなかったのです」


「それってつまり……」


 ぱちぱちとまばたきし、“交流会”に“参加できない”ということが何を意味しているのか考える。


「あのお姉さん、アルスの“お友だち”になれなかったのね」


 主だった家の、年の近い子たちを集めた“交流会”――サキが“外”の出身であることや、魔力が少ない(ように見せている)ことでサキを馬鹿にしたり仲間外れにしようとする子――そんな“合わない”子たちはいつの間にか交流会に姿を見せなくなっていた。


 なんとなくではあるが、相性とかほかの子への態度とか、そういったものを試されていたのではないかと感じている。


 アルスの世代でも、きっと同じようなことが行われたのだろう。それも、サキのときなどとは比べ物にならないくらい厳しく“お友だち”が選ばれたのに違いない。


 その選考に一回目で落とされたのなら、なるほど、ナタンがお姉さん――カティーナ嬢がアルスの婚約者に選ばれるはずがないと言い切るのも納得できる――ような気がする。


 しかし、だとしたら、だとしたらである。


「あの自信がどこから来るのか謎だわ……」


 たしかにカティーナ嬢は、なかなかの美人さんではあったけれど。でも、たぶんそういう問題ではない。


 向かいとすぐ後ろで、ため息がふたつ重なった。


(あ、ワッフルがきれいになくなってる)


 ふと神さまへのお供え用テーブルを見ると、皿がワッフルのひとかけらも残さず空になっていた。アイスとクリーム、ベリーの山盛りトッピングにチョコレートとキャラメルのソースダブルがけはどうやらお気に召してもらえたらしい。


「――まあとにかく」


 と、サキの口元に自分のワッフルを――しかもクリームとキャラメルがたっぷりかかった部分を――フォークで差し出しながらアルス。


「あれは関り合いにならないのが一番だ。サキも変に絡まれたりしないように気をつけろよ」


 ぱくりとそれを口に入れ、アルスを見上げると口の端についたクリームを親指でぐりぐりと拭われた。


「わたしからも、城の者に注意しておくよう言っておきましょう」


 交流会で何があったのかはわからないし、婚約者候補(の候補)とされてからどんなやり取りがあったのかもよくわからない。それでも、二人の警戒ぶりから苦労したんだろうなあとは想像できた。


「お城は広いし、ばったり会うこともそうはないとは思うけどね」


 お返しにと自分のワッフルをひと口アルスに進呈して、そう苦笑したわけなのだが――






「お前ね、陛下に拾われたという“外”からの蛮人は」


 今サキは、野心溢れる一派の牽引役たるファーレス家のご令嬢、次期王妃に最も近い人物とも言われた(らしい)カティーナ嬢その人を目の前にして、こういうときなんと言ったものだったかしら?と考えていた。


(人の噂もしちじゅう――違った、噂をすれば影がさす?)


 もしくは、フラグが立ったと言うのかもしれない。




最近は実家で正月を迎えないから慣れ親しんだお雑煮を食べていない、かなしい。




白和え大好き、どんぶり一杯の白和えをスプーンですくってもしゃもしゃ食べたい。



ホウレン草の白和え


材料:

・ホウレン草 一束

・ニンジン 3~4分の1本

・こんにゃく 100グラム程度

・豆腐 200~300グラム程度

・味噌 大さじ1

・砂糖 大さじ1

・ゴマ 大さじ1

・塩 適量

・めんつゆ 大さじ1~2(なくても可)



作り方:


・大きめの鍋に水と塩少々を入れ、火をつける。


・お湯が沸くまでの間に人ニンジン、こんにゃくを2~3センチくらいの拍子木切りにしておく。


・ニンジンとこんにゃく、豆腐を鍋に投入。網があると便利。茹でている間にホウレン草を水洗い。


・引き上げたニンジンとこんにゃくはめんつゆで和えて下味をつけておく。もしくは薄口醤油とみりんとか。別に下味をつけなくてもいい。


・豆腐は水切り。キッチンペーパーを敷いたざるに乗せて重しをするとかまあ適当に。


・鍋にホウレン草を入れて茹でる。根っこのほうからお湯につけて全部沈んだらいったんひっくり返し、全体的に葉っぱの色が変わったな、と思ったら引き上げて冷水にとる。


・水気をしぼったホウレン草は食べやすい大きさに切り、もう一度よくしぼる。


←ここまで下準備


・すり鉢でゴマ、味噌と砂糖の順によくすりつぶし、豆腐を加えて混ぜる。味を見て、甘味が足りなかったら砂糖、塩気が足りなかったら塩を入れて調える。


・ニンジンとこんにゃく、ホウレン草を加えて混ぜる。器に盛り付ける。食べる。



メモ:


・ホウレン草は余ったら味噌汁とかオムレツとか、いろいろ使えるので気にせず茹でて、衣とのバランスを見て白和えに使う量を決めましょう。


・ニンジンとこんにゃくの下味は、少しかために茹でて小さめの鍋またはフライパンで軽く煮てもよいでしょう。しょうゆとみりんでもよいでしょう。


・ホウレン草を切ったあと、小さじ1程度の薄口しょうゆや白だし、めんつゆなどを和えてきゅっとやると下味がつくと同時にしっかりしぼれる。ほら、こう浸透圧的なやつ……?


・具材に下味をつけるときは、衣の味付けを少し控えめにするとよいでしょう。そうでないときは、衣にしっかりめに味を付けるといいかも?


・もちろんすりごまや練りごまを使えばいい。こむるは自分で擂り粉木するのが好きだけど。


・手が空いているときに下準備まですませておいて、食事の直前に仕上げるとなんとなく気が楽……かもしれない。



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