隣には魔王さま
つまり、嫌われ転生からの愛されは、転生はしてないけど『秘密の花園』がすでに通った道なんだよ!
な、なんだってー
さらに、異世界に行った俺知識チートでSUGEEEは、異世界じゃないけど『神秘の島』でry
サキたち三人は、心置きなく非常にデリケートな――下手すると宗教裁判に発展しかねない――話をするべく、サキの家の応接間でテーブルを囲んでいた。
「ええと、つまりアルスとナタンって世間では魔族って呼ばれてる人たちに分類されちゃう感じのあれなの……? で、ということは当然わたしも――」
いちおうぼかしてみようとしてみた結果さっぱり婉曲的な表現にならなかった問いに、アルスはうなずく。
「当然、そういうことになるな」
「我々は、別に自分のことを何か特別な呼び方はしないのですがね、“外”の方々はなぜか区別をしたがるのですよ」
お茶の用意をしようとしたら、自分がやりますとナタンにポットを奪われた。しょうがないからパイやタルトなど、以前作って中途半端に余ったお菓子をありったけ並べる。アルスの目はプリンに釘付けになっていた。ちょっとかわいい。
「――まあ、いずれ折りを見て話そうとは思ってたから、ちょうどいい機会ではあるんだが――そうだな、まずサキはどれくらい知ってる? あといつどうやって知った?」
その問いの言外に含まれたものを察し、サキはどうやって答えたものかと少し考える。
「そうねえ、わたしは、こっちに来るときは何も聞かされていなかったの。でも、教えてもらった一般常識では、魔族は魔王の下で魔物を操って世界征服をたくらんでるらしいし、かといってそのわりに直接魔族の被害にあったって話をまったく聞かないし。なんか変だなあって思ってたの」
「姫は聡明でいらっしゃるのですねぇ」
紅茶を注ぎながらナタンが感心したように言う。
「たまたま考えるきっかけがあったってだけよ」
たぶん、神さまが魔族の存在に触れなかったことに気づかなかったら、疑問にも思わなかっただろう。
「あとは、わたし魔道具の工房で魔石を作るお仕事をしてるから、魔石について少し勉強しようと思って本を読んでたら……」
「ああ、魔石事件」
「うん、魔族での実験で味をしめて人間にまで手を出したってことになってるけど、なんだかその辺が曖昧な本も多いし、古い時代の本ほど魔族の記述はなくなっていくし――大体魔石事件の頃が境界線なのよね」
「なるほどなあ……」
「ただ、どれくらい魔力を持ってたら魔族って呼ばれるのかはわからなかったから、自分やアルスのことは、ちょっと人より魔力があるなあくらいに思ってたの」
今になって思えば、神さまから力をもらった時点で“ちょっと多い”ではすまないだろうことくらいすぐわかるはずなのに。
アルスもナタンも、そんなのんきなサキに呆れたように笑っている。
「サキの考える通り、魔族は魔石事件をきっかけに作られた」
魔力の高い者同士を掛け合わせ、より魔力を持つ者を生み出そうという、まるでペットのブリーダーかサラブレッドかはたまた農作物の品種改良かといわんばかりの実験は、それなりに成功した。あとは魔石を体内で作る方法を見つけよう――真珠の養殖みたいねとサキは思った――というところで研究所の存在が明るみに出てしまう。
実はこの研究所、城や神殿の上層部が極秘裏に関わっており、万が一このような非人道的な実験を国が主導したと知られたときの保険として、魔族という存在が考え出されたという。
「実験に使われたのは大半が“魔族”で、被害にあった“人間”は極一部だったとすることで、誘拐に怯える民衆のショックを和らげる目的もあったらしいな」
「ふーん」
“はるか昔から人の支配を企んでいた魔族”は、少しずつ“事実”として知られていき、その結果、魔石事件の被害者だけでなくたまたま高い魔力を持って生まれついた者まで魔族扱いされ迫害を受けた。当時、魔女狩りのようなものまでおこなわれたらしい。
