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side 千鶴 ――受付嬢に驚かれて、厳ついお兄さんにイチャモンをつけられて……みたかった

四人と一人の断絶がひどすぎる。




こむるわかったんです、わかったんですよ!

カテゴリ再編で異世界転生が隔離されたはずなのに、ファンタジーや恋愛(異世界)のランキングをのぞいたときのこのコレジャナイ感。


あ、いえいえ、これ主人公日本人じゃないか、カテゴリ詐欺かよ、とかそんなのはどうでもいいんです。本人のうっかりか、モラル的なものの問題なだけですから。


こむるが納得できなかったのは、確かに主人公は現地人だけど、その異世界は乙女ゲームで転生ヒロインちゃんが逆ハーしかけてたりって、これって異世界転生主人公と何が違うのってことなんです。

あと、明らかに過去あるいは現在に日本人が存在してるとわかる場合とか。


いや、でも確かに主人公は(元)日本人ではないわけだし、でもなんか感じるこの理不尽さは……



こむる、けっこう真剣に自分の内面を見詰めてみました。そしてとうとう答えを見つけたのです。


こむるは、“ファンタジー”と言われたとき、指環とかヴァルデマールとかまあロードスでも妖精国の騎士でもなんでもいいんですけど、そういうがちがちなものを連想するのですね。

つまり、そのファンタジー世界に日本などというものの存在する余地はないのです。


そんなイメージで小説を読むから、違和感がひどくなるというわけで、最初からジャパニーズ成分があるものと思って読めば全然平気なんですよね。


あーすっきりした。

 重厚な建物の中に一歩足を踏み入れると、活気に満ちた光景が広がっていた。


 鎧あるいはローブを身に纏い、大剣や斧、弓を背負った人達、一方で腰に剣や短剣、杖などを提げた人達がひしめいている。

 所狭しと壁に貼られた依頼を吟味している人もいれば、受け付け窓口に並んでいる人や仲間と待ち合わせをしているらしい集団も。

 併設されている酒場も朝から賑わっているようだ。





 そう、わたし達は冒険者登録のためにギルド会館にやって来たのだった。


 わたしはいつもの訓練用の服に灰緑のマント、腰には細身の剣を提げ、髪は邪魔にならないように後でしっかりポニーテールに結わえてある。


 エドガーもわたしと似たような出で立ちだけど、革の部分鎧を上から着けていて、剣も、わたしのものよりもっと幅や長さがあるものを装備している。いかにも冒険者っ!って感じでかっこいいよね。


 キースさんはいつもよりは簡素な感じの神官服で――なんでも、地方の視察なんかの旅装だそう――、普段はゆったり三つ編みにされている髪は、首の後ろで結ばれている。


 レオン君は、王宮の魔法使いが着ている臙脂色で金の装飾がついたローブ――ではなく、焦げ茶色の短めのローブと腰に革のポーチ(なんと、このポーチ、空間魔法でアイテムボックスになってるんだって!)と先に青い石の付いた杖を挿している。


「さあ、チズル――」


 冒険者達の熱気に圧されて思わず立ち竦んでいたわたしの背中にエドガーが手を添えた。軽く押されて足を前に進める――ずっと入り口を塞いでる訳にもいかないものね。


「う……わぁ……」


 見られてる、すっごく見られてる……!?


 その値踏みするような視線は、“ギルドの新参者はどれ程の者か”といったどこか侮るような、それでいて微笑ましげなものではなく、それよりももう少し刺のある、“あのSランク冒険者であるアルスさんと一緒にいる奴等は何者か”というものであるように感じられた。


 ……た、確かにわたしは足手纏いのお荷物かもしれないけど、お荷物はお荷物なりに頑張ってるし、エドガーやキースさんやレオン君はわたしなんかよりも全然凄いんだよっ……なんて心の中で主張したところで、だからどうしたって話な訳で。


 若干の居心地の悪さを覚えながらも、真っ直ぐ受付に向かうレオン君に続こうとして――


「レオン、そっちじゃない」


 アルスさんから待ったの声がかかった。


「え? でも俺達ギルドの登録に……」


 目をぱちくりさせるわたし達。


「直接執務室に向かうように言われてるんだよ」


 アルスさんが受付カウンターの横にある階段を指し示し、そちらに先導しようとしたところに、横から声がかけられた。


「アルス、久しぶりね!」


 そう言ってアルスさんの腕に抱き着いて来たのは、華やかさと強さの中にも、どこか守ってあげたくなるような可愛らしさを併せ持った、そんなとても綺麗な女の人だった。


「クレア」


 艶やかな藍色の髪に澄んだ空のような大きな青い目、丁寧にグロスの塗られたぽってりした唇、綺麗にカールされた睫毛――綺麗なお姉さんは好きですか? はい、大好きです! って会話が脳内で繰り広げられて――って、いやいや。

