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side 千鶴 ―― けっこう余裕ありますね、千鶴さん。(視点変更あり)

展開がワンパターンだって?ワンパターン、いいと思います。

かれこれ40年60冊以上にわたって、過去にタイムスリップして誘拐されては助けられついでに逆ハー要員を増やしている、超ロングラン少女マンガなナイルの娘さんとかいるし。




戦闘場面やなにかしら緊迫した場面を書くときは、思いきって視点変更をしてみましょう。出来れば三人称で書くのが望ましいですね。

普段の主人公の軽さとは一風違った、シリアスさやスピーディーさ――淡々とした雰囲気を添えて……――をいともたやすく表現できるでしょう。



このとき注意したいのは、


・あまり特定の登場人物にフォーカスを寄せすぎず、客観的な視点を保つように意識すること


・登場人物の内面を深くとらえすぎず、”はたから見て分かること“のみを書くようにすること


・いつもの癖が出てうっかり一人称が混ざらないように細心の注意を払うこと


です。

ただし二番目の項目については、「ころころ視点が変わって読みにくいと感じられることがあるので注意しましょう。」という程度のもので、いわゆる”神の視点による三人称“を使いこなせるテクニックを持っている場合はその限りではありません。



主人公の一人称のままだったり、当事者である他のキャラクターの一人称にする場合でも、内面の描写を控えぎみに、普段よりは淡々とした書き方を意識するとよいでしょう。

過去形ではなく、「そしてわたしは○○する。」といった、現在あるいは未来形の割合を増やすとよりgoodですね。



こむる書房刊『これであなたもテンプレ書き!~なろう転生を徹底解剖する~』より


「「「チズル(様)!!」」」


 はっと我に返ると、傷付けられて激昂したのか、牙を剥き出しにした狼が今にも飛び掛かろうとしていた。


 皆がこっちに来ようとしてくれてるけどきっと間に合わない。


 えっと、こんな時どうしたらいいんだっけ……?


「ギャン!!」


 背後から飛んできた氷弾が狼を貫いた。


「え……?」


 呆然としたままそちらを見ると、厳しい顔付きのアルスさんがいた。


「あ、ありがとうご「チズル様、大丈夫ですか!?」」


 一番近くにいたキースさんが青い顔で覗き込んで――近い、近いよ! ご尊顔が麗し過ぎるよ!


「「チズル!」」


 他の二人も駆け寄って来てくれ――


「お前達何をやっている!」


 なぜか魔法を放ちながらアルスさんが叫ぶ。上がる狼の悲鳴。


 ――悲鳴?


「あっ!? しまっ――」


 まだ戦闘の最中!


 わたし達は、慌てて狼達に向き直ろうとした――ところに風のように横を黒い影達がすり抜けていき。


「チッ!」


 金色の髪を翻しながらアルスさんは影――狼達を追うべく駆け出した。


 そう、草原へと続く森の出口の方に向かって。

 去り際、小さく「今日は栗拾いの……」とか聞こえた、ように思う。


 “ここには、自分達だけでなく他の冒険者や、森を出てすぐの草原には薬草取りをする子供達もいるのを忘れないように”


「嘘……」


 アルスさんの指導が始まってから何度も何度も、不用意に持ち場を離れず冷静に対処しなければならないと言われたのは何故か。

 狼と戦う時は必ず草原のある方向を背にするようにしていたのは、わたし達を後ろから見守るようにアルスさんが立っていたのは何故か。

 もし狼を逃がして――それも万が一草原の方に――しまうと何が待っているのか。


 頭で分かっているつもりになっていただけのことが全て繋り、自分達の仕出かしたことの重大さを理解する。


「追わなきゃっ……!」


 皆も、ほぼ同時に理解に至ったようで、弾かれたように走り始める。


 いつも言われてた通り、皆は“危険に陥ったわたしを庇う”のではなく、“ミスをしたわたしをフォローする”ように本当は動くべきだったとか、そもそもわたしがもっとちゃんとしてればとか、覚悟は出来ているとか格好つけるんじゃなくて、素直に怖いものは怖いと認めて無理しなければとか色々なことがぐるぐるしてるけど、今はとにかく走らないと……!


 わたし達がアルスさんを追って動き出すまで、多分一秒も掛かっていないぐらいだったけど、その一秒はとても大きな一秒で。





 前を行くアルスさん、そのもっと先を疾走する狼達、わたし達はというと、木の根や飛び出た枝、地面に転がる石なんかに気や足を取られそうになり、思うように追い付けないでいる。


 アルスさんは走りながらも着実に狼を仕留めていっているが、狼達の足が早いのと森が視界の邪魔をするのか、一網打尽というわけにはいかないようだ。あ、今瞬間移動した!?


