社会見学in冒険者ギルド
毎日同じような献立の離乳食で申し訳ないなあ、もっとバリエーションを増やさないとなあと思っていたら、案外頑張っていたほうかもしれないと定期検診で判明したでござる。
よかったよかった。おされなカリスマ主婦の子育てブログに載ってるようなおされなプレートとかは無理だけど。
番外あれこれ
そういえばこのタイトルをつけていちゃもんつけるの久しぶりかも!
あ、でも今回は異世界じゃなくてVRMMOだね。
オンラインゲームでおなじみの掲示板、あれで妙に個人情報が軽く扱われてるのを見ると、ちょっとどうなのと思う。
キャラの情報やリアル割れにつながる発信が頻発したり、ストーカーかってくらいスクリーンショットが撮られてたり、まあほかにもいろいろ。
それだけ主人公が注目されてるってことなんだろうけど、こむるはなんかそれを許容する掲示板の空気が怖いっていうか気持ち悪いっていうか。
主人公SUGEEEは、もっと他の部分で出してほしいなあー……
冒険者ギルドを造り上げたソーマ・ユートであるが、その成功の裏には当時彼が拠点を置いていた国の第三王女の協力があったことを忘れてはならない。
彼女は、ギルドを超国家的な独立組織として各国の承認を得るにあたって、精力的に働きかけ、その見事な外交手腕で幾度も綱渡りの交渉を成功に導いたと伝えられている。
後に彼女はソーマ・ユートの――(ページが風に捲られる音)
冒険者ギルドはもともと魔物からの魔石の安定供給を目的として作られた組織であるが、今日では街の雑用から街道間の護衛、害獣退治などなど、手広く活動している。
ギルドの受け付け窓口は依頼を受ける、あるいは報告する冒険者が列を作り、併設された酒場では、勢い余って大物に返り討ちにあってしまったらしい新人ふたり組が九死に一生を得たと騒ぐ姿に、まわりのベテランたちは誰もが通る道だと懐かしんでいる。
また誰かがギルドにやってきた。何の気なしに入り口に目をやった者たちは、それが同じく冒険者仲間のアルスであることに興味をなくしまたそれぞれの作業に――戻ろうとしてものすごい勢いで首を動かしアルスを凝視した。
「すまない、この中にイアンとリックはいるだろうか」
「あ、ああ……あそこにいるのがそうだが……」
「わかった、ありがとう。――サキ、間違いないか?」
近くにいた男に尋ねたアルスは礼を述べると、指差された方に向き直り、抱き抱えていた女の子に何事か確認をとる。
女の子、そう、女の子なのだ。数年前ふらりとここ王都ヨランダのギルドに現れ、あっという間に最高ランクに登り詰めた冒険者、臨時で組むことはあっても基本的にソロで活動することで知られているアルス、女冒険者からギルドの受け付け嬢まで、彼を狙っている者は多いが誰にもなびかないと噂のアルスが、なぜか十歳にもならないような女の子を大事そうに抱えて、ギルドにいるのだ。
(おい、アルスと一緒にいる子いったい誰なんだよ)
(俺が知るかよ。つーかあれ犯罪じゃないのか? 顔か? 結局顔なのか?)
