おっさんの悲鳴などうれしくない
なんていうかこう、大喜利か!とまではいかないけど、これで検索に引っかける気ないでしょって感じのタグ、よく見かけますよね。
タグで作品に対する注意事項や、初投稿なので、豆腐メンタルなので感想は優しくね、みたいなお願い、タグがあらすじになってるみたいなのとか。
pixivやニコニコのタグ付け合戦の作者バージョンみたいなものかしら。
え、お前ひとのこと言えるのかですって? うん、まあ、その……すまん。
(おや?)
道の反対側に知った顔を見かけ、サキは首をかしげた。
よく――というほどではないがそれなりに知っている彼女は、なんだかとてもつまらなそうな様子でおそらく取り巻きであろう冒険者のお兄さんがたに囲まれて歩いていた。
彼女に信奉者の多いことはよく知っている――それはもううんざりするほどに――のだけれど、そうした人たちを実際に引き連れている姿というのははじめて見るかもしれない。
どこか沈んだ彼女、一見仲良さそうに、しかし張り合うように牽制し合うように彼女の隣めぐっての熾烈な争いを繰り広げている信者のお兄さんたち――このような状況になるに至った原因は想像がつく、というより確実に自分たちにあるわけなのだが、それでも思ってしまうのだ。
「なんだか、お姉さんらしくないわね……」
「どうした、サキ」
「ああ――えっと、向こうにね」
隣を歩くアルスに、空いている方の手で指し示す。
「クレアか。今日は大人数で依頼を受けるんだな、大物でも出たんだろうか――」
「たぶんそういうことではないと思うの」
サキはどこかずれているアルスに苦笑し、もう一度向かい側の集団に目をやる。すると、クレアとは別に見覚えのあるお兄さんたちを見つけた。
駆け出しから抜けたことに調子に乗ってイノシシの魔物に返り討ちにあった――ええと、名前は確かイアンとリック……だっただろうか……?
(あのお兄さんたちもクレア様教の信者だったの)
妙なところに感心していると、クレアがこちらに気づき、切なそうな顔でじっと見つめてきた。
(自分から、じゃなくて相手から声をかけてこいってやつ……?)
しかし、そのときには当のアルスはもう前を向いていて、通りがかった荷馬車が道の向こうとこちらを隔てている間にサキたちは角を曲がったので、結局“見かけただけ”で終わったのだった。
草原行きを再開してからのアルスは、勇者さまたちのお世話でいっしょにいられなかった分を取り戻そうとでもいうのか、どこに行くにもサキから離れようとしなくなった。
工房への送り迎え、草原への付き添いは当然として、ちょっとした買い物、お城での勉強や子どもたちとのお遊び、果てはおじいさんやエリーヌお母さんに会いにセニエのお屋敷に行くときまで(これはにっこり笑うナタンと書類の束によって阻まれた)。
こんなにべったりでお仕事は大丈夫だろうかとも思うのだが、サキが工房に行っている間はお城に戻り、お城で子どもたちといるそばに臨時の仕事場が作られ、夜はナタンだけでなくジェラード氏やシドニー氏も加わってサキの家で賑やかに騒いでいるおかげで、アルスが“冒険者ごっこ”で一日、泊まりがけのときは二日とお城を空けていたころよりもスムーズに回っている、らしい……。
「じゃあまた後で迎えに来るから」
「うん、行ってきます」
工房の前でベルーカに戻るアルスを手を振って見送り、なぜだか最近普段の三割増しでおしゃれになったバイトのお姉さんがた(なお、年齢は一切考慮せず)の間を縫うようにして工房の奥へ向かった。
先程のクレアについて、クレア様教魔道具工房支部のお姉さんたちにきいてみてもよかったのだけれど、まあそこまでして知りたいというわけでもなかったので声をかけたりはしなかった。
「あの冒険者の兄ちゃんが戻ってきてからってもの、女どもの浮かれようが凄まじいな」
扉越しにでも聞こえてくる、今日は顔を見ることができた、近くで声を聞けた、こっちを見てくれた、視線が合った、いやそれは自分に対してであるなどなどの大騒ぎに、職人のおじさんたちは苦笑いである。
「あ、そういえばおじさん」
「おう、どうした? 嬢ちゃん」
「これ、あげる」
仕事の準備をしていた職人のおじさんたちに、トゥッカヴァルト氏の鱗――生え変わり品のしかも屑鱗ではあるが――をひとつずつ手渡していく。
「お、サキ坊。こんな上等の魔石をどこで……魔石……魔石なのか……?」
「ちょっと待て、ま、まさか、これ――」
最初、しげしげと鱗を眺めて感心していたおじさんたちは、やがて困惑の声をあげ始めた。
なんだか、自分がアルスから指輪(トゥッカ印)をもらったときの反応に似ているなとサキは思う。
「えっとね、魔の森のお土産。おじさんたちドラゴンの鱗欲しいって言ってたでしょ、だから、いっぱいもらったからお裾分け」
いったい“誰から”のお土産なのか、あえてぼかしておくのがポイントである。
工房に、野太い悲鳴が響き渡った。
耳をふさいでいた手を離す――ついでに閉じてしまっていた目も開けると、青い顔をしたおじさんたちが、鱗を乗せた手をできるだけ自分の身体から遠くにやるようにのけ反って震えていた。