「嘘、っだろ! 詠唱なしで、短距離、にしても……“跳ぶ”、とか!」


 思わず、といった感じのレオン君の呟き。ああ。やっぱりあれ凄いんだ。


 ぽつぽつと転がる、氷や風といった魔法に討たれた狼達を後目に走り続け、大分息も上がり、そろそろ倒れた狼と相対した時の群の数がほとんど等しくなった頃。


 遠くから子供の悲鳴、のようなものが聞こえた。


 心臓がどきりと跳ねる。まさか――まさか……


 その瞬間。


 ふ、とかき消すようにアルスさんの姿が空中に溶けた。







 ――――視点変更(第三者視点)――――



 森の少し奥まった所にある栗の木が固まって立っている地帯に、七人の子供達がいた。

 年の頃は七~十歳ぐらいだろうか。五人いる少年の内四人は栗拾いに夢中になっており、残る一人は、彼の弟らしき少年の腕を引き、必死にここは危険だから戻ろうと訴えている。


「もう、なにやってんのよ、あんたたち。早くかえるわよ!こどもだけでこんなところまで来ちゃだめなんだから!」


 二人の少女の片方、肩口までの鳶色の癖毛を僅かに跳ねさせた少女も、強い口調で少年達を叱り付けるように声を上げた。


「そんなの、おとなが言ってるだけでほんとにおおかみがくるわけないよ、今だってぜんぜん平気じゃないか」


 一人が言うと、残る少年達もそうだそうだと声を上げる。


「どうせここの栗をひとりじめしたくて大人はうそついてるんだ!」


「おおかみが出たってだいじょうぶさ!なんたって、おれたち剣をおしえてもらってんだぜ」


 聞く耳を持とうとしない少年達に、彼等を嗜めていた二人は顔をしかめる。


「もうっ、なんで――」


「それでも、やっぱりあぶないよ、帰ろう」


 もう一人の、長い黒髪を二つに結んだ少女――八歳ぐらいに見える――が心配そうに、しかし落ち着いた声音で呼び掛けると、さすがに少年達もやや気まずそうに顔を見合わせた。


「でも……」


「なあ……」


「ね、帰ろう」


 黒髪の少女が右手を差し出しながら一歩足を踏み出したその時――突然、茂みが激しく揺れた。


「――えっ?」


「なんだ!?」


「きゃああ!」


 現れたのはうなり声と共に荒い息を吐き、興奮した様子の狼だった。ただでさえ気が立っているところに、子供達の悲鳴で刺激されたのか、身を低くして今にも襲い掛かって来そうである。


「ひっ……」


「だいじょうぶ、みんなおちついて」


 子供達は恐怖でパニックに陥りかけたが、黒髪の少女が鳶色の髪の少女を後ろ手に庇いながら抑えた声で呼び掛けたことで、辛うじて持ち直した。


「サ、サキちゃん……」


 黒髪の――サキと呼ばれた少女は、ゆっくりと少年達がいる方へと後退る。


「みんな、しずかにわたしのすぐうしろにあつまって。ゆっくりだよ、ゆっくりでいいからね」


 はっと、少年達は何かに気が付いたように顔を上げ、強張った脚を無理矢理動かしてサキの元へと移動し始めた。


「おちついて、ゆっくりね。ゆっくり……」


 固い表情で狼をじっと見据えながらも、サキは少年達を宥めるように低く声を掛け続ける。


 狼は低いうなり声を上げながらじりじりと距離を詰めてくる。

 張り詰めた風船のような緊迫した空気の中、最初の一人がサキの袖を掴んだ。


「……っ、わあああぁ!」


 緊張の糸が途切れたのか、少年達は一斉に駆け出し、それと同時に狼も大きく跳躍していた。

 鋭く尖った牙と爪がサキに届く直前。透明な壁がサキと子供達を覆うように展開され、狼を阻む。


「いやああっ!」


「わあっ!」


 子供達が目をきつく閉じてしゃがみこむ中、サキだけはその瞳に強い意志を滲ませ、地面を踏み締めていた。

 まるで祈るように、あるいはなにものかを確信しているかのように。


 防御結界に弾かれた狼は体勢を立て直そうとして――突如として立ち上った氷の柱に閉じ込められたのだった。




 ――――第三者視点終了――――









 わたし達は、目の前に広がる光景に、言葉もなく立ち尽くしていた。


「うっ、わあああぁん! アルスおにいちゃん、こわっ、……こわかったよぉ!」


「うえっ、ひっく……」


 アルスさんにしがみついて泣き叫ぶ子供達――少し離れた所には、狼の浮かぶ氷の柱があって。



 ――あれは何?

