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勇者パーティ魔王入り

モーリス・センダックの絵本『チキンスープ・ライスいり』、旅行先にも持って行って、いつも読んでもらっていました。いつか絵本にかかれたライスいりのチキンスープを食べるのだと思っていたものです。




魔法と魔術は別ものであるのか、あるとしたらどちらが格上なのか、魔法を使うための術が魔術でいいじゃない、いやいや、明確に区別しないと、などなど――

気にする人は気にするだろうこの問題、今作では、全て『魔法』、『魔法使い』と統一することにしております。

あ、いえ、考えるのが面倒になって逃げたとかそんなことない、のですよ、はい……

 妙に強調される“昔話”という単語に怪訝そうな顔をしながらも、サキを椅子に座らせて、アルスはため息を吐き出した。


「ええっと、それでその指名依頼なんだけどな、サキ。これからしばらく草原に付き合えなくなりそうなんだ」


「大変な依頼なの? 私は構わないけど」


 最近は森も落ち着いているし、子どもたちだけで大丈夫だと思うと答える。


「国が依頼主で、勇者の仲間になって魔王討伐に協力してほしい、だとさ」


「へえ、そうなんだ……」


「ああ、そうなんだ……」


 二人で顔を見合わせる。周りの侍女さんたちも、なんとも言えない表情だ。


「――勇者さまのパーティに入るの?」


 こてりと首を傾けてサキはたずねた。


「そうなるな」


 アルスはこっくりうなずく。


「魔王を倒すの?」


「倒すらしいぞ」


「アルスが?」


「不思議なことにな」


「へーえ……」


 勇者パーティに魔王さまが紛れているようです――そういうの、ゲームとかマンガとかでありそうよね。


 新しい紅茶には、ミルクと砂糖をしっかり入れることにした。なんだか、聞いているこっちまで疲れてきた。


「前に魔法使いのスカウトのときは断ってたけど、今回は受けるのね」


 気をきかせた侍女さんがさっと差し出した、シロップがしっかりかかったフルーツケーキをかじりながら、アルスは説明する。


「宮廷魔法使いって言っても、ただの魔力要員だったとしたら召喚の場に立ち会えるか分からなかったからな。召喚後の勇者の動向も探れるか怪しかったし」


 確かに、乾電池よろしく魔力を搾り取れるだけ搾り取ってあとはお払い箱、という可能性もないわけではなかった。運よく城の魔法使いの塔に残れたとしても、一番下っ端からのスタートだろうし、勇者に関わる機会などまずなさそうだ。


「魔王討伐隊がやってくるのなら、演習の時期を調整しなければなりませんね」


 タニアの言葉に、サキは首をかしげる。


「演習って?」


「三年に一度、危険な魔物の間引きを兼ねて、魔の森で騎士団の訓練をしてるんだよ」


 ベルーカは、魔の森を背にする形で王都があり、そこから扇状に国土が広がっている。王都の中でももっとも森の近くに位置するのが王城で、城と王都を守る騎士団はそのまま国を守る最前線でもあるのだ。


 魔の森の演習は訓練と魔物の間引きを兼ねて行われる。ベルーカ側だけでなく、“外”側からもまんべんなく、魔の森に入る“外”からの“お客さん”が危険な目にあわないように。


(そこまでお気遣いされてても、魔の森って危険区域指定されてるのね……)


