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side千鶴――この世界に”生きている“ということ

本作は、ご都合主義と主人公に優しいイージーモードで構成されております。

あらかじめご了承ください。




Q.こむるさん番外小話とか活動報告SSとか書かないの?


A.どうしようもなくひねくれている、こむるの性格をお考えください。




SSと言われてまず思い浮かぶのは剣と魔法の意味であるソード&ソーサリー(つまりファンタジーのジャンルを表す)であり、次に浮かぶのは星新一的なショートショートであり、それ以外にSSなんて言われてもなあ、なこむるです。


そうですね、美少女系なゲームなんかの二次創作をサイドストーリーと称して掲示板だの自分のサイトだのに公開したのものをSSと呼び始め、そこから派生して掲示板で主に台詞と擬音で構成された比較的短めの小説?(個人的にはあれを小説とは認めない、よくて戯曲くずれである)をSS、つまりショートストーリーと呼ぶようになり、今なろう界隈では番外編的な短編をSSと認識していると。

ざっとまとめるとこんな感じなのでしょうか(こむるの独断と偏見による)。正確な経緯をご存知の方、教えて。ぷりーず。

 一人の発した声に全員がこちらを振り向く。泣きはらした目に一斉に見られると、その原因になったっていう罪悪感がある分なんかこう、プレッシャーが……


「えっと、その……」


 何をどう言ったらいいのか迷いに迷って。


「だれ?」


「アルスお兄ちゃんのおともだち?」


 子供達の純真な瞳に、自分はなんてことを仕出かしたんだろうって改めて思って。


 ただ黙ってわたし達を見つめるアルスさんの表情が、百の言葉で言われるよりもわたし達の何がいけなかったのかを語っているようで。


「ごめんなさいっ!」


 気が付けば、わたしは前に進み出て深く頭を下げていた。


「わたしが! わたしがその狼を逃がしてしまったの。皆を危険な目に逢わせてしまって……謝って済むことじゃないって分かってるけど、でも、本当にごめんなさい!」


「なっ、チズル……!」


 慌ててエドガー達が駆け寄ってくる。


「チズルだけの所為じゃないだろ! 俺達だって……!」


「ええ、その通りですよ、チズル様。わたくし達が上手くフォロー出来なかったのが悪いのです」


「何でもかんでも一人で背負おうとするな、チズルの悪い癖だぞ?」


 そう言って、エドガー達も頭を下げ、子供達に悪かった、申し訳ないと謝るのだった。


「皆……」


 滲む涙を誤魔化すように、再び頭を下げる。


「じゃあ、あのおおかみが出たのは姉ちゃんたちのせいってこと?」


 例のやんちゃそうな子が、険のある調子で訊いてきた。……怒って当たり前だよね。


「うん、初めて依頼を受けて、思ったよりも戦うのが難しくて失敗しちゃったの、……って、言い訳にもならないよね」


 しゅんとして答える、子供達は顔を見合わせてごにょごにょと話し始めた。


「お姉ちゃんたち、かけだしさんなんだって」


「かけだしなら、なんで薬草とりじゃなくておおかみとたたかってんだよ」


「でも、あのお兄ちゃんたち、ふつうのかけだしのお兄ちゃんたちよりつよそうだよ」


「かけだしならいらいをしっぱいしてもしょうが、ないのかなあ?」


「すぐにあやまってくれたしねえ……?」


「このまえのときは、あやまらずにすぐにげちゃってたもんね」


 そうして、最後にアルスさんとサキちゃんを見る。


「どうしよう、サキちゃん」


 最終的な判断を任せられたらしいサキちゃんは、ちょっと困ったような顔で首を傾げると、


「おまもりのペンダントもこわれてないし……ちゃんとあやまってもらえたし、まぁいい、のかな?」


 と言った。


 そう言われて、サキちゃんの胸元にかかっている小さな石のついたペンダントが、何らかの魔道具であることに気付く。話からすると、身を守るような効果があるんだと思う。


 そうか、あれがあったからアルスさんが駆け付けるまで持ち堪えることが出来たんだ……


「うーん、サキちゃんがそういうなら……」


「サキちゃんがかばってくれなかったら、どうなってたかわからなかったしね」


「でも姉ちゃんたち、こんどから気をつけろよな。まあ、その、おれたちもほんとはここには来ちゃいけなかったんだけどさ……」


 最後の方、勢いをなくして決まり悪そうにしてたけど、とにかくわたし達の謝罪は受け入れて貰えたらしい。


「うん、本当にごめんね……」


「もういいって」


