表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/131

次のお弁当のために、次の次のお弁当のために

年の差カップルの何がいいかって?

単純に10歳15歳離れてるだけの、男女ともに成人してるカップルなんて端から見ればただのカップルなんですよ、そうじゃないんですよ。

こうね、ちんまい女の子がおっきいお兄さん(逆の組み合わせも可)と並んで仲良く手をつないだり抱っこされたりして二人の世界を作っちゃったりしてるその空気感がたまらないんですよ。

体格差カップルでもまぁ悪くないんだけどやっぱり年の差にはかなわないっていうかね、わっかるかなあ。

しかし成長してしまうと、ちんまい感がなくなってただの年が離れてるだけカップルになってしまってグヌヌヌヌ

 物心がついたころには、「自分が大きかったときはこうだった」、「前の自分はこんなふうに考えると思う」と比較したり考えの参考にするのが当たり前になっていた。

 やがて、それが当たり前のことではなく、“前の自分”などいないのが普通だと気づいた。


 “前の自分”が“大きかったとき”に物語で読んだ、前世を覚えている人たちの話と今の自分の状況の一致に思い至ったのはそれから数年後、さらに、なぜ“前の自分”が生きていたころは魔法も魔物も存在しなかったのだろうという謎が解けたときには、アルスは十歳になろうとしていた。


 あ、これ“前の自分”がやってたゲームやなんかの世界に似てるんだ。


 抱いていた違和感を「世界」という言葉で表したとき、唐突にすべてがつながった。

 どう考えても異世界転生です、本当にありがとうございました。








 留守中の引き継ぎを受け、急ぎの案件を片付けて自室に戻ったアルスは、今日出会ったサキという少女について考えていた。


 今回は日帰りだから近場の依頼をと受けた、森の狼の間引きはあっさり午前中には終わり、ギルドに戻ろうと森を抜けたところで、桜色の服を着た女の子と目が合った。


 七、八歳くらいだろう、かわいらしい顔立ちをしている。黒い髪と目は、“前の自分”がいた国を思い起こさせる。

 向こうの感覚だと十歳といったところだろうか、と考えながら何気なく観察した彼女の魔力の高さに内心驚いたとき、なにかとても懐かしい匂いが漂ってきた。


 脳裏によみがえる遠足の、運動会の、友人と机を寄せ合った昼休みの光景――そう、彼女が膝にひろげていたのは、お弁当だったのだ。


 サキは、初対面にもかかわらず弁当を分けてくれ、また一緒に食べようとまで言ってくれた。もちろんアルスもこれきりにはしたくなかったし、どうやって次に会う約束を取り付けようかと考えていたので、一瞬のためらいもなく次回もこの森の依頼を受けることを決めた(連絡先を交換すればよかったと夜になって気づいた)。


 そこで気になるのが、弁当代をどうしようかということである。今日は言い出すタイミングが計れずそのままにしてしまったが、ただでごちそうになるなんてできるはずがない。いい大人が十歳の女の子にタカる図を想像して、思わず身震いしてしまう。


 かといって、お金を渡してサキが素直に受け取ってくれるようなタイプだとも思えなかった。

 とはいえ何もしないとかあり得ない――


「そうだ、たしか」


 アルスは部屋のすみの、もう使わないけど捨てたくはないものや子供の頃にもらったり拾ったりした記念品などをまとめてある箱(いわゆる宝箱的な――)から、昔練習で作った魔石の入った袋を取り出した。


 色や形のよいものを選り分けていき、何の魔法を込めようかと考える。とっさの時に身を守ってくれるようなものがいいだろうか。


 これをペンダントかなにかに加工して弁当のお礼として渡せば、サキもきっと受け取ってくれるのではなかろうか。

 魔石を使った装飾品はそこそこの値段がするため、先払いという扱いで次回以降も弁当を作ってもらえるのではという期待もないわけではない。


 アルスは、生まれてはじめて出会えた、“前の自分”と世界を分かち合える相手、しかも自分と同程度の魔力を有していて向こうの懐かしい料理を食べさせてくれる相手――なによりかわいい――を、逃がすつもりはなかった。


(とりあえずの目標は、互いの家に行き来できるようになることかな)


 アルスの手の中にある魔石は、まるでペリドットのようにきれいな黄緑色をしていた。

野菜の切り方メモ


 どんな風に野菜を切るかで、そのお野菜の味は変わります。正確には、味そのものというよりは、においや舌ざわり、歯ごたえといった総合的な味覚といいますか。とにかく変わるのです。


 たとえば、こむるは丼ものやシチュー、肉じゃがの玉ねぎは輪切り的なスライスより繊維に沿ったたて向きのスライス、特にシチューは中心に向かって斜めにくし切りっぽく切るのを好みます。

 ニンジンは乱切り、いちょう切りは豚汁のみ許す。

 トマトのくし切りは嫌いだけど輪切りは好き。

 キャベツの葉っぱをくるくる巻いて刻んだ千切りより、半分に割った断面を削るように切った千切りのほうが好みetc.――


 繊維をどの向きで切るかとかその辺が関わっているのですかね。


 その野菜の切り方をちょっと変えるだけで今よりも料理をもっとおいしく、苦手だった料理が実は以外といけてたりと、そんな発見があるかもしれません。

 お店で食べたおいしい料理、いったいどんな切り方をしていたのかなんて観察してみるのもよいでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