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もちろんプレゼントのためにわざと伸ばした

ゴムではなく紐やリボンできっちり髪を結ぶコツを知りたい。

いや、わりとマジで。




 サキは手芸の得意な侍女さんに教わりながら、組み紐を編んでいた。


「そうそう、お上手ですよ、姫様。あとは糸端をきれいに揃えて――」


「やった、できた!」


 出来上がった組み紐を手に歓声をあげると、隣の侍女さんもいっしょに喜んでくれた。


「教えてくれて、どうもありがとう」


「今日中に完成してようございましたね」


 テーブルの向かいで書類の整理をしていたナタンも、そんなふたりの様子をにこやかに見守っている。





 ことの始まりは数日前。アルスが、最近だいぶ髪が伸びてきたから切ろうかそれとも結ぼうかと口にしたのがきっかけだった。


「そうだ、髪を結ぶのなら紐をわたしがプレゼントしてもいい?」


「いいのか?」


 そうたずねるアルスはうれしそうで、サキは笑ってしまう。


「もちろんよ。ペンダントとかいろいろもらってばっかりだから、たまにはわたしからも何か贈りたいわ。何色がいいとか希望はある?」


「そうだなあ……」


 アルスはサキの顔をじっと見つめ、


「黒と茶色がいい」


 と答えたのだった。





 買ってもよかったけど、どうせなら自分で作ったものを贈りたいと、 作り方を知っている侍女さんに教えてもらうことにした。


 光沢のある絹糸でせっせと紐を組み、両端にとんぼ玉のような形で作った魔石をつける。石の色は、黒い紐に通すことを考えて、普通に作るのより少し明るめの琥珀色にする。


「その魔石には何か魔法を組み込むのですか?」


 書類をさばく手を休めたナタンがしげしげと紐を眺めながらたずねた。


「たいした魔石じゃないし、汚れたり壊れたりするのを防ぐくらいかしら」


 まあ姫様、と侍女さんが首を傾げて、魔石を指差した。


「それでは逆に釣り合わないのではありませんか?たいした魔石ではないとおっしゃいますが、わたくしにはそれなりのもののように思えますわ」


 当然である。アルスへのプレゼントに使う魔石が、屑石であっていいはずがない。


「使いきりにするなら上等な魔法でも大丈夫だけどね、魔力を自動で補充する機能をつけようと思ったら、これぐらいが限界なの」


「ああ、そういうことでしたか」


 紐の両端の石に、汚れ防止と破壊防止の魔法を組み込んで、問題がないかを確認していたところに、玄関の方から魔法の気配がした。


「あ、帰ってきたかな」


 机の上に紐を置き、ぱたぱたと玄関まで迎えに出る。


「おかえりなさい、アルス――どうしたの?」


「ただいま……」


 靴を脱いで家にあがるアルスの様子が、なんだかいつもと違うように感じられて、サキは首を傾げた。


 のろのろと顔を上げたアルスは、そのままべったりとサキに抱きついてくる。


「アルス? 重いんだけど、ほんとうにどうしたの」


「サキ――俺、やらかしたかもしれない……」


 とりあえず背中をぽんぽんたたきながら、何事かとやってきたナタンたちと顔を見合わせた。







「……えーっと、つまり?」


 用意したお茶をテーブルに置き、しょんぼり肩を丸めているアルスの前に腰かける。


 ナタンたちは、ソファの方で二度目の書類の整理をしている。お気遣いの人たちである。


「勇者に、ちゃんと名前を呼べって詰め寄られたんだ。なんか、自分は勇者だけど人間だとか」


 うん、それはその通りだよね、と意味不明なアルスの証言に首を傾げるが、はたと思い当たる。あれだ、多感なお年頃にありがちなアイデンティティへの渇望とかそんな感じのやつ。

 “勇者”という役割の名前で呼ばれ続けることに、自分の存在価値に不安を覚えたのだろうか?


