クッキー1枚に表現されるものとは
連載の途中だけど、新しいネタを思い付いちゃったから新連載始めちゃいました☆
――結果、どちらかが(場合によってはどちらも)エタる。
なんて話を聞かないわけではありません。また、見切り発車で始めたから先の展開とか決まっていません!
――結果、ネタ切れでエタる。
なんてケースも。
これらのいったいどこに問題があったのかというと、あくまでこむるが思うにですが、それは「新しい話のネタ」ではなく「新しい“設定”のネタ」であるからではないでしょうか。
最初の数話で主人公やそのまわりの紹介を兼ねて設定を”披露“している間は調子がいいけど、それが終わってしまうと何を書けばいいかわからない、主人公SUGEEE(TUEEEでもKAWAEEEでも可)な日常をだらだらと書き連ねるだけになって話が進まない、というかそもそもどういう話を書きたいか以前の状態で連載を開始してしまっている。
とはいえプロットの作り方なんてわかんないよ!
その気持ちはよくわかります。
”これは最終的にこんな風に終わるお話である“と、ひとつ大きな着地点を作ってあげましょう。
そして、今ある設定から考えるに、そのためにはこんな出来事、場面、会話などをいれたらかっこいいんじゃないかなと、飛び石を配置していくのです。あんまり事細かでなくても大丈夫。
着地点が見えてきたら、そこに向かうための道すじがなんとなく見えてくるはずです(たぶん……)。例えばだらだらと日常を書き連ねるなかにも、なにかひとつずつでもいいので飛び石に向かって一歩前進させていけばよいのではと思います。
せっかく面白い話になるポテンシャルたっぷりの設定があるんだから、エタること必至の書き方をしてたらもったいないとこむるは思うんですよ。
ここ一週間ほど、サキの機嫌が微妙によろしくない。
表情や声の調子はいつもと変わらないのだが、仕事が終わってお茶の時間に出てくるお菓子がクッキー1枚だけという、そこに不機嫌さが表れているのだ。
一方、ナタンやその日魔法屋敷担当の侍女に出されるお菓子はケーキやパイなど、いたって普通なのが決定的だ。
ただ、たとえ機嫌が悪くても、サキが自分自身に用意するのはアルスと同じクッキー1枚なのが、なんとも言えずかわいらしいというか、付き合いがいいというか――
「なあ、サキ――」
「なあに」
ソファに座るアルスは、自分の膝の上にサキを向かい合わせに座らせて呼びかけた。
「そろそろ許してくれると、その……うれしい、んだが……」
いったい何のことかわからない、という顔でこてんと首をかしげるサキに、だんだん声がか細くなっていく。
原因はわかっている。愛の告白を月に託した“向こう”の文学者の逸話が話題になったまさにその晩に、勇者からアルスがその台詞を頂戴してしまったことだ。
窓越しに鉢合せした勇者の声に思わず反応してしまったのが運の尽きだった。どうやら勇者本人は半ば無自覚のようだったが、翌日、わずかに様子のおかしいアルスにサキが目ざとく気付いて理由を問われ、今に到る――と。
少しの間そうやってアルスを見ていたサキは、ひとつ小さく息を吐くと、“収納”していたシュークリーム――今日のナタンたちのお菓子だ――を取り出してアルスの口に押し込んだ。
「しょうがないから、いじわるはおしまいにしてあげる」
むぐむぐと口の中のシュークリームを飲み込んで、残りの半分を手に取ったアルスは、おかえしにと、それをサキの口元に持っていった。
「そのいじわるに自分も付き合ってたら、あんまり意味がない気もするけどな」
「まあっ」
シュークリームを食べ終わったサキが憤慨したように口をとがらせた。
「だって、アルスにそんな本気でひどいことなんて、できるはずないじゃない。だからわたしも――」
サキの口の端についたカスタードクリームをぺろっとなめる。
「いきなり何するの!」
とたんに真っ赤になったサキが、口元を手で隠しながら睨んだ。
「クリームがついてた」
「そういうことをきいてるんじゃないの」
「サキがかわいいのが悪い」
そう言って抱き締めると、何かをあきらめたようなため息のあと、ぽすっともたれかかってくる。
ナタンは向こうのテーブルで(三度目の)書類の確認をしているし、侍女は洗いものが終わったあとも、せっせと花の水をかえテーブルを拭きと忙しなく働いている。
空気の読める家臣たちで何よりだ。
「ああ、そういえばサキ。あさっては工房に行く日だったか?」
「うん、そうだけど」
顔を上げたサキがこっくりうなずく。
「お披露目の用意だなんだで、あさっては森に行かないことになったんだよ。俺は服を会わせるくらいしかすることはないし、一日いっしょにいられる」
なので、そのときまでずっとサキの機嫌がよろしくないのも悲しいと思い、今日こそはと勇気を出した……というわけある。
「わ、ほんとう? うれしい!」
「いつもの時間に迎えに行くよ。どっか行きたいところとかしたいことはあるか?」
ぱっと笑顔になるサキにつられて、こちらまでにっこりしてしまう。
「だったらねえ、冬用の服とか見に行ってもいい?」
