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お散歩と“楽しい”会話と

連続投稿 1/2



どこかで言ったことがあるかもしれませんが、こむるの個人的な決まりというかスタンス的なものに、「後書きや感想の返信などにあまり作品の解説をしすぎないようにする」というものがあります。


その解説というのは、この作品を書いた背景にはこういう思いがあって云々……とかそういうことではなく、このとき主人公がこうしたのはこれこれの理由がありまして……と本編の補足説明をするとか、このキャラの裏設定は~~と嬉々として語り始めるとかそういう系のやつですね。


これは、書きたいことは本編中に書ききるべきであるとこむるが考えているからであるのですが、そういえばこれ書き忘れてたなとか、この辺突っ込み防止に書いとくか、とかそんな適当な感じで唐突に説明会がねじ込まれることがありますが、あまり気にしないでください。ええ。

 朝晩と冷え込み、雪のちらつく日も増えてきた。このころになると採取できる薬草の量も少なくなり、帰路につく時刻も随分と早くなった。


「今年の薬草取りもそろそろ終わりだね」


 隣を歩くミナちゃんが話しかけてきた。


「雪の間はみんなは何をして過ごすの?」


「えっと冬はね、学校がお休みの日も学校が開いてるの。それでお裁縫とか編み物とか教わったりするのよ」


 勉強のない日は、開放された学校に町内のおばあちゃんや隠居した職人さんたちが、裁縫や簡単な木工などを教えに来てくれるのだ。ハンカチの刺繍や小物入れ、ちょっとしたおもちゃなど、上手にできたものは雑貨屋さんが引き取ってくれて、子どもたちの冬の収入源でもあるらしい。


 勉強は嫌いだけど、おばあちゃんたちにいろいろ教わったりお話を聞くのは好きだとミナちゃん。


「サキちゃんもいっしょに行こうね」


「うん、誘ってくれてありがとう」


 サキが引っ越したばかりのころ、自分も他の子どもたちと同じように学校に通ったほうがいいだろうかと、マーサに相談したこともあった。


 そのときは、読み書きや計算もじゅうぶんできるようだし、もう少し新しい生活に慣れてから考えてもいいのではないかということになった。そのうち薬草取りの子たちと仲よくなり、わざわざ学校でお友だちを作る必要もなくなって今に至る――というわけである。








 家に帰ったサキは、タニアから時間もあるし天気もよいのでお茶の前に庭園を散策しないかと誘われた。


 一見なにもないような冬の庭も、よく見ればいろいろな発見がある。


 枯れて繊維だけになってしまった葉や花などはレースみたいでかわいらしいし、枝についたままの木の実は色鮮やかなもの、形が面白いものと目に楽しい。


「そういえばね、タニア」


「はい、姫様」


 ふと思い出して、気になってそのままだったことをたずねてみた。


「この国は魔力の高さで王さまを決めるのよね」


「その通りでございます」


「次の王さまが決まって、そのときの王さまが、ええっと、お亡くなり……になるか退位なさるかの間にもっと魔力の高い候補の人が生まれたりしたらどういう扱いになるの?」


「姫様のおっしゃる通り、そのようなことが過去に何度かございました」


 そううなずいて、タニアの楽しい講義(社会科)が始まった。


「まず、お二方の年齢に差がある場合ですが、よほどの魔力の差がない限りは先にお生まれになった方を王太子、次に王太孫として順に王位を継承なさることが多うございますね」


「差って何歳くらい?」


「平均して……百歳ほどでしょうか」


「そうなの……」


 さすが魔法使いの国、ベルーカ。スケールが違う。


「お歳の近い場合、これ幸いと継承権を放棄なさる方もおられれば、双方譲らず決闘となり、魔の森が向こう数十年ほど平和になったということもあったようです」


 決闘といっても互いの命をかけるのではなく、魔の森での狩り勝負という形をとった結果だそうだ。ちょうど当時の勇者の魔王討伐と時期がかち合い、その勇者はかつてない成果をあげたと“外”では伝説的な存在になったとかなんとか。


「珍しい例としては、ほぼ同時期にほとんど変わらない魔力を持ってお生まれになったお二方が、同時に並び立ったというような時代もあったそうでございます」


「王さまが二人?」


「ええ、お二人は大変仲のよい幼なじみ同士でいらしたそうで、互いに尊重し支え合い、後に双王時代と呼ばれる繁栄の時代を築きあげられました」


「ふうん――」


 血筋ではなく魔力の高い低いで王を定めるようになった背景には、魔族狩りに追われてこの地に逃げ延びた当時の生活の過酷さがあったのだろう。


 住まいも何もない状態で、いちから自分たちの手で作り上げなければならず、すぐそばには恐ろしい魔物の棲む森が広がっている――魔族と呼ばれるほどに高い魔力を持った人たちの中でも、突出して優れた“その人”が自然と頼られるようになっていったのではなかろうか。


 それにしても、これ幸いと新しい候補に押し付けるとか王さまを二人同時に立てるとか、他の国との交流がないからだろうか、国の王さまを決める大事だというのにけっこうおおらかである。


「あと、お生まれになったのが姫君である場合は早々に継承権を放棄なさり、王または次代様の婚約者候補となられる方がほとんどでございます」


 かつて女王となったものもいないわけではないが、とタニア。


「――ちなみに、当代のアルス陛下がお生まれになって以降、陛下が即位なさるまで新たな候補者は選定されませんでした。そして、あまりにも魔力に差がありすぎるということで、もうずいぶんと長い間婚約者候補の選定も進んでいなかったのです」


「……そういえば、歴代最高の魔力を持ってるって話だったね」


 過去に、アルスの婚約者どころかその候補選びにすら難儀していたと聞き、なんとなくうれしいような安心したような気分になりながら、サキは続けた。


「じゃあ、アルスの次に王さまになる人はもう決まってるの?」


「そうですね――陛下はまだ即位なさってからそこまで長くはございませんから、しばらくは様子見といったところですが」


 一応、候補の候補くらいの感じの人がいることはいるらしい。


「ただ、大変勝手ながら、あと十年か二十年もすれば、その辺りの順位もひっくり返っているとわたくしは思っておりますが」


 穏やかに微笑むタニアに、サキもにっこりと笑った。


「――次の王さまがどうとかはともかく、そうなるとわたしもうれしいわね」


「えー、それではここでお手紙を一通ご紹介します。陸の孤島県にお住まいのKさんから。「前略、その節は大変お世話になりました。おかげさまでモズク料理のバリエーションも増え、日々の食卓がまた豊かになりました。これも突然のおことにもかかわらず、快く相談に乗ってくださったみなさまのおかげと感謝しております。家族は、特に中華風モズクスープが気に入ったようです。本当にありがとうございました。」――Kさん、お悩みが解決したようでほんと、よかったですねぇ。ではKさんからのリクエスト、「お花畑と地雷原」…………」





あ、いえ。真面目な話ほんとありがとうございました。

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