 子供達に赦して貰えたとしても、それでわたし達の罪が消えた訳ではない。


「アルスさん、――わたし達……」


「反省会は帰ってからだ」


 向き直り謝ろうとしたわたしを、アルスさんはきっぱりとした口調で遮った。


「今日はもうここまでにしよう。子供達を送ってやらないと……他の奴らはどこにいる?」


 氷漬けになった狼を、氷ごとどこかここではない空間に“収納”しながら、子供達に尋ねる。


「えっと、みんないったん草原の方に出て、薬草とりのお兄ちゃんたちといっしょにまってるはずだよ」


 茶色の髪の女の子が答えて、アルスさんは口元を僅かに緩めた。


「いい判断だな、偉いぞ」


 誉められた女の子は、嬉しそうに頷いた。男の子達は、他の子達が安全な所にいると知ってほっとした様子だ。


「うん。でもね、これサキちゃんがそうした方がいいって」


 そのサキちゃん、ずっとアルスさんの腕に納まっている。他の子達もそれで当然って感じだし……ってそのまま歩き出した!?


 エドガー達も、目を丸くして見ている。


 ……良かった、わたしの感覚が間違ってたわけじゃないのね。





 森の中に放置された十頭近い狼は、子供達を王都まで送り届けたあとでさくっとアルスさんが回収してきてくれることになったので、とりあえずそのままに。


 森を抜けるまでの間に、子供達と少し打ち解けることが出来た。


 今わたしと一緒に歩いてるのは、所々毛先の跳ねた癖毛がチャームポイントなミナちゃんと、ポール君とダニー君の兄弟。二人はミナちゃんの幼馴染みなんだって。

 年上のポール君が真ん中でミナちゃんとダニー君の手を引いて、なんだかとってもお兄ちゃんって感じ。


「そっか、じゃあ今日は栗拾いに来てたんだね」


「うん。いっつもね、秋になったらみんなでひろいにきてるの」


「ふふ、いいね。そういうの」


 小学校の頃、秋の遠足でどんぐりなら拾ったことならあるけど、栗なんて、モンブランになったのとか焼き甘栗位しか見たことなかったかも。あ、それとお節の栗きんとん。


 現代日本ではあんまり身近ではなくなってきた、季節の移り変わりとか旬を大切にする感覚、こういうのがスローライフってことなのかな。


「へー。兄ちゃんたち、アルス兄ちゃんから剣とかまほうとかおそわってるんだ」


「まあ今のところはな」


「そうなんだ、じゃあ、お兄ちゃんはぼくたちの”こうはい“になるんだね」


「へっ? ――ああ、お前達もアルスに教えて貰ってたのか」


「おれ、しょうらいアルス兄ちゃんみたいにすごいぼうけんしゃになるんだぜ」


 先頭では、男の子達が身振り手振りでレオン君と冒険者談義をしている。明るく人懐っこい性格のレオン君だから、すんなりと子供達に受け入れられたのだろう。

 エドガーとキースさんは、その直ぐ後を歩いている。キースさんは男の子達の様子を見ているだけで満足、といった感じだけど、エドガーの方はどう子供と接すればいいのか戸惑ってるような雰囲気がある。ちょっと意外――あ、うん。でもなんか可愛いかも。


 そして、レオン君達とわたし達の間にいるのが、アルスさんとサキちゃんだ。


「そういえば、アルスといっしょに森をあるくのってはじめてかも」


「言われてみればそうかもしれないな。今受けてる依頼が終わったら、また来よう。きれいな場所を知ってるんだ」


「ほんと?じゃあきっと春くらいね、たのしみ」


 約束ね、と指切りする様子は、なんだか見てるこっちまでほっこりしてくる。


「サキちゃんとアルスさんって、仲良しさんなんだね」


 ミナちゃんに訊くと、とってもなかよしなんだよ! という返事が返ってきた。ダニー君も、


「まえに草原までまものがでてきたことがあって、アルスお兄ちゃんがサキちゃんをたすけたんだよ。それでなかよくなったんだって」


 あれ、それって……


「ばかね、ダニー! サキちゃんとアルスお兄ちゃんはそのもっと前からおともだちだったのよ、しらなかったの?」


「でも! アルスお兄ちゃんがサキちゃんにあんだけ“かほご”になったのはあのことがあってからだって、ジョンおじさんが……!」


 ポール君を挟んで仲良く言い争いを始めた二人と、慣れた様子で仲裁するポール君。


「イノシシ型の魔物に襲われた子供って、サキちゃんだったんだ……」


 それに加えて今日は狼にまで……何度も怖い思いをさせてしまったことに居たたまれない気持ちになる。


 だというのに、皆を守るために毅然と狼に立ち向かったなんて凄いなあ。わたしがあれくらいの年の頃に、そんなことが出来ただろうか?


