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お弁当を、あなたと

本日お弁当最終話と後書きの二話更新 1/2



当作品には、後日談、番外編、季節ネタSSなどは予定しておりません。ご了承ください。


あれよね、本編完結したけど後日談を連載中ですってならタイトルに(完結済み)とか入れてほしいよね。あらすじに書いてあったとしても、完結作品読みの人たちへのアピールが足らないと思うのよね。



2018/08/18 落書き倉庫に落書きを1枚追加。


まだ何枚か描きかけの落書きがあるので、今後落書き倉庫の更新があったら活動報告でお知らせしようと思います。

 王都は熱気に包まれていた。


 なにしろ、前人未到の偉業を成し遂げた勇者さまの帰還パレードである。


 人びとはその姿を一目見たいと早くから場所取りに精を出し、今日こそ稼ぎ時と広場にはところ狭しと屋台が立ち並んでいる。


「それでね、トゥッカさんのお友だちのドラゴンさんたちが、自分もお城に遊びに来たいって言ってるらしいの」


 にぎやかな街の中を、サキはアルスと手をつないで歩いていた。


 今日も前回のお披露目のときと同じく、工房を早くに閉めてみんなでパレードを見に行くらしく、サキも誘われたのだが遠慮させてもらったのだ。


「トゥッカの友だちって……あいつらか」


 心当たりがあるらしいアルスは、苦笑いを浮かべた。


「うちの城は動物園じゃないんだがなあ……」


 サキは、トゥッカヴァルト氏が檻の中にちんまりと座り、鋭い爪や魔法を器用に使ってスイカに彫刻を施している姿を想像した――最近のトゥッカヴァルト氏は、ニンジンの飾り切りに挑戦中である――けっこうな人気スポットになりそうだ。


 魔法屋敷に引っ越したばかりのころ、神さまにもらった料理本のチェックをしていたときにカービングと飾り切りの本があるのに首をかしげたものだが、なるほど、このためだったらしい。


「混んできたな」


 と、広場が近づいてきたあたりでアルスに抱き上げられた。


「なんか買ってくか?」


「おいしそうなお菓子とかあったらほしいかも」


「ああ、そうしようか」


 広場の外周に沿うように屋台を冷やかして鈴カステラのような焼き菓子を一袋買ってもらったとき、パレード見物に来ていたマーサと会った。


「おや、サキちゃんじゃないか」


「マーサおばさん」


 地面におろしてもらって駆け寄ると、頭をわしゃわしゃとなでられた。


「こんにちは、マーサさん」


 少し遅れて追いついたアルスに、マーサは呆れたような顔を向ける。


「あんた、魔の森越えの英雄がこんなところで何やってんだい。あんたはパレードを見る側じゃなくて見られる側だろうに」


「そう何度も見せ物にはなるのはごめんだな」


「ま、あんたらしいっちゃあらしいけどねえ」


 マーサは快活に笑って、いっしょに場所取りをするかいと訊ねた。


「ううん、今日はもう帰ってお庭でピクニックをするの」


「そりゃあいい。楽しんでおいで」


「ありがとう、今度はおばさんも招待するね」


 アルスが最高ランクの冒険者と知っても、勇者さまのパーティーに選ばれても彼らがその功績から“魔の森越えの英雄”と呼ばれるようになっても、「へえ、そりゃたいしたもんだ」ですませてしまうマーサのことが、サキは大好きだ。






 魔法屋敷に戻ると、月桂樹の下にティーポットとカップの入ったバスケットと敷布が用意してあった。


「城のやつらは?」


 日陰に布を広げながらアルスが訊ねる。


「ええと、()()()年に一度お城のみんな総出で絨毯にブラシをかける日らしいわ」


「そんな日があったのか、はじめて知ったな」


 サキ専属の侍女であるメイシーは、確かセニエのお屋敷にあるサキの部屋に衣替え――夏服から真夏の服に交換するとのことだが、それは意味があるのだろうか?――に行っているはずだ。


 よく冷やした緑茶の入った水筒と木のコップをふたつ、それからおしぼりを並べる。実際には魔法で水を出して手を洗うわけだが、その辺は気分の問題である。


「王さま、今日のお仕事は?」


 するとアルスは、「それがな」と深刻な顔で告げた。


「我が婚約者であるセニエの姫君のピクニックに付き合うという大任を仰せつかってるんだよ」


「まあ、それは責任重大ね」


 顔を見合わせてくすくす笑い合う。


 食後のデザートは帰りがけに買ったお菓子と庭に鈴なりになったベリーたち。日差しはそこまで強くもなく、心地よい風がハーブの香りを届けてくれる。まさに完璧なピクニック日和。


 サキは布の包みをふたつ取り出した。


「それじゃあとりあえず、お弁当でもいかが?」


 その左手には、少し茶色がかった黄緑色の指輪が輝いていて――




おしまい。






お弁当スピンオフ偽予告


彼女のことは、顔と名前は知っている、何度か言葉を交わしたり用事を頼んだりしたことがある程度だった。

しかしその距離感は、義妹――彼の親愛なる幼なじみにして敬愛する主からの大切な預かりものである――付きの侍女として彼女が選ばれたことで変化していき、気がつけば愛称で呼ぶことを彼女に許してしまっている。

「ねえナタン、わたし早くメイシーのことをお姉さんって呼びたいわ」

「いえ、ですが……」

「自分の主がまだ独身だからとか、そういうのどうでもいいから」

彼の最近の悩みは、おませな義妹にせっつかれることである。


『ナタン君とメイシーちゃん』近日公開



……しません。




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