周りが固唾を飲んで見守るなか、アルスは件のふたりが座るテーブルに歩み寄り――
「あん? なんだよ、俺たちになんか……」
虚空からイノシシの魔物が降ってきた。
「きゃああぁ!」
「うわぁ!?」
あちこちから悲鳴があがる。目の前のテーブルに氷に全身を貫かれた魔物の死体を投げ出されたイアンとリックは、のけぞった拍子に椅子から転げ落ちてしまっている。
「な、なにすんだよいきなり!」
尻もちをついたままリックが怒鳴り付けた。イアンは衝撃から立ち直れず魔物を見つめている。
「何事ですか!? 揉め事は――」
「これはお前たちが命からがら逃れてきた魔物、そうだな」
騒ぎに駆け寄ってきたギルドの職員を片手を上げて制し、アルスはふたりに問いかけた。淡々と、無表情にきいてくる様子がなんだか恐ろしい。
ぎくりと顔を強張らせ、ふたりはアルスを見上げる。
「調子に乗って自分の実力もわきまえずに手を出したか、運が悪く鉢合わせたのかは知らないが、お前たちは追われた結果草原までこいつを連れ出してしまい、こともあろうにそのまま放置してきた、そうだな」
「そ、それは……」
ギルド職員はわずかに眉をしかめた。遠巻きにしていた冒険者たちからもざわめきがもれる。たしかに彼らの力量では逃げるしかなかったろうが、城門の衛兵なりギルドに報告すべきだった。対応が遅れて街に被害が出たら一大事である。
「しかも偶然とはいえ、この子を囮にする形で見捨てて行った」
ざわめきが大きくなる。よく見ると女の子の格好は土で汚れ、袖には血もついているようだった。
「最低」
「一般人を巻き込むなんて、なに考えてんのかしら。それもあんな小さい子を」
「連れて逃げるとか、せめて逃げるように言うとかあるでしょ」
周りの、特に女性のふたりを見る目つきが厳しくなる。
冷ややかな空気にふたりはたまらず抗議するように声をあげた。
「そんなこと言ったって、仕方ないだろう!」
「そうだよ! 逃げるので精一杯だったんだよ!それに、結局無事だったんだからそれでいいだ……ろ……」
その瞬間、アルスの周囲に吹雪が吹き荒れた――ような気がした。
「無事だったからそれでいい――?」
「ひっ!?」
ずさっと後ろ手に後ずさるふたり。その顔色は青を通り越して白くなっている。
「本当にそんなことを思ってるのか?」
「あ、いや……その」
「わたし、せっかく摘んだ木苺を踏まれたし、転んで怪我もした――」
それまでずっと黙ってアルスの腕に収まっていた女の子が口を開いた。
「お兄さんからぶつかってきたのにどけって言われただけ」
「わ、悪かったよ……」
「お守りのペンダントも、魔石が壊れちゃった……こっちに、来てから、初めて人からもらった、プレゼント、だったのに……」
女の子は泣き出してしまい、非難の視線がふたりに突き刺さる。イアンは「あ、」とか「う、」とかなんとか言葉を探そうと口をぱくぱくさせ、リックはうろうろと手と視線をさ迷わせている。
「そんなに泣くなよ、サキ」
ふたりに対峙していたときとはうって変わって優しげな様子で、アルスが女の子の頭をなでた。
「大事にしまい込んで肝心なときに役に立たないよりも、今日ちゃんとサキを守れたんだから俺はそっちの方がうれしいよ。魔石ならまたいくらでも作ってやるから」
どうやらそのペンダントは、アルスが送り主であるらしい。イノシシ型の魔物から身を守れるだけの魔石だなんて、なんて羨ましいと冒険者の男たちは思った。女たちは、別の意味でも羨ましいと思った。
「ぐすっ、……前とおんなじの?」
「ああ、どうせならもっといい魔石で作ろうか。使っても壊れないようなやつ」
「ほんと? 約束?」
女の子がそっと小指を差し出すと、懐かしいなあと笑いながらアルスも応じる。なにかしらまじないのようなものだろうか。
「約束だ」
この場にいた女性陣の心はひとつだった。
(そうか、アルスを落とすのに必要なのは大人の色香ではなくて庇護欲だったのか!)
ログアウトしたらいくらでも食べられるのに、ゲームの中でまで米を食べたい日本人……
異世界、VRゲームに限らず、小説に登場するお料理でたまにおやっと思うことありませんか。こむるはけっこうあります。
たとえばハンバーグ、カレーやから揚げなどのいわゆる定番のメニュー。ごく普通のタイプを家で食べていると思っていたのに、この作品に出てくるやつは材料がちがう、作り方もちがう。でも作中ではそれが“普通”の扱いである……
いったいどっちがより一般的な普通なのだろうか。もしかしたら周りも普通だと思ってるやつでも、地域性とかあったりするのかも、おでんとかお雑煮みたいに!
そんなことを考えた結果、こむるは、えっ?これが普通の作り方でしょ、みんなもこんな感じのを食べてるでしょ?ってどや顔で料理手順を作中に詳しく描写するのを(少なくとも自分は)やめておくことにしたのです。
でも、お料理がメインの小説を書くときはちゃんと作中でお料理させると思います。
なので、本作では後書でどや顔するのです。
誰か一人でもいいから、こむるのお料理メモが何かしら役に立ったって人がいたらこむるはとてもうれしいです。