 革の鎧を着けているし、剣を持っているから剣士なのかな?髪飾りとか服の裾の刺繍とか、然り気無いおしゃれが却ってセンスの良さを引き立てている。


「最近姿を見なかったから寂しかったわ」


 そのひと――クレアさんは、ちょっと拗ねたような上目遣いでアルスさんに話し掛ける。


 ……あ、この人アルスさんのこと好きなんだ。


 スタイル抜群の身体を押し付けるように絡ませた腕が、甘えるような声音が、その蕩けそうに甘い眼差しが――。


 実際、並んで立つ二人は、美男美女で凄くお似合いのカップルに見えた。


「指名依頼に掛り切りになってるとは聞いてたけど、もう終わった――訳ではないのね」


 そう言って初めてわたし達に目を向けたクレアさんは、


「貴族の坊っちゃま嬢ちゃまの御守りも大変ね」


 ――クスリと笑った。


「なっ……」


「クレア」


 エドガーが気色ばんだ様子で声を上げかけたその時、いつもの穏やかな声よりもやや強い調子で、アルスさんがクレアさんを呼んだ。僅かにクレアさんの肩が跳ねた――ような気がする。


「まだ依頼の途中だから、話はまた会ったときにしてくれ」


「あ……うん、邪魔しちゃってごめんなさいね」


 アルスさんはやんわりとクレアさんの腕をほどき、「行こう」とわたし達を促す。


 軽く会釈して通り過ぎたけど、クレアさんは切なげにアルスさんを見詰めていて、わたし達なんて眼中にないようだった。


「……なんか、やな感じ」


 小さな声でレオン君が呟く。エドガーさんはもちろん、あのキースさんでさえ僅かに眉を寄せていた。


 皆真剣にこの世界の為に頑張ってるのに、貴族のボンボンのお遊びに見られては面白くないだろう――だけど。


「あんまり気にしない方がいいよ……。何も知らない人に事情を理解しろっていうのも無理な話なんだし」


「だけどチズルっ、あいつチズルのことまで……」


「皆が凄く頑張ってること、この世界の平和を想ってること……ずっと近くで見てたからわたしはよく知ってるよ? それに、わたしのことは皆が知っててくれてるでしょ? だから、わたしはそんなには気にならない、かなぁ」


 そう言って笑いかけると、三人は一瞬ぽかんとして、それからふわりと表情を弛めた。


「ああ。そう、だな……」


「……ふふ、チズル様には敵いませんね」


「そうだよな、チズルが分かってくれてるなら、周りなんてどーでもいいや。あとな、俺達だけでなくチズルだって凄い頑張ってるぜ?」


「レオン君……皆も、ありがとう」


 ポンとわたしの肩に手を置いて、レオン君がにっと笑い、エドガーとキースさんも同意するように頷いてくれた。

そうやって笑うと、レオン君ってちょっと幼い感じになって可愛いんだよね――っと、今はそんなこと考えてる時じゃなかった。


「待たせてごめんなさい、アルスさん」


 階段を一段上がった所で足を止めわたし達を待っているアルスさんに、やや早足で追い付く。


「いや――知り合いがすまなかった」


「アルスさんが謝ることではありませんよ。そもそも、勇者の情報は城に止められているのですから、あの反応が普通なのでしょう」


 ゆるゆるとキースさんが首を振る。エドガーも頷いて、


「こういったことは、これからも行く先々であるのだろうと思う。一々目くじらを立てるのではなく、笑って受け流すことを覚えねば、な」


「そーいうこと! 俺達は大丈夫だからさっ」


「そうか……まぁ、じゃあ行くか」


 明るく言ったレオン君の言葉にアルスさんは僅かに苦笑し、階段を上り始めた。


蛸のから揚げ


帰省途中のパーキングでおいしかったので家でも作ることにした。


材料:

・茹で蛸の足 3~4本(大体500グラムくらい)

・生姜のすりおろし 少々

・塩小さじ 2分の1~1

・しょうゆ、塩麹 それぞれ小さじ1

・こしょう 少々

・片栗粉 適量


作り方:

・食べやすい大きさに切った蛸に、生姜、調味料を揉み混む。

・片栗粉をつけて揚げる。


メモ:


・塩麹がない場合、味醂を少々混ぜるとよい。


・焦げやすいので、低めの温度で揚げるとよいかもしれません。


・味は濃いめなので適宜調節しましょう。


・今回は片栗粉のみで作ったけど、溶き卵を加えた衣で揚げたほうがたぶん蛸には合うと思いました。


・同じ味付けで、とりや焼き肉用の豚トロを揚げるのもよいでしょう。

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