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女子の団結力とそれぞれの恋模様

子供の言葉づかいは、どこまで“子供らしく”書くべきなのか。

そもそも、文字を習っていない子供は、まだ頭の中で単語と文字が結び付いておらず、純粋に音で言葉を判断しているということになるわけなので、すべて平がなで書くのが正しい、のかもしれないが――


文章は目で読むものと考えれば、ある程度の読みやすさは確保されるべきであるとこむるは考える。


「私も一緒に遊びたい」

「わたしもいっしょに遊びたい」

「わたしもいっしょにあそびたい」

「わたちもいっちょにあちょびたい」


ぱっと思い付くのでこれくらいの段階に分けることができるが、これらのうちどれを採用するかは自分の中のリアリティと目にしたときの読みやすさとの兼ね合いになるわけである。


子供向けの本のように、全部ひらがなで単語の区切りにスペースを入れる、というのもありかもしれない。


「それでね、サキちゃん。最近アルスさんと全然会えないってクレア様が悲しんでらっしゃるの。そりゃあね、もちろん儚げで伏し目がちなお姿も絵に残したいくらいにお美しいけど」


「でも、そうじゃないの! わたしたちが真に求めているのは輝かんばかりのクレア様の笑顔なの!」


「だから、わたしたちクレア様のために何か出来ることはないかって」


 口々に言い募るお姉さん方をじっと見つめていたサキは、こてりと首をかしげ、結局お姉さん方はサキに何を求めているのかと無言でたずねた。


「アルスさんが今どこにいて何をしているか、サキちゃん知らない?」


 クレア様信奉者の会魔道具工房支部(命名はサキによる)緊急会議にサキは招かれている。

 時おり休憩時間にサキを連れ出しに来る彼女たちに、職人のおじさんたちも慣れたもので、頑張れよーなどとやるきのない声援で送り出してくれた。


 さて、今回の議題はなんだろうと(まあ大体の予想はついてはいたが)、彼女らの待つ工房の一角に着いたとたん血走った目の面々に取り囲まれ今に至る――


「――あの、それを知って、お姉さんたちはどうやって問題を解決するつもりなんですか?」


「もし依頼が忙しいのならほんの少しの時間でもいいから、クレア様に会って励まして差し上げてほしいって、アルスさんに直談判しようかと――」


 今現在、勇者たちはまだ野外での訓練に移れる段階ではないとアルスによって判断されたらしいので、彼らが森の依頼を受けに城下におりてくるのは当分先のことである。

 よって、アルスに会おうと思うなら、お城まで出向かなければならないわけだが、果たしてクレア様信奉者の中に、ほいほい王城に出入りできるような身分の者はいるのだろうか。


「えーっと、アルスは指名依頼を受けていて、しばらくの間はその依頼者のところで暮らしているんですけど」


「それはどこ? 依頼者の家で寝泊まりって、王都から離れたところなの?」


「地方にいるのなら行くのが大変ね」


「でも、クレア様のあの憔悴ぶりを考えれば――」


「あ、いえ、王都にはいますよ」


 そう聞いて安堵の表情をお姉さん方は浮かべたが――


「ただ、これ以上お話しすることはちょっとできなくて」


 サキの言葉にざわめきが走る。断られるとは夢にも思っていなかったのだろう。


「……え、どうして?」


「別にわたしたち、アルスさんの邪魔をしようなんて思ってないわ。ただクレア様のために」


 何とかサキを説得しようとする彼女たちに、困り顔で告げた。


「わたし、まだ捕まりたくないし……」








 今回の依頼にはやんごとない身分のお方が関わっていることを匂わせたところ、お姉さん方はみるみる勢いを失い、結局“アルスにクレア様を励ましてもらおう作戦”は断念された。


 かわりに、“真摯にクレアのことを思うお姉さんたちこそが、まずクレアを支えるべきではないか”というサキの意見が採択され、緊急会議はお開きとなった。


 帰り際、何か動きがあったら教えてほしいと言われたが、サキにそのつもりはないし、クレアを褒め称えるならともかく、クレアとアルスの仲を取り持つための集まりには今後も参加しようとは思っていない。


 “A君と付き合っているのを知らない親友のB子ちゃんから、仲を取り持つよう頼まれた”

 なんて、物語で見ないわけではないが、そういった展開は悪趣味だと感じるし、断りきれずに流されて「信じてたのにひどい!」などと絶交されるのも馬鹿らしい(クレアはもちろん、お姉さん方と親友といえるほど仲が良いわけではないが)。


(次に何か頼みごとをされたとき、どうやって断ろうかな……)


