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side 千鶴――その春の日に

大丈夫、投稿先を間違えたりはしてないよ!




もうすでに後悔してる。テンプレ的な文章ってむずかしい。

なんでこんな構成にしてしまったんだろう自分……








文の途中をぶったぎり。

わざと語尾を省略し。

なんだか印象的な雰囲気に見せる系の文章、あんまり好きじゃないんですよね。


~~だそう。って言い方もあまりよろしくないと思っています。別におしゃれだとは思わない。一文字二文字くらい面倒くさがらずに書けばいいのに。

 高校二年になって少し、新しいクラスメイトにもなじんできた頃。


 塾帰り、すっかり日が暮れた道を駅に向かって歩いていた。

 来週の模試、ちゃんとできるかな。次の信号待たずに渡れるといいけど……このタイミングはちょっと微妙かも。


 ふと横断歩道を見るとこっちに渡ってくる二人連れが目に入った。

 年配の女の人と長い髪の綺麗なお姉さん。オフホワイトのブラウスとミントグリーンのシフォンスカートが春らしい。親子だろうか、なんだか楽しそう――あれ、なんで信号は赤なのにトラックが走ってくるのかな、あんなスピードで……


 周囲から上がる悲鳴、お姉さんは咄嗟に母親を庇って、ううん、違う。お母さんがお姉さんを突き飛ばしたんだ――トラックはそんな必死な二人を嘲笑うように、まるで紙細工を押し潰すように横断歩道を通り過ぎ。


 あれ、どうしてトラックはこっちの歩道に向かって来るんだろう、どうして、わたしの足は凍りついたみたいに動かないの……?









 その日、わたし――高垣千鶴はこの世界から消えた。
















 来る筈の衝撃がいつまでたっても来ないのに気づいて、いつの間にか固く閉じていたらしい目を開けると、薄暗い部屋にいた。


「……え?」


 制服のセーラー服も通学鞄もそのまま、紺のハイソックスに履いたローファーが、ぺたんと座り込んだ石造りの床に痛い。


「なに……? ここ何処? どうして」


 どうして、わたしはまだ生きている――?


 茫然と呟いたとき、


「よくぞおいで下さいました、勇者様!」


 そう声をかけられて、わたしはようやくこの部屋?にいるのはわたし一人だけじゃないことに気付いた。


「おお……」


「まさか、本当に成功するとは」


「奇跡だ……!」


 床には、わたしを囲むように丸く、ゲームか何かに出て来るような魔方陣みたいなものが描かれ、魔方陣の周りにいる人達は、なんだかポッターさんちのハ○ーさんが通ってた制服みたいな格好をしてるし――あれだ、なんかこういうの知ってる。

 ほら、友達が貸してくれたラノベで読んだやつだ。異世界トリップとか召喚とかいうやつ……え? いやでも、あれってあくまでも創作の話でしょ?


 などと現実逃避してる間にさくっと謁見の間に連れて行かれ。


「おお、勇者殿! どうか魔王の脅威から世界を救ってほしい」


 気がつけば、玉座に座るナイスミドルなおじさまと対面していて。


 なんでも、この世界には魔王と呼ばれる魔族が、配下の魔族や魔物を率いて人間を支配しようと企んでいて、それを阻止する為に力あるもの――つまり勇者であるわたし(!?)を召喚したそう。


 お願い致します、勇者様! と謁見の間に居並ぶ偉そうな人達も声を揃える。


「あ、えっと、あの……」


 戸惑うわたしを見兼ねたのか、王様の傍らに控えていた白に近い水色の髪の青年が、一歩前に進み出た。わぁ、イケメンだよ!


「陛下、勇者殿も突然のことにお困りの様子。そう急かされては、落ち着いて考えることも出来ますまい。そもそも、まだ勇者殿のお名前すら伺っていないのですよ?」


 イケメンさんは、王様と面差しがよく似ていた。親子なのだろうか。わたしの方に向き直ったイケメンさんは、自分はこの国、エスター王国の第二王子のエドガーだと名乗った。笑顔が眩しいです。


「この世界の救世主が、まさかこんなに可憐な少女だとは思わなかった。名を教えて頂いても?」


「あの、高垣千鶴といいます。……あっ、高垣は家名で、千鶴が名前なんですけど――」


「ふむ――こちら風に言うとチズル・タカガキか。勇者チズルよ、今日のところはひとまず休まれるがよい。エドガー、後は任せた」


 そう言って王様は退室し、残されたわたしはエドガー王子の案内でお城の一室に案内された。


「チズル殿、どうか生まれ育った世界から無理矢理召喚するなどという非道な真似をお許し頂きたい。――いえ、我々には許しを請う資格などありはしないのか……それでも、魔王の手から平和を取り戻すのに手段を選んでいられなかったのだ」


 廊下に敷かれたふかふかの絨毯が、ローファーの靴音を吸収する。廊下を歩きながら王子は自嘲するように笑って、首を振った。


 確かに、異世界から勇者を召喚しないと魔王に太刀打ちできないなんて、よっぽど切羽詰まってるよね。魔族を率いるだけじゃなくて、魔物を操って人を襲わせるなんて、酷い。


 それに――と、この世界にくる直前のことを思った。


 勇者としてあのタイミングで召喚されていなかったら、わたしはあの事故に巻き込まれて死んでいたんだ……。つまり、わたしを召喚したこの国のたちは命の恩人ってことになる。


 役目を果たしたら地球に帰れるのか気になるけど、元々死んじゃってるようなものだし、もし帰れなくても仕様がないのかな……困ってる人を見捨てるのもなんだか悪いし……。


 わたしは、勇者として王様や王子様に協力してもいいんじゃないかと思い始めていた。

茶番のはじまり

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