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side千鶴――これでまだ自覚がないそうなんです、ないんですよ。

ヒロインちゃんの異世界ファッションチェックをいちいち書くのだるい。もうこむる、ゴールしていいかな。



女物の服に比べて男物があんまり中世中世していないのは、男の衣装にそこまで思い入れを持っていな……いえ、何でもないです。



要はね、お料理の描写なんかと同じくバランスの問題なんですよ。

内容も文章もわりと軽いノリの中に、唐突に事細かなファッションの説明が表れるとそこが浮いてしまうのです。本文と同じノリでさらっと書けばいいのです。まあ、こむるはそう思いますってことで。


 今日はいよいよお披露目の日。朝から王城は準備に最終確認にと慌ただしい。


 わたし達も急かされるように朝食を食べた後は、問答無用で身体の隅々まで磨かれて物の言える着せ替え人形となり、式典の為の正装を着付けて貰っている。


 まぁ正装と言っても、普段着ているような騎士服をもっと豪華にしたような感じなので、平たい顔族の自分に果たして似合うのだろうかという疑問はあるものの、着なれない感じとか動き難さみたいなものはそこまででもなかった。


 白いブラウスの上に深緑の騎士服を纏う。詰め襟の間から白いクラバットを巻き、金のブレードと刺繍の施された袖口を折り返してカフスで留める。

 腰の辺りからフレアに広がっている裾は、後ろが長く伸び、燕尾服みたいに分かれている。その下は膝下の白いスカートで、ここはいつもとは違っていた。キッド革のぴったりした白い手袋、かっちりした革のロングブーツ、腰に巻いたベルトに愛用の剣を提げ、髪を金のバレッタで留めれば完成だ。


「ねえ、マリアさん。ちょっと派手すぎじゃない……?」


 侍女さん達の手により華やかなメイクが施されていく。


「まぁチズル様、とんでもごさいません! これぐらいはしなければお衣装に負けてしまいますわ!」


「そうですわ、チズル様! この晴れの日に気合いを入れずにどうなさるのです」


「う、うん……でも、わたしなんかにこんな格好似合わない――」


「チズル様」


 そこにはどこか怒ったような、それでいて悲しそうなマリアさんの顔があった。


「チズル様の、その決して驕らない謙虚な姿勢はとても好ましく思いますわ。ですが、それも過ぎるとむしろ卑屈に映ってしまいます」


 言われてドキリとした。確かにわたしはそんなに自分に自信がある方じゃないけど……。


「わたくし達がチズル様に似合っていると、素敵だと申し上げる時は、心からそう思っているからだと、信じて下さいませんか……?」


「ええ、ええ、その通りですとも。わたくし達が腕によりをかけたのです、チズル様は、誰もが目を奪われてしまうような素敵なレディですわ」


「どうか自信を持って下さいまし」


「皆……」


 マリアさん達の気遣いに胸がじんわりと暖かくなる。


「さあチズル様、控えの間に参りましょう? きっと皆様、首を長くしてお待ちでいらっしゃいますよ」


「――うん、行こうか!」







 今日の式典は、まず国王様との謁見があり、その後正午に王城の正門からパレード開始、そして夕刻からお披露目の夜会となっている。


 謁見が行われる大広間から少し離れたところ、控えの間を警護している近衛騎士さんに扉を開けて貰い中に一歩足を踏み入れたわたしは、「ほわぁ……」と口を開けて固まってしまった。


 女性用と男性用の差はあるけど、わたしと同じ深緑の騎士服をすらっとした長身に身に纏ったエドガーとアルスさん。

 お揃いの色、意匠で、加えて騎士服のテイストを盛り込んだローブのレオン君。

 そこに創世教のシンボルを金糸で刺繍された白いストラを首からかけることで、神聖な雰囲気を醸し出しているキースさん。


 皆すっごく格好良くて、わたしがあのキラキラしい集団に交じっていいのだろうかと、自信を持てと言われたばかりなのにまたそんな思いが頭をよぎってしまう。


 特に、いつもは無造作に結わえている金髪を丁寧に撫で付けているアルスさんは、何て言うか、普段の軽装の冒険者って感じから一転、エドガーと並んでも全く違和感がないくらい王子様してるっていうか、こう。


 いつだったかキースさんが、アルスさんは貴族の出身かもしれないと言っていたけど、もしかしたらもしかするのかも――なんて。


「「「チズル(様)!」」」


 エドガー達が立ち上り、駆け寄って来る。あう、キラッキラした笑顔が眩しい。


「――よく似合っているな」


「う、その――ありがとう」


 上から下までじっと見られるのって、その、なんか照れる。


「ええ、本当に。その気高くも美しいお姿に、まるで戦女神が降臨したのかと」


 大袈裟だって、キースさん……。あうあう口を開け閉めして言葉も出ないわたしに、レオン君が笑いかける。


「お揃いってなんか嬉しいな。チズルもなんかカッコいいけど可愛いな!」


 レオン君、それは格好いいのか可愛いのかどっちなの?


