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言質をとっていくスタイル

あ、最初に謝罪しときます。胸キュンでピュアっピュアなラブストーリーを 期待してるかた、ほんとすいません。


純粋無垢でけなげでともすれば自己評価底辺で周りからの好意にひたすら鈍感で恋に受け身なだけのヒロインちゃんにいまいち魅力を感じないこむるです。


……なんで恋愛なんてカテゴリで書いてんだ、自分。

 魔法の気配を感じて部屋を出ると、玄関にアルスがいた。ドアの開く音はしなかったから、直接跳んできたのだろうか、珍しい。


「おかえりなさい、アルス。思ったより早かったね」


 ぱたぱたと駆け寄ると、やけに上機嫌なアルスにいきなり抱き締められる。


「ああ、やっと帰ってこれた。クレアのやつ、一杯ですぐ帰るって最初に言ってあるのにしつこくてさ」


「わ、どうしたの急に」


 どうにか顔を上に向けて呼吸を確保する。ほんのりアルコールのにおいがした。


「アルス酔ってる?」


「それがさ、聞いてくれよサキ。さあ乾杯って飲んだら注文したのと違う酒だったんだよ、しかも店で一番強烈なやつ!」


 おかしそうに笑いながらサキを抱き上げ、靴を脱ぎ居間に向かう。


(間違って、ねえ……)


 サキは首をかしげた。


「あのクレアってお姉さんに、自分の部屋で休んで酔いを醒ますようにとか言われなかった?」


「よくわかったな、でもそんなことしてたら帰るのが遅くなるだろう?」


 だからさくっと断ったのだと、アルスは胸を張る。


(うーん、酔わせて既成事実に持ち込もう作戦失敗……)


 心のなかでクレアに手を合わせたのだった。


「アルスってば、そんなにシチューを楽しみにしてくれてたの?」


 ぽすっとサキごとソファに座ったアルスは、ぐりぐりサキの頭に頬ずりしながら当然と答えた。


「本当はクレアの昇格祝いにだって出ずにこっちに来たかったくらいなのに」


「光栄だわ」


 くすくす笑い、


「でもね、アルス」


 両手で突っ張って頬ずりから逃れ、アルスと向き合う。


「楽しみだったのは料理だけ? ちょっと寂しいわ」


「そんなことない! たしかにサキの作る料理はこっちのも向こうのもすっげーうまいから、毎日でもここに来たいくらいなんだけど! でもサキに会うための口実みたいなものだし――」


「それはどうして?」


 サキは、酔っていつもより口が軽くなっているらしいアルスに、ここで攻めてみることにした(敵はクレア以外にも工房から冒険者、ギルドのお姉さん方までたくさんいるのだ)。


「そりゃもちろん、サキのことが大好きだからだ」


「そうなの?」


「そうなの」


「カレーライスとプリンよりも?」


「から揚げとハンバーグよりも」


 アルスは大真面目な顔でうなずく。


「あ、でももう料理はいらないってわけじゃないぞ! むしろ毎日食べたいし!」


 あわてて付け加える様子がおかしくてつい笑ってしまう。


「毎日味噌汁を作ってくれってやつ?」


「そう、それ、毎日俺に味噌汁作ってくれよ! 明日は大根と油揚げな」


「うん、いいよ。ちゃんと素面のときに言ってくれたらね」


 本当は心臓が口から飛び出そうなほど跳ね回っているが、そんなことは一切表に出さずにさらっと答える。


「おう、約束な! よし、じゃシチューを――」


「えっ、ちょっとアルス!?」


 満面の笑顔でサキを再び抱き締め、その反動で立ち上がろうとして――ぐらりと傾いで、アルスはずるずるソファからすべり落ちた。


「ねえ大丈夫? アルス、アルスってば……」


 返事のかわりに聞こえてきたのは安らかな寝息。


「えー……」


 しかも、アルスにしっかりと抱き込まれていて動けない。


「アルスー、シチュー食べないのー?」


 返事はない。あと、やっぱり動けない。


 実のところを言えば、魔法でアルスを浮かせるなり自分を転移させるなりすればいいだけの話なのだが、あわてていて思い浮かばなかった、ということにしておいた。


 お腹はそれなりに空いているが、まあ一食くらいならどうってことはない。シチューは、アルスが起きてから一緒に食べることにしよう。


(明日になったら、アルス今日のこと覚えてるかしら)


 サキは、当たり前だけどまつ毛も金色なのね、などと妙な感心をしながらアルスの寝顔を眺め、そして目を閉じた。


 もしアルスが今晩の会話を覚えていたら、ちゃんと自分も気持ちを伝えよう――。


スジ肉といえばおでん?

すまん、こむるはおでんそんなに好きじゃないんだ。練り物とかこんにゃくとか卵とか入ってなかったらまあ嫌いじゃないけど、でも、それってきっとおでんじゃない。


なぜそんなことになったかというと、メシマズ疑惑ありのうちのママンが、コンビニおでんの出汁を再現するんだとか、シャキシャキの歯触りが残った大根をおいしいと信じてたりとか、まあいろいろありまして。

練り物の油や味が混ざった出汁よりそ、の前の状態の出汁のほうが好みっても大きい。


我が家でスジ肉といえばすじ大根。輪切りもしくは半月切りの大根と牛スジを醤油味で煮るだけ。

量は割と適当で大丈夫。


スジ肉を水で柔らかくなるまでよく煮て、途中大根を入れて醤油で味をつけて味がよく染み込むまで煮れば完成。


え、出汁?なんか不安な人は昆布でも1枚放り込んでおけばいいんじゃないかな。


味加減は適当でも平気。あとで調節できるし。


コツは、しっかり煮ること。一日目はスジ肉が歯が立たなかったりもする。圧力鍋を使うと時間短縮できるでしょう。


二日目からが勝負。大根を継ぎ足し肉を継ぎ足し、お好みで里いも卵はんぺんてんぷらなど、おでん風にしてもよし。


おいしい食べ方:

大根おろしと青ネギをのせ、醤油をかけて食べる。これがジャスティス。

生の大根と煮た大根、生の醤油と煮た醤油のハーモニーが絶妙なのです。




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