「もちろん」
「靴もほしいんだけど、これはいいのが置いてあれば、かしら」
「靴? 傷んできたとかか?」
サキが履いている靴の具合を思い出している様子のアルスに、そうでないとサキは首を振る。
「そろそろきつくなってきたから」
「おお、なるほど」
なるほど、成長期のちみっ子だった。
「それで、天気がよかったらお庭でお昼ご飯食べたり、のんびりしましょう。あ、マーサおばさんの果樹園をお散歩するのもいいかも」
「サキはそんなのでいいのか?」
何か劇場の公演を見に行くとか、少し遠出して評判の料理屋に行くとか――サキが喜ぶなら何だってしてやりたいのに。
「うん、いいの」
だって、とサキは続ける。
「せっかくアルスと一緒にいられるのに、“アルスと一緒にいる”以外のことをするなんて、なんだかもったいないような気がするんだもの」
きゅっとスカートを握って少し照れたようなサキを、思わず抱き締めてなで回して怒られてしまったのは、サキがかわいいのが悪いのだ。
アルスはたぶん悪くない――たぶん。
真っ暗な部屋に“跳んで”戻ってきた。
外に漏れない程度の明かりを浮かべ、上着を脱ぐ。いつもなら、軽く空気を入れ替えるために、寝るまでの少しの間窓を開けていたのだが、今はそれもしていない。
さいわい、夏ではないのでたいした問題ではなかった。
まさか自分の部屋の真下が、勇者お気に入りの庭だったとは……。少し気をつけて侍女たちの会話に耳をすませてみると、勇者とエドガー王子があの庭で秘密の会瀬を重ねているとの噂が手に入った。
ついでに、誰が勇者を射止めるかの賭けは今のところエドガー王子優勢だとも。
(勇者本人には、そんなつもりはこれっぽっちもないだろうがな――)
この城で過ごすようになってわりとすぐにわかったことであるが、勇者はよく言えば純粋無垢、悪く言うならひどく鈍感。しかもなぜか自己評価――特に恋愛方面――が低く、謙虚が卑屈一歩手前までいってしまうことも少なくない。
だからこそ、エドガー王子やキース、レオンら三人が勇者の気を引こうとしつつも、暗黙の紳士協定で抜け駆けを自制しながら牽制しながら、他を出し抜く隙を虎視眈々と伺いつつ、アルスに対して共同戦線を張る――ような状況のなか、「みんな仲良しでうれしいっ」、などとのんきに笑っていられるのだろう。
まあ、たしかに三人の仲が悪いということはないのだが、もしアルスが勇者の立場だったなら、気まずくてとても笑ってなどいられない。
下手に興味を持たれしまって、ほんとうに面倒なことになったと窓を見る。
どうか、このまま興味が興味のままで、好意になど発展しませんように――いや、無自覚にとはいえ告白紛いのことをされた時点で、すでに手遅れかもしれない。
力なくため息をつく。
あの狼の一件以来、それなりに考えたのだろう四人は、無謀なタイミングで無謀な挑戦をすることもなく、必要以上に勇者を庇うこともなく、順調に森での戦いに慣れていっている。
もともと彼らの能力は高いのだ。これなら、魔の森に入ってもまあなんとかなりそうだ。
変な風にあの四角関係――いや、アルスを含めると五角関係なのだろうか?――が拗れさえしなければ。
勇者が自分や周りの感情に鈍感なままで、残りの三人が先走ったりせずに……
(どうしよう、うまくいかない気しかしない)
ベッドに潜り込んだアルスは、サキからもらった髪紐を丁寧に丸めて枕元に置き、明かりを消したのだった。
余ったカレーをどうするか問題
カルツォーネ、ピザにする
・カルツォーネについては、27話後書き参照。
・ピザは、スライスしたタマネギとかトマトとかソーセージとかすきに乗せてチーズとお好みでマヨネーズをかけて焼く。
カレー炒飯にする
・残ったカレーとご飯をまぜて炒める。
・カレーは少なめがベタつかないけど、そうすると味が薄くなる……
その場合は塩とこしょう、あればカレー粉で味を整えましょう。
・ソーセージやベーコンを加えるのもよい。
食べやすい大きさに刻んだキャベツやレタスを入れると増量した気分になれる。
・キャベツはソーセージなどと一緒にはじめの方で炒める。
・レタスは火を止める直前に入れて手早くまぜる。あと手早く食べる。
カレーうどん
・カレーを出汁でのばしてしょうゆとみりんで味を整える。
・ゆでたうどんを入れて食べる。汁跳ね注意!
・出汁をとるのが面倒ならめんつゆを使おう。
昔我が家では、カレーうどんというと、油で炒めた袋うどん(ゆでタイプ)にカレーをぶっかけるものだった。とても胸焼けする。ママンぇ……
カレードリア
・カレーをまぜたご飯を耐熱皿に入れ、スライスしたタマネギ、ソーセージなど心の赴くままにのせ、チーズ、パン粉、マヨネーズなどをかけてオーブンで焼く。
・おすすめは、平たく成形して焼いたミニハンバーグをのせ、隣を少しへこませて卵を落とし、スライスしたタマネギ、チーズ、パン粉、マヨネーズをかける目玉焼きハンバーグ風ドリア。
焼き加減は、完熟から半熟までお好みでチーズが黒こげにならない程度に。
卵を常温に戻しておくといいでしょう。