 そのまま三人にエスコートされてソファに座る。ちらりとアルスさんの方を見るけど、我関せずとばかりに窓際にもたれて腕を組み目を伏せている……ですよね~。


(……こんな時くらい褒めてくれてもいいのにな)


 ちょっとだけ残念な気持ちになったけど、それも待ち時間に交わすエドガー達との楽しい会話で元通り浮上していく。




 ――正直、それから謁見の場で何があったかよく覚えていない。




 国中の主だった貴族達が見守る中、国王様や王妃様、皇太子様の前に進み出て膝をつき、ひたすら頭を垂れたまま、活躍を期待しているとかなんとかお言葉を頂き、下賜品の目録を宰相様が読み上げるのを恭しく拝聴して御前を下がる……ことになっていたんだけど、緊張し過ぎて、転ばないだろうかとか右手と右足が同時に出ちゃわないだろうかとか、そういったことに必死になってしまい、気づけば控えの間に戻っていた感じ。


 まあ、皆から何も言われないってことは、きっと大きな失敗はしてないってことなんだろう、うん。


 ――緊張で強張った顔が、「凛々しくも可憐だ」と評価されていたらしいことを次の日にマリアさんから聞かされて、恥ずかしさに悶えることになるわけだが。






 パレードは、正門を出て王都の主だった通りを数時間かけてぐるっと回り、また王城に帰ってくるコース。


 それ用の大きな馬車の屋根部分に立ち、にっこり笑って手を振るだけの簡単なお仕事。

 あれだね、皇室とかヨーロッパの王室のご成婚パレードとかよりは、某夢の国のエレクトリックなあれを彷彿とさせるね。まあ、こっちは歌ったり踊ったりはしないけど。


 さっきは簡単なお仕事と言ったけれど、ずっと立ったまま、笑顔のままってのは案外疲れる。でも、手を振り替えしてくれたり歓声を上げる人達の笑顔に、そんな疲れはどこかに吹き飛んでしまうのだ。


 時々、肩車されたり抱き上げられている子供から「あっ! アルスお兄ちゃん!?」と驚きの声が上がったり、わたし達を指差して目を丸くしている姿が見えた。遠目でしかも移動しながらだからはっきりとは見えなかったけど、きっと森で出会った子供達なんだろうな。


 あと冒険者らしき人達からも驚いているような雰囲気が伝わって来る。うんうん、そうなんです。言ってなかったけど、一応勇者なんです、わたし。ちょっとだけ、どこぞの縮緬問屋のご隠居か暴れん坊な上様になったみたいで楽しいかも?


(それにしても――)


 わたしは、すぐ横で半分寝てるんじゃないかというくらいに片手を上げて微動だにしないアルスさんを見上げた。


 そう。アルスさん、パレードが始まってから一切動こうとしないのだ。その表情さえも。


 元からあんまり笑ったりしない人だし今日のパレードとか夜会に乗り気じゃないのは知ってたけど、それにしても無表情過ぎる気がするんだよね……。ここまで来るといっそ感心してしまうかも。


 ……とはいえ。


「アルスさん、アルスさん」


 金の縫い取りも鮮やかな袖口をきゅっと引いて話し掛ける。歓声に紛れてしまわないように、かといって周り中に聞こえたりしないように背伸びして手と口元をちょっとアルスさんの耳に寄せて。


「ちゃんと笑顔で手を振ってあげましょうよ、せっかく集まってくれた人達に悪いですよ。それに、アルスさんはとっても素敵な笑顔をしてるんだから、今日だけでなく普段でも笑ってくれた方がわたしは嬉しい、かな?」


 注意するついでにいつも思ってることも告げ、「ね?」と首を傾げると、前列の一段低いところに立っていたエドガーが振り向いて、


「チズルの言う通りだぞ、アルス。少しは愛想よく振る舞ってはどうだ? まあ、我々男性陣の笑顔など、チズルの愛らしさの前には霞んでしまうだろうがな」


 なんて言うものだから、思わず頬が熱くなる。


「なっ……もうエドガーったら、またすぐそういうことを言うんだから……」


 お世辞にしたって褒め過ぎだって……!


