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周知のためのパフォーマンスは大事

“中世ヨーロッパ”風の、しかも“異世界”なのに、結婚式のドレスは純白で、指輪を交換して健やかなときも病めるときも……ってやることに強烈な違和感を覚えるひねくれものです。

(そもそも、白ドレスの結婚式が流行ったのって19世紀後半のヴィクトリア朝以降……)



「だから、お嬢様に似合うのはこのピンクのドレスしかないわ」


「いいえ、絶対にこの若草色のほうよ」


「あら、でもそれは色はよくても形がいまいちだわ」


「まあ! それを言うならそっちはフリルがうるさくないかしら」


「それより、こちらの青のドレスが――」


 目の前で繰り広げられているのは、どのドレスがサキに似合うかという戦いである。


(あんまりごてごてじゃなきゃなんでもいいんだけど――)


 ずっとシュミーズとかぼちゃパンツでいるのは心もとないなあとぼんやりしていると、勢いよく客間の扉が開いた。


「何事です、騒々しい」


 あらわれたのは侍女のお姉さん方よりも幾分年かさの女性だった。


「タニア様!」


 厳しい目付きでお姉さん方を見回すと、お姉さん方はぴしっと直立不動になる。よく訓練されている。


「報告を」


「わたくしの不注意で、庭園で迷ってらしたサキお嬢様のお召し物が汚れてしまったので、ひとまずはこちらにお連れ致しました」


 打てば響くようにメイシーが答える。


「お連れの方への連絡は」


「まだお連れ様の名前をお聞きできておりません」


 タニアは、お姉さん方が手に持つドレスをちらりと見て首を振り、衣装部屋から持ってきたらしい大量のドレスの山から、藤色のハイウエスト切り替えのドレスを手に取った。襟元や裾に銀糸でつる草の刺繍のされた、品のある一着。


 お姉さんたちからどよめきがあがった。


「お嬢様、どなたにご連絡さしあげればよいかお聞きしても?」


 お風呂に入れられているときも離さずつけていたペンダントをじっと見つめ、タニアがたずねた。

 袖を通し終わったサキは、今度は髪を整えられリボンを結ばれ、お姉さん方は出来上りに満足げにうなずく。


「……あの、つかぬことをお伺いしますが」


 このタイミングならきけるかもしれない。


「はい」


「ここは、ええっと、ベルーカのお城……であってるんですよね?」


「その通りですが……?」


 ――薄々は察していたのだ。


 なぜなら、メイシーやタニアをはじめ、ここで会う人は、揃いも揃って()()()()()魔力の持ち主だったからである。特にタニアなどは、ナタンに迫るほどだった。

 いつか会ったヨランダの宮廷魔法使いなど足元にも及ばない。

 そんな人たちがいるような場所といえば、サキにはひとつしか思い浮かばなかった。


「王さまのいる?」


「ええ」


 なぜそんな分かりきったことを、という顔をしながらもタニアはうなずく。


(うーん、そっかあ……)


 はたして、どう説明すればすんなり理解されるのだろうか?


 少し考えて、サキはとりあえずペンダントを外した。“外”の基準でそれなりの魔法使い程度に見せかけていた魔力が本来のものに戻り、お姉さん方が息をのむ。


「わたしの後見人か、このペンダントの送り主に会いたいのだけど、連絡をとってもらえますか?」


「その方のお名前はなんと?」


「ナタンとアルス」


 一人動揺した様子のないタニアにたずねられ、ついいつもの調子で呼んでしまってから、“さま”とか“陛下”とかつけた方がよかったかもと気づいた。










 庭園の一角、見事なバラ園が見渡せるあずま屋で、サキはお茶とお菓子を前にちょんと座っていた。


「まさかナタニエル閣下の妹姫様とは存じ上げず、大変失礼を致しました」


「まだ正式に養子になったわけじゃないから……」


 優雅な手つきでお茶をカップに注ぎながら、メイシーは申し訳なさそうに謝る。


 あずま屋に連れてこられ、お茶の用意を整えたあとは、タニアとメイシーだけを残し、あとのお姉さん方はその場から去っていった。

 とはいえ、近くにひそんで興味津々に見守っている気配はあるのだが――


「近くセニエ家がお迎えになる精霊の姫君は、未だ“外”にお暮らしだと伺っていたのですが、もうベルーカにいらしていたのですね」


 と微笑むタニア。彼女だけは、早い段階でサキが何者か察していたようだった。何やらサキに関する噂が流れているような気配が会話の端々から感じられるので、きっとナタンあたりが根回しをはじめているのだろう。


