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過保護がもう一人

友人となろう小説について話していて、


つまり「貴様との婚約を今ここを持って破棄する!(ドヤァ)」と作品冒頭に書いてあったら、あ、これは悪役令嬢ざまぁもので、ヒロインちゃんは逆ハービッチ、もしかしたら転生乙女ゲームもの、婚約者はだいたいは第二王子で取り巻きは宰相、騎士団長、魔術師長、神官長などなどの息子、ついでにヒロインちゃんの幼馴染で、「あなたはあなたなんです」「無理して笑わないでください」「わたしはあなたががんばってることを知っています」などと攻略対象たちの心の闇(笑)を晴らして主人公のヒロインいじめを捏造した上で今に至るのね。と瞬時に判断しなければならない、まさに和歌の本歌取りか何かか、と言わんばかりの高い教養(なろう系)が必要なんだよ!


ナ、ナンダッテー!



なんてやり取りを経て、しかしいまのなろう文化は我々日本人がすでに千年前に通った道なのではなかろうか?という結論に至った。


ほら、大量の後追い二番煎じがわいて出たとかいう源氏物語とか(ついでにマザコンNTRロリコンヤンデレなどなど各種性的嗜好も取りそろえていましてよ)、

いま流行りの日記を書いてみた土佐日記とか(しかもネカマ!)、

男の娘と僕っ子のはしりなとりかえばやとか!

 魔法屋敷に戻ると、焼き菓子の入ったかごを持ったナタンがいた。


「あれ、ナタン。来てたの」


「はい。城で焼いたお菓子を姫にと思って、陛下を迎えがてらに」


「こんなに沢山? ありがとう」


 サキが笑ってお礼を言うと、ナタンもうれしそうににっこりした。


「今日友達のみんなと食べてもいい?」


「もちろん。――姫は今日も草原へ?」


 昨日のことをアルスから聞いたのだろう、心配そうに尋ねてくる。


「ううん、草原には、子供はしばらく行っちゃだめなんですって。今日はそこの果樹園でみんなでお手伝い」


 草原まで出てくる魔物はもういないと思うが、念のため安全が確認できるまでは子どもは立ち入り禁止になった。それを知ったマーサとウィルが、果樹園の手伝いに来るようにと言ってくれたのだ。収穫したスモモとちょっとしたお駄賃くらいしか渡せないけど、と。


 おそらく、そのことを子どもたちの家に伝えにいく途中か帰りにマーサはアルスと会ったのだろう。


「そうですか、それがよいです。またなにかあっても大変ですからね。いくら姫の魔法が素晴らしくても、姫は戦い慣れておられないのですから」


 サキはうなずく。しかし、あとに続いた城壁から外に出るときはアルスを付き添わせるか自分を呼ぶようにとの発言には、思わず苦笑してしまった。


「お仕事もあるのに、そんなことをさせちゃったら悪いわ」


「ですが――」


「サキ」


 名前を呼ばれて振り向くとアルスが苦笑まじりに首を横に振った。


「諦めろ、ああなったらきかないんだ。草原には、俺が一緒に行くから」


「でもアルス、お仕事だってあるし、お休みの日はギルドの依頼を受けてるでしょう? わたしは、どうしても草原に行きたいわけじゃないから……」


「どうしてもじゃなくても、あそこに行って友だちに会うのは好きなんだろう?」


 サキはうなずく。みんなとおしゃべりしたり童心に返って遊んだりするのは楽しいし(あくまでも童心に返って、なのだ!)、小さいきょうだいの子の面倒を見て、心置きなく薬草取りをさせてあげたいとも思う。


「簡単な書類仕事なら外でもできるし、どうせ冒険者は暇つぶしに始めたんだから、他にやることができたならそっちを優先させるだけだ」


「そうですよ、存分に陛下を使ってやってください。わたしも陛下の分のお仕事を多目に手伝いますから」


「いやいや、王さまをこんなくだらないことで存分に使っちゃだめでしょう」


「姫の安全以上に優先されるものはありません」


(うわー、言い切っちゃったよ……)


「ほんとにいいの?」


 おそるおそる、再度アルスに確認する。


「おう、遠慮するな。用事ができたときは連絡するから。今日ぐらいの時間に工房に迎えに行けばいいか?」


「うん、それで大丈夫……」


 たかだか草原に行くくらいで大げさな、という思いはどうしたって付きまとうが、本人たちが納得しているなら、まあ、いいのだろうか――?








「サキちゃん、あれやって、あれ!」


「うん、いいよ」


 果樹園のスモモが植わっている区画で、子どもたちの歓声が響く。


 ひとつしか用意されていない脚立で、誰が高いところになっているスモモを取るかの争いは、「仲良く順番におやり!」というマーサの一喝で無事解決し、年長の子たちがスモモを取る係と下で受け取る係とを交代しながら、待っている間は手の届くところの実を取っている。


 脚立に登るにはまだ危なっかしい小さい子たちは、手が届くところを早々に取り尽くしてしまい、自分も登らせろと騒ぎだした。

 そこでサキが魔法で小さい子を浮かせるようにして抱き上げ、それから自分も空に浮かんでスモモの木の上の方まで連れて行ってやることにしたのだ。


「すごいすごい! 空を飛んでる!」


「かごにいっぱいになったら交代だよ」


「はーい」


 五歳になったばかりの女の子は元気に返事をした。帰り道用の木苺入れが思わぬところで役に立った。


「サキちゃん、次ぼくね!」


「その次わたし!」


「みんなちゃんとやってあげるから順番ねー」


 下に呼び掛けながら、それにしてもアルスもナタンも過保護だなあと思う。

 いくら魔力の高い者が尊重されているからって、やりすぎではないのだろうか? ならサキが草原に行かなければいいだけではとも考えたが、それはそれで二人が気にしそうだし――


(もらったスモモは明日はシャーベットにして、今度お弁当にそのままでデザートに入れよう)


 とかなんとか心配してみせたそのすぐ後で、次にアルスと食べるお弁当は何を入れようなどと浮かれているのだった。



スモモメモ


こむるは、毎年スモモをシロップにして楽しんでいます。梅シロップよりもくせがなくて子供でも抵抗のない仕上がりになります。



スモモシロップ


材料:

・スモモ1キロ

・氷砂糖800グラム~1キロ

・ホワイトリカー200cc


作り方:

・スモモを洗ってふきんで水気をしっかりふく。へたがついていたらとりのぞく。

・ホワイトリカー(分量外)を回しかけて消毒したビンなどの容れ物にスモモと氷砂糖を交互に重ねて入れる。加工用のかたい品種の場合は、何ヵ所か切り込みを入れるとよいでしょう(キンカンを炊くときの要領で)。

・ホワイトリカーを入れてふたをし、冷暗所に置く。毎日ビンをゆすってスモモを濡れた状態に保つ。

・1週間~2週間くらいして氷砂糖がとけたらできあがり。

・引き上げたシロップを一度沸騰させることで、アルコールをとばしたり溶け残りの砂糖を溶かしたり殺菌したりする。


おすすめの飲み方

・水、炭酸水で5倍に割って飲む。まあ、カルピスの要領だよね。

・紅茶に入れる。アイスティがよいでしょう。銘柄によっては、酸味が強調されてしまうこともあるので、自分好みの茶葉をいろいろ試してみましょう。

・透明なグラスにオレンジジュース3、水1を入れてシロップ1を静かに注ぐ。サンライズ風。

・かき氷のシロップにする。

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