その迫害から逃れた人たちが身を寄せ集まってできたのが、この大陸の東の端、広大な魔の森を越えた先に位置する魔法大国ベルーカである。その国の成り立ちからして、国民はみな高い魔力を持っている。当然長命でもあり、“外”の国では、その国一番と言われる魔法使いでせいぜい二百歳といったところだが、ベルーカの民は最低でも三百年は生きるという。
建国以来ずっと鎖国状態ではあるが、ベルーカの国民自体はアルスやナタンのようにわりと自由に外と行き来しているし、その際精霊の子を見つけることがあれば、本人の希望次第で国に保護したりもする。
国を治めるのは建国に携わったとされる最古の七家から、最も高い魔力を持つ者を選び、あるいは七家にふさわしいものがいなければ魔力の高い者を養子に迎え――
「あれ? あれ――ちょっと待ってアルス」
確かナタンは、アルスは歴代最高の魔力を持っているとかなんとか言っていたはずだ。
ぱちくりと目を瞬かせる。
「アルス、お城に勤めてるって……で、国で一番の魔法使い? あれ? それって王さまってことに……」
「不本意極まりないことにな」
ため息まじりにアルスはうなずき、ナタンを指差す。
「ちなみにこいつは宰相をやってる。家は違うが俺と同じく七家の出身だ」
「へー……」
世間一般に魔族と呼ばれる人たちの王さまって、つまり魔王さまってやつではなかったろうか。世界征服に余念がないと評判の。そのうち勇者だの聖女だのが召喚されて人類の命運をかけて戦いをはじめそうな感じの。
(魔王様、なにこんなとこで冒険者やってお弁当なんか食べてるわけ?)
その魔王様は、今まさに三個目のプリンにスプーンを差し込もうとしている。
「いくら政務に余裕があって特に問題が起こっていないからといって、城をほっぽり出して外で魔物退治だなんて、一国の王のすることではないと思うのですがね……」
「別にいいじゃないか、やってみたかったんだよ冒険者」
「まあ、そのおかげで姫を見出だすことができたのはたしかですが――」
お手柄でしたねとナタン。アルスは得意げに胸を張る。
「あ、姫。紅茶のおかわりはいかがですか」
「うん、いただこうかな。そうだ、アルス。プリンが気に入ったなら、残ったの全部持って帰っていいからね」
いつアルスが食べたがっても大丈夫なように、明日にでもプリンを大量に作っておこうとサキは考えていた。
たまにいらっしゃるんですよ、紅茶はダージリンのファーストフラッシュがとか紅茶そのものの味がどうとかでストレート以外邪道とか。
まあ、お茶にはまりはじめの頃に誰だって一度は通る道なのかもしれませんね。
こむるはダージリンやストレートのアールグレイを飲むとなんか頭痛がして苦手だし、甘いのもミルク入りもフレーバーつきも好きです。
要は、自分がおいしいと思うお茶をおいしいと思う飲み方で飲めばいいんですよ。
お茶は“こうあるべき”なんて堅苦しい飲み方しても楽しくないしね。
いままで一箱いくらの黄色いラベルな紅茶しか飲んでなくて、おいしい紅茶とかよくわかんない。
そんなときは、とりあえず100グラム千円からを目安にするとよいでしょう。
緑茶や中国茶などはできれば二千円出したいところです。
そこからいろいろ試して自分好みの味や香りのブランド、種類、フレーバーなどを見つけてみてください。
水出しメモ
最近ちょっとはやってるのかも水出しのお茶。緑茶なんかはそのままでも大丈夫だけど、紅茶なんかの場合、ちょっと気を付けないといけないかも。
たとえばセイロン系なんかの比較的抽出時間が短いタイプなら、普通に水に浸けて数時間から一晩で問題ないわけですが、ざっくり大きめで葉が硬めのタイプは、最初に少量の熱湯で蒸らしてからポットに水を入れないと、いつまでたっても色が薄い、味がない、になりかねません。
ほうじ茶を水出しするときも最初にお湯を少し入れたほうがいいかもしれません。
何年か前、初めて氷出し緑茶がTVCMでお目見えしたとき、うちのママンがおいしそう!やってみたい!と言って冷凍庫の製氷機で作った氷でやってしまったんですよ。
冷凍庫くさいお茶ができましたね。
皆さん、氷出しするときはちゃんといい氷を使いましょう。