「まあ、“外”から! 魔力が少ないように見せていらしたのはそのためでしたのね」


 少ないといっても、“外”の人たちからしてみれば十分多い方なんだけど……と内心つぶやきながら、サキはうなずく。


 そこに、慌ただしい足音と、よく知った声が聞こえた。


「サキ!」


 ぱっと笑顔になったサキはドレスの裾をひるがえし、声の主に駆け寄り、お腹に抱きついた。いきなり知らないところにやってきて、親切にはされていてもやはり不安だったのだ。


「アルス!」


 抱き止めた腕に一瞬力を込めてからサキを持ち上げたアルスは、サキに特に変わった様子もないのを見てとって、ほっとしたように笑った。


「サキが城にいるって聞いて驚いた。いったい何があったんだ?」


「わたしにもよくわからないんだけど、家の庭にいつのまにかできてた扉を開けたら、ここにつながってたの」


 起こったことを簡単に説明する。


「いつのまにかできてた?」


「なんか、魔力を通じてつながった道を、門って形で固定した感じ――アルス?」


 さっきからじっと見つめられていて、なんだか居心地が悪い。


「うん、サキは今日もかわいいな」


「ちょっ――!?」


 いきなりそんなことを言われて赤くなった頬と耳を、とっさに両手で隠す。


「そのドレス、よく似合ってる」


 にっこり笑い、アルスはサキが隠した手の上から頬にキスした。


 圧し殺した悲鳴が、茂みや柱のかげからあがる。


 人前でのスキンシップに馴染みがないと定評のある日本人のサキは、手の甲に触れた感触がなんだったのか一拍遅れて理解し、心の中で盛大に悲鳴をあげた。


「やっと追い付いた。陛下、慌てすぎですよ――ああ姫、ようこそベルーカへ。今日はまた一段とお可愛らしい」


 アルスの後ろからやってきたナタンの声が、やけにのんきに聞こえた。












「うーん、俺やナタンがしょっちゅう行き来してたせいで、こことあの家の魔力にパスができたか?」


 庭園の奥、いつの間にかあらわれていた木戸を前に、二人で一緒に首をかしげる。


「あ、そういえばあの家の魔力はその土地につながってて、別の場所と接続することで引っ越しできるって、この前神さまが言ってたわ。もしかしてこれはベルーカと接続されたってことなのかも」


「ああ、なるほどなあ」


 しばらくいっしょにお茶を楽しんだあと、ナタンは仕事に戻っていった。メイシーとタニア(とお姉さん方)は片付けに残り、アルスはサキを送るためここにいる。


「まあとにかく、行き来がしやすくなったってことでいいのよね」


「とりあえず、そういうことだな」




 この日以降、なにかと理由をつけて、サキの世話を焼きたい侍女のお姉さん方が、掃除が料理が服がと王都ヨランダの魔法屋敷にあらわれるようになり、もはやこの家はベルーカの王城の一部のような扱いになってしまったのだった。













Q.中世ヨーロッパと聞いて、何を連想しますか



A1.アーサー王


・史実に基づいたアーサーさん

中世初期くらいですね。なかなか野性的なお方だったようです。

・マロリーとかテニスンとか……

いわゆる中世騎士文学、その系譜としてのアーサー王。たぶん、中世の中~後期くらいのイメージでしょう。ラファエル前派の方たちが大好きな題材ですね。

・問おう、あなたが私のマスターか

こむるも別にきらいじゃないけど、あれは文学ではないと思う。



A2.修道師カドフェル愛してる

そうですね、こむるも愛してます。テレビシリーズを見れば、いわゆる”中世“のイメージが確定できるんじゃないかなって思います。



A3.おお、ロミオとか?

そうですね、そんな感じです。ジュリエットの衣装、こむるは大好きです。



A4.おすかるがあんどれでじゅてーむなんだよね。

ちょっと歴史を勉強し直してきてください。






実際中世って、1000年くらい幅があるので、フランク王国ごろの、とか第○回十字軍の、とか百年戦争後半のとか具体的に言ってほしいよね。できればイタリアとかフランスとかの地方も。



え、だれもテンプレ異世界ファンタジー(笑)にそんなもの求めてないって?全くもってその通りですね。


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