「さ、さささサキちゃん、こ、こんな大層なもの、そんな気軽にほいほい人にくれてやるもんじゃねえぞ」
「そ、そうだぞ。しかもこの色、透明度……、お城の宝物庫にだってあるかどうかの特級品――」
これでも、屑鱗の中からさらに割れや欠けのある最低品質のものを選りすぐったつもりなんだけど、とサキは首をかしげた。
「おじさんたち、一度でいいからドラゴンの鱗を加工してみたいって言ってたでしょ」
「ばか野郎、もったいなさすぎてそんなことできるわけねぇだろ!」
そうだそうだ、とおじさんたちはうなずく。
「うーん……そっか、わかった」
鱗を回収してくれるのかと思ったのか、ほっと息を吐いたおじさんたちの手のひらに、もう一枚ずつ鱗(屑品質)を乗せた。
「じゃあ、加工用と保存用にもう一枚あげるね」
更に大きな悲鳴があがる。
「ひぇっ、ど、どどどドラゴンの鱗がふふ増えた……!」
「お、おい、どうしろってんだよ、こんなもの!」
「どうしろって、煮るなり焼くなり好きに……」
「ぎゃあああっ、やめろ、やめてくれ!」
必死の形相でぶんぶんと首を振っていたおじさんのひとりが、唐突に何かに気づいたように「ああっ!」と叫んだ。
「サキ坊がちょっと前からしてる指輪! ただ上等なだけの魔石にしてはなんか変だと思ってたんだよ!」
「よく見りゃそいつもドラゴンの……! いや、しかしそのおっそろしく澄んだ深い色……」
ごくりと、おじさんたちの喉が鳴る。
「うん、これ昔アルスが手に入れた鱗で作ったんですって。たぶんだけど正真正銘の最高きゅ――」
三度サキは耳を押さえた。
阿鼻叫喚の騒ぎは、「うるさいよ、なに騒いでんだい!」とおかみさんが怒鳴り込んでくるまで続いたのだった。
クルトンとラスク
お店に食べに連れていってもらってなんかスープが出てきたとき、クルトンを最後までとっておこうか、いやしかしそうするとふやけてしまうから先に食べた方が……と悩んでいるうちに結局ふにゃふにゃのクルトン君を食べることになってしまった思い出。
家でパックのコーンポタージュスープをママンが買ってきたときに、クルトン入れたい!と主張したら、1センチのサイコロに切ってフライパンで表面を焼いた食パンがスープ皿に浮いてた。切ない。
ようするにクルトン君とラスクちゃんって、ざっくり言えば大きさとか食べ方の差くらいしかないのではないかと思った。
クルトン:
・食パン1枚(6枚切り程度)に対して油大さじ1程度
・オリーブ油、バター、サラダ油などお好みで
・塩はお好みでひとつまみ
・パセリ、乾燥ハーブ(バジル、オレガノ、タイムなど)などを入れる場合は小さじ1くらい
・にんにくのすりおろし(それかパウダーなど)はお好みで少々、香り付け程度に
・5ミリ~1センチ角に切ったパンと油、調味料などを混ぜ合わせる。
・180℃のオーブンで10分、それか150℃のオーブンで20分程度、様子を見ながら焦がさないように焼き上げる。
・または、弱火~中火のフライパンでじっくり焦がさないように炒める。
メモ:
・バターを使う場合はレンジ、湯煎などで溶かしておく。
・がっつりバターはいらないけど軽く風味をつけたい、くらいならオリーブ油やサラダ油の3分の1量をバターにするなどミックスも有り。
・クレイジーソルトなどを使うと楽かもしれない。
・スープなどにはプレーンなタイプ、サラダなどにはハーブやガーリックタイプなどがよろしいかと思われる。
・ボウルでざっざか混ぜてもいいけど、ポリ袋に材料を入れて振るのが楽。油が染み出してくるの不思議よね。
・一回で食べきれない分は密閉容器、袋に入れて早めに食べる、または冷凍する。
ラスク
・パンと油の分量はクルトンと同じ。
・バター、マーガリン、ショートニングなどお好みで
・砂糖は油大さじ1に対して15~20グラム程度(つまり、だいたい同量)。
・食べやすい大きさに切ったパンと油、砂糖を混ぜ合わせて天板に並べて150℃のオーブンで15
~20分ほど様子を見ながら焼く。
メモ:
・無塩バター、マーガリンなどでもいいけど、こむるは少し塩味があるほうが好みなので気にせず有塩を使う。
・砂糖はグラニュー糖がおすすめ
・“焼く”というよりは“乾燥させる”イメージで。
・最初にレンジや温度低めのオーブンであらかじめパンの水分を飛ばしておくとさらにgood。150℃くらいで10分くらいでいいんじゃないですかね。で、網とかに乗せて常温になるまで冷ます。
・フランスパンなんかをスライスしてオサレに作るときは、溶かしたり室温に戻したバターなどを塗ってから砂糖を振りかけるとよいでしょう。
・チョコレートを染み込ませるなどしたときは、110℃とか120℃の低温で焦がさないようにじっくり焼きましょう。
でもこむるさん、たいていパン屋さんでひと袋50円とかのパンの耳を使ってる。
ちなみに、揚げパンにして砂糖を振りかけるという手もあるのだけど、あれたしかにおいしいけど油がすごくて胸焼けしそうに……