「そうですね、今日は民に笑顔を向けるのに追われて、チズル様の笑顔をお側でずっと拝見していられないのがとても辛いです」


 続いてキースさんまでそんなことを言う――!


「わ、わたしの笑うとこなんて見たって面白くもなんともないよ……」


「いいえ、わたくしにとってチズル様の笑顔は、ダイヤモンドの山と引き換えにしてでも手に入れたいものなのですよ」


 真っ赤になって俯いてしまったのは、断じて盛大に照れたからではなく、キースさんの神々しい微笑みに目が眩んだからなのだ、きっと。


「あ! チズル、あれ、あそこの路地を行ったところにさ、前チズルにやったブレスレットを作った魔道具工房があるんだぜ!」


 場の空気を変えようとしてくれたのか、ことさら明るい声でアルスさんとは反対側の隣に立つレオン君がわたしの腕を取り人ごみの奥の方を指し示した。


「え、そうなんだ。じゃあ、その工房の職人さんとかこの辺にいたりするのかなっ」


 あのブレスレットお気に入りなんだよね。目にも耳にも楽しいし、平均的な日本人の身長なわたしでも、異世界基準で背の高いエドガー達とダンスしても首が疲れないし。


「えっと、ああ――この距離からだとよくわかんないな」


 目の上に手をかざすレオン君と視線の向きを合わせようと、ほんの少し身を乗り出す――現代日本ではお目にかかれないようなカラフルな髪と目でいっぱいの大通り。若い女の人達はエドガー達やアルスさんの勇姿に頬を上気させ、父親や母親に抱かれた子供達は力いっぱい手を振って――


 突然、それまでとは明らかに黄色の比率が高い歓声が響き渡った。


「きゃっ、なに? なにがあったの!?」


「ぅわ、びっくりした」


 咄嗟に身を竦めて辺りを見回す。わたしと同じ方を見ていたレオン君はもちろんとして、エドガーやキースさんも不思議そうにきょろきょろしている。ただ、そんな状態でもしっかり笑顔はキープしている辺り流石だ。




 一人涼しい顔をしていたアルスさんだが、実はあの歓声は、知り合いでも見付けたのか一瞬アルスさんが笑顔で手を振ったことによるもの(このパレード中、アルスさんの鉄壁の無表情が崩れた唯一の場面でもある)だったと後で知ったわたしとレオン君が、その貴重な瞬間を見逃したと大いに悔しがるのはまた別のお話――。


おいしいけどなんか生臭くてそこはちょっと苦手。それがあら汁。


血合いをきれいに取る、酒と塩を振ってしばらくおく、湯通しするなど下処理が大事になってくるわけですね。




焼いて作る塩鮭のあら汁


材料:

・塩鮭のあら 1パック

・大根 5~4分の1本程度

・ニンジン 3分の1本程度

・ジャガイモ 1~2個

・ネギ

・昆布 5~10センチ程度

・味噌




作り方:

・鍋に水と昆布を入れる。


・大根とニンジンをいちょう切りやたんざく切りなど食べやすい大きさに切る。ジャガイモは皮をむき芽を取っててきとうな大きさに。


・ネギは薬味として散らしたいなら小口切り、具として煮たいならざく切りに。


・野菜を鍋に入れ火にかける。


・塩鮭のあらをグリルで焼く。


・焼いた塩鮭を鍋に入れ、あくを取りながら少し煮込む。


・味噌で味を調える。鮭の塩加減によって量を調節する。



メモ:


・ジャガイモがないときは里いもを使ったりもする。入れる具材はお好みで。


・ジャガイモが崩れるのがいやだという場合は、少しタイミングをずらして入れるといいでしょう。


・塩鮭の焼き加減は焦げすぎない程度に。もちろん湯通しする、臭み消しに酒を少々加えてそのまま鍋にぶちこむでも可。


・塩されていないお魚を使う時は、野菜を煮るときに塩を少し入れておくことで味の通りがよくなる……気がしている。


・グリルを洗うめんどくささと、霜降りした身のところどころこびりついた鍋や網、ザルを洗うめんどくささを比べた結果、こむるは焼くことを選びました。他を煮ている間にグリルに放り込んでおけばいいという手軽さと、焼き鮭の香ばしさが好きだというのもあります。どう臭みを取るかは、まあお好みですよね。

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