「勇者としてのわたしじゃなくてわたし個人を見て! みたいな感じのことを言われたの?」


 そんなことを言われたって、その役割だってその人を構成する立派な要素なのだからしょうがないのではと思うのだけど――特に、そこまで親密になっていないような相手なら。


「おお、確かにそんな感じだった! すごいな、サキは」


 アルスは、謎が解けたとばかりに手を打ち合わせる。


「まあ、それで名前で呼ぶことになったんだがな、うっかり昔の癖で“普通に”呼んでしまって」


 それで勇者さまに、日本語を知っているのかときかれたのだという。


「――名前のイントネーションって、気にする人は気にするものね」


「そのときは出身がこの国じゃないからって、ごまかしはしたけど……」


 アルスはため息をついた。


「それからというもの、勇者からは何かを期待してるような目で見られるし、その様子を見たほかのやつらはにらんでくるし、散々だ」


「うーん、順調に興味を持たれてるわね」


 だから気をつけてと言ったのに、とサキもため息をつく。


「そもそも、自分のことを勇者さんに教えるつもりはないのよね?」


「ああ、そのつもりだ」


 サキに対してはあっさりと話してくれたのに(お弁当で釣ったからだと言われればうなずくしかない……)、少し不思議だとアルスを見上げる。


「なんか、面倒くさいことになりそうなんだよ」


 サキの視線を受けて、アルスはどこかげんなりした様子で答えた。


「勇者たちは、暇さえあれば“向こう”の教育制度だの福祉制度だのを自分の国に取り入れるにはどうしたらいいか話し合ってて、アドバイスを求められた勇者がなにかしら答えると、さすがは勇者様って誉め称えて――正直、あの得体の知れない場に巻き込まれたくない……」


「得体の知れないって……」


 サキは呆れたように笑う。


 勇者さまがパーティのメンバーにずいぶん気に入られていて、なにかあるとすぐにみんなで彼女を守ろうとするため、訓練で連携がうまくいかないとは聞いていたが――


(NAISEI勉強会も開いていたのね……)


 アルスが“記憶持ち”であることを知ったら、勇者さまはきっとアルスにも「異世界の知識でより良い国を作ろうの会」に参加するように言ってくるだろう。

 勇者さまからは同じ日本人同士と特別視されて、ことあるごとに“向こう”の話題を持ち出され、そのたびに他のメンバーからは嫉妬の目を向けられ――うん、確かに面倒そうだ。


「頑張って逃げ切ってね」


 とりあえずそう励ますと、アルスは自信なさそうに眉を下げて


「いっそのこと城から逃げたい」


 とうめいた。

最近、自分がこの一週間何を作ったのか思い出せなくて困る。



麻婆豆腐メモ


みんな大好き麻婆豆腐。でも、小さいお子がいると一緒に作れない。別の豆腐料理を用意するのめんどい。

そんなときに役に立つかもしれない、こむる的麻婆豆腐の作り方。



材料:


・豆腐 1丁

・ひき肉 150グラムとか200グラムとか

・ネギ 白ネギの場合2分の1本、

    青ねぎは束にして直径1センチくらい

・鶏ガラスープのもと 小さじ1~2

・味噌 小さじ1

・砂糖もしくはみりん 小さじ1

・甜麺醤 小さじ1

・豆板醤 小さじ1~好きなだけ

・ゴマ油

・水とき片栗粉 水と片栗粉大さじ1~2ずつ

・塩コショウ



作り方:


・重しをして水を切るとか下ゆでするとかした豆腐を、賽の目切りにする。別にめんどうなら下ごしらえしなくてもいいと思う。


・ネギを刻んでおく。


・ガラスープのもと、味噌、砂糖、甜麺醤を合わせておくと楽……かも?


・熱して油をひいたフライパンでひき肉を炒め、合わせておいた調味料を加える。


・水を入れて好きな濃さにする。大体100~300ccくらいの間で。


・ひと煮立ちさせたら豆腐、ネギを入れて煮る。崩さないように気をつけて混ぜる。


・味見をして足りないものがあったら足し、水とき片栗粉でお好みのかたさに調整。ゴマ油と塩コショウをふってざっと混ぜる。


・子供用に取り分ける。


・豆板醤を入れる。



メモ:


・味噌と砂糖またはみりんは、めんどうなら入れなくてもよい。


・しょうゆや酒を少々加えるのもよいでしょう。


・いきなり水とき片栗粉(水は煮るときの分量で)で煮ても別にいいをじゃないかな。ていうかこむるはそうしてる。もしゆるかったら後で水とき片栗粉を足すし、かたかったら水を足すし。


・最後に塩コショウを加えると味が引き締まる……気がする。花椒代わりみたいなもんですかね。


・素揚げするか多めの油でさっと焼いた茄子で麻婆茄子にするのもいいですね。


・肉とネギだけで作ると、味噌ラーメンや冷麺の具にもおすすめ。この場合とろみはつけない。


・味つけは大体の感じなのでお好みで調整してください。




昔は、こむるもひき肉を炒めてうえいぱーした段階で、小さなフライパンに取り分けて豆腐とネギを入れて、卵でとじたりとろみをつけたりしてたわけですよ。

でも、あれっ?豆板醤を最後に入れるようにすればその直前で取り分けられるんじゃね?って気付いたんですね。なぜもっと早くに気付かなかったのだろう、自分。


昔、大学の研究室で一緒だった中国からの留学生が言ってた。

おいしい麻婆豆腐を作るコツは、味つけに少し市販の麻婆豆腐のもとを入れることです!(ドヤァ)って。

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