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戦いはすでに始まっている

一日に二千字とか欠かさず書いてればもっと早く更新できる。わかってる、わかってるんです。


地球に家族とか未練とかを残していてはすんなり異世界に順応できないだろうと、家族の縁が薄かったり天涯孤独な主人公に、いつも申し訳ないような気持ちになるこむるです。

 その日、仕事帰りのサキは商店街をぶらぶらしていた。


 服を買い足し、雑貨屋で髪飾りやリボンを眺める。

 アルスからもらったペンダントに似た色の石がついたヘアピンを見つけ、つい購入してしまった。

 袋に入れてもらわずにその場で前髪を留め、上機嫌で店を出る――と、隣の薬屋から出てきたらしい人と出会い頭にぶつかりそうになった。


「あっ、ごめんなさい――」


 よろけかかった身体をとっさに支えてくれた手が、そのままひょいとサキを持ち上げる。見ると、よく知っている顔があった。


「あれ、アルス」


「買い物か?サキ。そういえばそんなこと言ってたもんな」


 片腕に座らせるようにサキを抱き直して、アルスは笑いかける。


「うん、そうなの。あ、でもここで買ったのは服じゃなくてこれなんだけどね」


 おでこのあたりを指差して、ヘアピンを見せた。


「ね、似合う?」


「おー似合ってる、似合ってる。ペンダントとおんなじ色なんだな」


 目ざとく指摘されて、気恥ずかしげにうなずく。


「もともとこの色嫌いじゃないし、かわいかったから」


「おそろいで買おうと思うくらい、ペンダントを大事にしてくれていてうれしいよ。今日のクリーム色のワンピースにもよく合ってる」


「別にそういうのじゃなくて……」


 いろいろと見透かされているようでなんだか悔しい。しかも、そういうことをなんの照れもなくさらっと言ってしまえるのが恐ろしい――わずかに赤くなってうつむくサキを、アルスはよしよしとなでた。


 ひと通りなでられてから、気をとり直してアルスと向き合う。


「アルスはこれから出発?お友だちの付き添いなのよね」


「ああ、薬の補充がすんだらな」


「けっこう遠くまで行くんでしょう? 泊りがけ?」


 ワイバーンがいる場所までは、さすがに王都からは距離があるはずだった。


「いや、馬を使うし帰りは“跳んで”戻る予定だから今日中に帰れるはずだよ。ただ、夕食に間に合うかは――」


「お待たせ、アルス!」


 薬屋から勢いよく出てきた藍色の髪のきれいなお姉さんが、アルスの腕に飛びつこうとしてサキの存在に気付き、一歩手前で立ち止まる。


「あら、その子は――」


(わーお、素晴らしい技術をお持ちで)


  すっぴんでも十分美人であることが推察できるお顔立ちに、ナチュラルに見えるように丁寧に化粧が施されている。つり目ぎみなのを、たれ目風のアイラインを入れることで柔らかい印象に見せているそのテクニックは、向こうではあまり化粧の得意ではなかったサキからしてみれば、見事としか言いようがない。

 しかも、ナイスバディを包む革の部分鎧からのぞく服には、さりげなく花のモチーフの刺繍が施されていたりして、全体に女子力の高さがうかがえる。


「ちょうどそこで会ったから話してたんだ。サキ、彼女が今日一緒に依頼に行くクレア」


「こんにちは、サキです」


 サキを地面に下ろしながら、アルスはきれいなお姉さん――クレアを紹介し、サキはぺこりとおじぎした。


「――ふふっ、こんにちは。サキちゃんっていうの? たしかイノシシ型のときの子よね、あのときは大変だったわね。わたしはクレアよ。アルスとは駆け出しの頃からよく組んでたの」


 サキの観察を終えたらしいクレアはふっと笑い、にこやかに話しかけてきた。


 どうも、クレアの中でサキは格下認定されたらしい気配を感じる。


「さ、早く行きましょ。さっさと終わらせて昇格祝いに飲み明かすんだから」


 さりげなく腕を絡ませ上目遣いで出発を促すと、アルスもそうだなとサキに向き直った。


「じゃあ行ってくる。なんだかこいつに付き合わされそうな気配だから、帰りは待たずに食べといてくれ」


 ぽふぽふと頭をなでる手をとり、きゅっと握りながらサキはアルスを見上げた。


「気をつけてね。どれだけ遅くなってもいいから、ちゃんと顔を見せてね。何も言わずに帰っちゃだめよ」


「そうは言ってもあんまり遅くなったら……」


「心配なの。あと、お肉屋さんでいいすじ肉を買ったから、食べないにしてもシチュー持って帰ってもらいたいし――」


「できるだけ早く帰ってくる」


 これ以上ないくらい真剣な表情でアルスが宣言した。





 微妙にひきつった顔のクレアに引っ張られるように城門に向かうアルスを手を振って見送り、サキはもと来た道を歩き始める。


(ちょっとやり過ぎちゃったかしら……)


 クレアには、取るに足らない存在だと思われておいたほうがよかったのかもしれない。しかし、格下扱いされたままというのもなんとなく面白くないというのが本音だ。


 まあやってしまったものはしょうがない、臨機応変に対応しようと息をひとつ吐き出し、シチュー用のすじ肉を買うべく、肉屋に向かうのだった。








肉じゃがメモ


我が家の肉じゃがは牛肉派。あと、じゃがいもと肉以外に具は入れない。


食べやすい大きさに切ったじゃがいもをひたひたの水で茹でて、砂糖としょうゆで味をつけて牛肉を入れ、少し煮たら出来上りです。


あれ、だしは?みりんは?ていうか玉ねぎは、にんじんは??

はい、一切入りません。おいしいですよ、興味のある方は試してみてください。

水加減は割りと適当でも大丈夫です。甘さはすき焼きの割り下かそれより少し控えめくらい。


もちろん豚肉でもおいしいし、玉ねぎやにんじんを入れてもよい。

その場合も、だしは入れずに、味つけも砂糖としょうゆ以外はいれないのがこむるは好きです。


味をつけたあと汁を煮詰めてよく染み込ませた肉じゃがが冷たくなったのおいしいよね。

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