「お姉さん?」


 わたしが見ているのに気が付いたサキちゃんが、こてんと首を傾げた。


「あ、ううん、なんでもないの……」


 アルスさんが歩調を緩めてくれて、隣に並ぶような形になる。


「ただ、もっと上手くやれたんじゃないかなって、そうしたら――」


 こんなことにはならなかったはずで――


「駄目だなぁ、わたし……」


 ――勇者なのに。


 力なく笑うわたしを少しの間じっと見つめていたサキちゃんは、徐にポケットを探って何かを取り出し、わたしに差し出した。


「これ、あげる」


 レーズンみたいなものが入った、丸い形のクッキー。


「おちこんだりしたときは、なにかあまいものをたべるのがいちばんだって、まえに母さんが」


 ぱちぱちと瞬きしてサキちゃんを見上げるわたしに、そう言って、


「それで、ちょっとやすんでげんきになったら、またがんばるの」


「あ――」


 そうちょっと笑ってもう一枚、自分用のクッキーを取り出すとかじってみせた。


「アルスもたべる?」


「サキの作ったものなら何でも」


 なあに、それ。とサキちゃんはクスクス笑いながらアルスさんの口に、半分になったクッキーを放り込んだ。


 二人に釣られるようにしてわたしも、かり、とクッキーを口にする。


「…………美味しい……」


 バターと、仄かなバニラの香りと共に、優しい甘さが広がる。アクセントにはレーズン……とも違う、何だろう、甘酸っぱい果物のチップ。しっかりきつね色に焼いた香ばしさが、却ってこのクッキーにはよく合っているように感じた。


 王城の料理人が端正込めて作ったわけでもない、それこそ何処の家庭でも作るような素朴なものだったけど、何て言うんだろう、この世界に来てから一番“食べた”味がした。


 森を抜け、一気に視界が開ける。


「あ! かえってきた!」


「よかった! みんなしんぱいしてたんだよ」


「あれっ? アルスお兄ちゃんだ!」


 草原で仲間を待っていた子達が笑顔で駆け寄ってくる。


 ああ、そうか――


 今、やっと理解(わか)った。


 この世界の人達を守るって言ってわたしがイメージしていたのは、エドガー達を始めとする王城の人達で。

 町とか村で暮らす“普通の人達”がいるってのはもちろんわかっていたけど、ただ漠然としたイメージでしかなかった。


 それはきっと、わたしの頭の中では存在していなかったも同然で――


 わたし……この子達を守るんだ。


 それからこの子達の家族、知り合い――そうやって繋がっていく全ての人達を……。


 今日はちょっとだけ休んで、また明日からも頑張ろう。素直にそう思えた。


焼おにぎりが好き。



・ご飯を握るときはかためにしっかり。


・しょうゆとみりんを適当に混ぜればそれでいいわけだけど、アルコールがちゃんと飛んだか不安になる人は、あらかじめ煮切っておくとか、作りおきのたれ(59話参照)にしょうゆを適宜足すとかするといいと思う。


・最初に両面軽く焼いてからたれを塗って焼き上げる。シリコン製のはけとかあると便利。


・味噌味が食べたい場合、味噌と砂糖を3:1くらいの割合で混ぜ、このままだとかたくて塗りにくいので酒などでのばす。


・ただ、しょうゆのときのみりんよりも酒くささが残る(ような気がする)ので、こむるはしょうゆでのばしています。


・スプーンなどでおにぎりに塗り、香ばしく焼く。焦げやすいので火加減に注意。



我が家でよくやる出汁茶漬け?的な


材料:

・しょうゆ味焼おにぎり

・豚の細切れ

・作りおきのたれ

・ごま

・出汁のもと、またはちゃんととった出汁


作り方:

・食べやすい大きさに切った豚肉を油をひいたフライパンで炒め、たれで味をつけて軽くごまをふる。

・大きめの茶碗に焼おにぎりと炒めた豚を入れ、熱々の出汁をたっぷりかける。

・おにぎりがくずれすぎないうちに頑張って食べる。

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