 うーんと頭を悩ませながら、サキはぽてぽてと薬草取りの子どもたちと待ち合わせをしている城門へと向かうのであった。




 さて、思いを寄せているお隣のダニー君がサキに結婚を申し込み、まさにサキとの友情にひびが入るかと思われたミナちゃんだが、実際にはそのようなことにならなかった。


「別にわたし気にしてないわ。どうせ、新しく引っ越してきたサキちゃんが珍しくてかわいいからって目移りしてるだけだもの。そのうち一番ダニーのことを近くで思っているのが誰なのか気づくはずよ」


 とは、ダニーがサキにプロポーズしたことを知ったミナちゃんの言葉である。


「だから、サキちゃんはえんりょなくダニーのことを振っちゃっていいからね。傷ついたダニーをわたしが優しくなぐさめて、そこから“ほだされてくれる”かもしれないでしょ」


「ミナちゃんどこでそんな難しい言葉覚えたの?」


 サキが首をかしげると、


「お母さんが近所のおばさんたちと話してたの。えっと、アマンダさんとこの娘さんは、いつも“ろくでもない”男にひっかかってばかりでどうしようもない。この間も、別れた相手がお金を“たかりに”やって来て、はじめは追い返そうとしてたのに、最後には“ほだされて”しまうんだから、あれは男だけの責任じゃなくてあの子が男をだめにしてる部分もあるんだ――って。アマンダおばさん家も大変ね」


「子どものいる前でする話じゃないね……」


 思ったよりヘビーな話に、サキは苦笑いを返した。


 そういったわけで、サキはダニー君に丁重にお断りを入れたのだが、諦めの悪い性格だったらしいダニー君は、それからもことあるごとにサキに思いの丈を告白し、見事に振られ続けている。


 現に今日も、


「ねえサキちゃん、僕のお嫁さんになってよ」


「アルスにお嫁さんにしてもらうからやだ」


「なあなあ、まだアルス兄ちゃんは依頼が忙しいのか?」


「うん、だいぶかかるんだって」


「えー、つまんねーの。早く帰ってこないかな」


 そう言って、元気の有り余っている男の子たちは薬草取りの駆け出し冒険者たちのもとに向かう。休み時間に剣なり魔法なりを教えてもらう約束を取り付けたいのだろう。

 近頃は、行き帰りも含めて草原に向かう子どもたちを見守ろうという方針がギルドで出されたらしい。いいことだと思う。


「僕、いつかアルスお兄ちゃんより強くなってサキちゃんを守ってあげるから!」


「ううん、ダニー君がアルスより強くなれたとしても、アルスの方が好きだから」


「ばかね、ダニー。アルスお兄ちゃんはギルドで一番強いのよ。それより強くなんて無理に決まってるわ」


「ミナちゃんはだまっててよ、僕はサキちゃんと話してるんだから」


「サキちゃん、今日なにして遊ぶ?」


「鬼ごっこはどう? 工房で空に浮かべる魔道具を作ってるんだけど、みんなに試してもらいたいの」


「空を飛べるの!?」


「ほんと!? すごい!」


「あんまり高いと危ないからちょっと浮くくらいだけどね」


 小さな子たちから歓声があがり、大きな子たちも目を輝かせている。


 その横で、今日も軽くあしらわれたと落ち込むダニー君、アドバイスするふりをしつつさりげなく自分を売り込むのを忘れないミナちゃん、そのふたりをそっと見守るポール君――


「最近のガキはませてるなあ……」


 呆れたように笑いながら、子供たちに飴を配るジョンがつぶやいた――いつのころからか、城門の詰め所には飴を入れるかごが置かれ、かごが空になることはないのだとか――。


(ほんと、ませてるよね)


 サキも、声には出さずジョンに同意した。はた目には、サキもそのませてる一員に見えるのだけれども。


 

我が家で人気のカリカリベーコンのサラダ。

作り方はかんたん。好きな大きさに刻んでフライパンでカリカリに焼いたベーコンを、お好みのサラダに添えるだけ。


・ベーコンを焼くとき、ベーコンが跳ねて危ないので気を付ける。蓋をしたり長い菜箸でなるべく遠くから混ぜるなど。


・もうこれ焦げるんじゃないの?ってくらいカリカリにするのがおいしい。


・シーザーサラダのクルトンみたいな感覚でカリカリベーコンを使うと言えば分かりやすいでしょうか。こむるはシーザードレッシングちょっと苦手だけど。


・卵サラダにカリカリベーコン、少し小さめに切ったレタスをまぜて、きゅうりやトマトなどを一緒に盛り付け。粗びき黒こしょうを最後にトッピングするのが好き。


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