 前回の演習は一年とちょっと前だったのでまだ間があるが、勇者たちの出立に合わせて前倒しをしなければならないだろう――


「まあ、そんなわけでだ。勇者の戦闘訓練に参加するために明日からヨランダの王城暮らしになるから、一緒に草原には、行け……な――」


 みるみる声に勢いがなくなり、侍女さんたちの冷たい視線がアルスに突き刺さる。


「いや、あのな、サキ」


「じゃあ、一緒にお弁当食べられなくなるの? 晩ごはんも?」


「えっと……」


「――うん、わかった。ちょっと残念だけど、大事なお仕事だもんね」


 勇者の問題は、この国の安全に関わる問題だし、それに、神さまからも頼まれている、いわば――大げさに言うなら――世界の安定に関わる問題でもあるのだ。

 何を措いても最優先すべきだとわかっている。わかっている――のだが。


 平気な風を装ったはずなのに、ちょっとどころか、だいぶ残念なのが顔に出てしまった気がする。まだまだ修業が足らないようだ。


「あ、あのな……それで、こっちの仕事をするのにサキの家を使わせてほしいんだ。ほら、ある程度はナタンに任せるとしても俺じゃないとできない書類なんかもあるだろ?」


「直接お城に跳ばないの?」


 いつのまにか下がっていた頭をわずかに持ち上げ、アルスを見る。両手で抱えるように持ったカップの中で、紅茶が揺れた。


「いや、えっと、その――」


 自分の考えをまとめるように少しの間視線をさ迷わせた後、アルスはサキの手にあるカップをそっと取り上げてテーブルに戻し、サキの両手を握る。


「確かに城でやるべきなんだろうけどな。どんなこじつけでもいいから、サキに会う理由がほしいんだ。夜、部屋で一人だけになったらサキの家に“跳んで”行くから、仕事をする場所を貸してくれないか? 出来ればお茶とお菓子を出してくれるかわいい女の子付きで」


「――そうね、頭を使うお仕事をするなら甘いものは必要よね」


 いたずらっぽく付け加えられた要望に、思わずくすりと笑ってしまった。


「でも、大事な書類をお城の外に持ち出したら怒られない?」


「あら、姫様。姫様のお屋敷は王城の庭園とつながっているのですから、城の一部であるも同然。どこに問題がございましょう」


 にこやかにタニアが言い切る。


「……それでいいの?」


「もちろんでございます」


 まあ、目の前でサキの頭をなでているお城で一番偉い人が、異議を唱えていないのだから問題ないのだろう――たぶん。





紅茶にシナモンパウダーを入れて混ぜるより、開き直ってチャイを作るつもりで煮出してしまったほうが馴染みがいい。


段階1

お菓子作りで余ったシナモンを使い切りたいなあ、そうだ、シナモンティーにしよう。

紅茶を入れたカップにさっさか振って混ぜてみる。とけない。カップやスプーンに粉がまとわりつく。


段階2

そうだ、チャイ風にしたらどうかしら。ティーポットにシナモンを入れて紅茶を入れる。ついでに砂糖とミルクも入れる。うむ、ちょっといい感じ。


段階3

他にスパイスを入れてもいいのではなかろうか。おお、生姜チューブがあるじゃない。あ、粗びきコショウも入れよう。……なんかつぶつぶしてる。もう生姜パウダー買ってこよう。


段階4

生姜パウダーを買うつもりが、なんか気がついたらクローブとかカルダモンとかも一緒に買ってしまっている。

……どうしてこうなった。もはや煮出すしかないじゃないか!


超適当なチャイの作り方


小鍋に紅茶の葉を飲みたい杯数分、シナモン、コショウ、クローブ生姜、カルダモンなど、お好みのスパイスをお好みだけ入れ、水を通常紅茶をいれるときの半分くらい加えて火にかける。


沸騰したら火を止め(少し煮出してもよい)2~3分置いておく。


砂糖とミルクを入れてもう一度火にかけ、沸騰して泡がむくむくとなった瞬間を見計らって火を止める。


茶漉しでこして飲む。


・スパイスは小さじ半分あたりから自分好みに調整していけばいいでしょう。

・コショウ、生姜を入れる場合、入れ過ぎると辛くなるので、ひと振りかふた振りでまずは様子を見る。

・砂糖は一杯あたり小さじ1くらい?しっかり甘くするのがそれらしい仕上がりになるでしょう。


Q.こんなに適当で大丈夫?

A.美味しければいいのです。インドの人も、きっと広い心で認めてくれる……と思う。


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