 ――どうしてこの子達は泣いているの……?



「――怪我はないか、お前達」


「サ、サキちゃんがかばってくれたから……」


 片手で黒い髪の女の子を抱いているアルスさんは、普段からは想像もつかないような優しい声で、なら良かったと言った。


「それにしても、何故こんなところに? ここは子供達だけで来てはいけないはずだろう?」


「おれ、おれがいけないんだ! どうせおおかみなんて来るはずがないから行こうって……! ごめん、ごめんよぅ、兄ちゃん!」


 一番年嵩らしいやんちゃそうな印象の男の子の叫びに、さっと身体中から血の気が引く音が聞こえたような気がした。


「嘘…………わ、わた、し……そんなつもり、じゃ……」


 勇者だから、異世界チートがあるから、危ない時はみんなが守ってくれるから――


 そんな甘えの結果が“これ”だ。


 わたしが子供達を危険に曝した。――もしアルスさんが間に合わなかったら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。


 そう、わたしが――


 よろめいた身体を、咄嗟にエドガーが支えてくれる。エドガー達三人の顔も、酷く青ざめていた。


「うわぁあん、ごめんなさい!」


「ポールお兄ちゃんとミナちゃんと、サキちゃんはぼくたちをつれもどしにきてくれただけなんだよ。だから、だから怒らないであげて!」


「そうか――」


 アルスさんは赤みがかった茶色の髪の女の子と、二番目くらいに年上に見える男の子の頭を順にわしわしと撫で、それからアルスさんの首にしがみついている女の子の背中を、ぽんぽんと叩いた。


「よく頑張ったな、サキ」


 あ――――

 そうか……、この人は、あんな顔で笑うんだ……。


 全くもってこの時この場に無関係な、いっそ不謹慎とも言えるような想いが、原因不明の微かな痛みと共にすとんと胸に納まった。


 サキと呼ばれた子は、ふる、と首を振ると顔を上げ、はにかむように笑った。


「アルスがたすけに来てくれるって、わかってたから」


「ああ、そうだな。何があっても助けに行くさ」


 こつんとおでこを合わせ、ふわりと笑い合うアルスさんとサキちゃんの間には、誰にも割り込むことの出来ない“何か”があるような、そんな気がして――


 声を掛けることも出来ず立ち竦むわたし達に気付いたのか、アルスさんにしがみついていた子の一人が振り返り、きょとんと目を瞬かせた。


「お姉ちゃんたち、だれ――?」

ギャップリャ!うわぁああギャップリャー!(37話ヒロイン力が足りない参照)


おっと失礼しました。




ゆで栗好きですか?好きですか、当然ですよね。こむるも大好きです。

親指の爪ほどの柴栗をパパンと拾ってきて、栗ご飯にするからと、ママンにちまちまと二人で剥かされた思い出よ……おいしいんだけどね、柴栗。



材料:

・栗 好きなだけ


作り方:

・水で洗い穴のあるもの、水に浮くものなどを取り除いた栗をたっぷりの水でゆでる。



メモ:


・小ぶりなフライパンまたは焦げ付いても平気な鍋で、栗とひたひたの水を入れて蓋をして、完全に水がなくなるまで火にかけるとほっくりしておいしい。



こむる的栗の食べ方:


・まず、ナイフまたは包丁で半分に割ります。半分だけ食べて、もう片方は机に置きます。


・ふたつめの栗も同様にして、ひとつめよりおいしかったら右、おいしくなかったら左(逆でも可)に置きます。


・以下、どんどんおいしかった順に並べていきます。


・おいしくなかった方から食べていくと、なんと、最後は至高の一粒(半粒)で締めくくることができるというわけです……!


お前ばかだろ、と家族に言われた。解せぬ。



ゆでてから日が経って固くなった、パサパサした食感にお子が飲み込みにくそうにしてる、そもそも大きな栗って味薄いよね。

そんな場合は、シロップで煮てしまいましょう。

ゆでて皮をむいた栗とだいたい同量の砂糖と水を沸騰させてシロップにしたところに栗を入れて弱火で5分~10分ほどにて冷めるまで常温で放置。

砂糖は好みで調節。

自分の家で食べる用程度のものなら、半分に割ってスプーンで掘り返すぐらい適当でも別にいいと思う。崩れた部分も気にせず放り込む感じで。

余ったシロップは、パンにつけたり紅茶にミルクと一緒に入れたりしてもいいですね。

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