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そのおにぎりはほんのり塩味で

「読書や実体験に基づいた意見、感想などを自由にまとめた散文」「ある主題に対する試論」がエッセイであるらしいのですが、なろうのエッセイって、なろうとかなろうテンプレに対する愚痴とかなろうで人気者になるためのハウツーで溢れかえっているこの現状。

まあ、たしかに意見、試論ではあるけど……エッセイ?



2018/07/03 いただきもののイラストを落書き倉庫に一枚追加。






「あ! アルスお兄ちゃん!」


「あーっ、ほんとだ!お兄ちゃんだ!」


 ヨランダの城門に、子どもたちの声が響き渡る。


「おかえりなさい!」


「兄ちゃん、勇者の姉ちゃんたちと魔物退治に行ったんだろ? もう終わったのか?」


「あれ、勇者のお姉ちゃんたちは?」


「ああ、ただいま。依頼はもう終わったから、俺だけ一足先に帰ってきたんだ」


「ほんと!? じゃあまた剣教えてくれるの?」


「魔法! 魔法も!?」


「そうだな、みんながどれくらい上達したか見せてもらおうか」


「なあ兄ちゃん! あとで“まのもり”の話聞かせてくれよ!」


「“まのもり”にはドラゴンが住んでるって、ほんと?」


 わらわらと駆け寄ってくる子どもたちに囲まれて、アルスはサキと繋いでいないほうの手でみんなの頭を順にぐりぐりなでる。


 子どもたちは、うれしそうにきゃあきゃあ笑った。


 ひととおり子どもたちをかまってやったあと、輪を抜けて呆然とこちらを見ている馴染みの衛兵たちの元へと向かう。


「久しぶり、元気そうだな」


「お、おいアルス――お前なんでここに……?」


「まだ勇者様たちが帰還なすったって話は聞かないぞ……」


 ここに来る前に寄った冒険者ギルドの職員たちとそっくり同じ反応、表情につい笑ってしまう。


「俺の出番はもう終わったからな」


「じゃ、じゃあ魔の森の魔物たちは……」


()()()()()()()()からな、しばらくはおとなしいんじゃないか?」


 おお、とジョンら衛兵や周りで聞き耳を立てていた駆け出しの冒険者たちからどよめきが起こる。


「それで、肝心の勇者様がたは?」


「連中はまだ()()()()()に滞在中だ」


 まあ、嘘は言っていない。


「俺は()()とか面倒だから、一足先に戻って依頼完了の手続きをしてきた」


「面倒ってお前、誰もが羨むお城暮らしを……パレードがあってご褒美もらってでっかい夜会が……もったいない」


「俺はそんなものより()()()のほうがいいし」


「はは……」


 ぐるりと子どもたちを見て、それからサキに目をやると、呆れたようにジョンは笑った。


「アルスお兄ちゃんが帰ってきてよかったね、サキちゃん!」


 アルスがジョンたちと話している間ずっと静かにしていたサキのところに、女の子たちがやってくる。


「――あれ? サキちゃんなんか怒ってる?」


 一番仲良しのミナが、サキの様子がいつもとは微妙に違っているのに目ざとく気づいて首をかしげた。


「ううん、別に怒ってないよ」


 サキはにっこり笑い、アルスの背中に冷たい汗が流れる。


「ええー、絶対怒ってるって!」


「サキちゃん何があったの? アルスお兄ちゃんからお土産もらえなかったとか?」


「あ、わかった! アルスお兄ちゃん、あの勇者のお姉ちゃんと浮気したんだ!」


 ぶはっと、ジョンたちの吹き出す音がした。


「うそ、最低!」


「お兄ちゃんひどい、サキちゃんずっとアルスお兄ちゃんのこと待ってたのに!」


 そうよそうよと声をあげる女の子たちに、苦笑いを浮かべてアルスは弁明する。


「いやいや、誓ってそんなことはないから」


「えー、でも……」


「うーん、たしかにアルスお兄ちゃんはサキちゃんひとすじだもんね……」


 まだ彼女たちは若干疑わしげな顔をしていたが、


「別に浮気とかじゃないから大丈夫だよ、みんな」


 という苦笑まじりのサキに、“とりあえず無罪”という判決が下されたようだった。


「んーと、じゃあ勇者のお姉ちゃんに“いいよられた”とか、そういうやつ?」


「あ、それありそう!」


「そういえば、なんかあのお姉ちゃんアルスお兄ちゃんのことねらってるっぽい感じしたもんね!」


「え、じゃああの三人のお兄ちゃんたちは? 誰もお姉ちゃんを“ものにできなかった”ってこと?」


「あんなにお姉ちゃんのこと好きなのわかりやすかったのに?」


「ちょっとやそっとのことじゃ嫌われないってわかってるから、あのお兄ちゃんたちは“ほんめい”がだめだったときの予備にしてたんだって、きっと」


 うわぁ、と女の子たちは身を震わせた。


「ああいう“じゅんすいむく”なふりして実は“はらぐろい”女がいちばん手に追えないんだって、前に近所のおばさんたちが話してたよ」


「お姉ちゃんはらぐろーい」


 口に手を当て、くすくす笑い合っている。


「楽しそうだな、お前たち……」


「わりと間違ってないのがすごいわね……」


 呆れるアルスの隣でサキがぽつりとつぶやき、ジョンは


「近頃のガキどものことはさっぱり理解できん」


 と力なく首を振った。









 夕べ、サキの家から戻ったところに出くわした勇者から「月が綺麗ですね(比喩表現)」と言われてしまったアルスは、()()のようなことになるよりはと、今朝サキを迎えに行ったその場でいさぎよく昨晩の出来事を懺悔した。


「――自分に少しでも可能性はないかと言われて、だめならせめて名前で呼んでほしいと。で、アルスはなんて返したの?」


 平坦な声がかえって恐ろしい。


「ええと、その……」


 アルスは勇者とのやりとりを詳細に説明した。なにしろ向こう一週間、下手したら十日のお茶とお菓子がかかっているため、それはもう必死である。


「つまり、下手に希望を持たせないように具体的なことは言わずにどうにかこうにか切り抜けた、と……」


「まあそういう感じで……」


 勇者は非常にポジティブな思考の持ち主であり、加えて、人の善性というものを心の底から信じているようでもあった。


 これらの性質が昨晩のような場においてどのように作用するかというと……正直に言って最悪で、言質を取られるような言動は徹底的に避け、その上で相手を諦めさせるという、トゥッカバルドをはじめとする森のドラゴンたちを相手にするほうがよっぽど楽に思える戦いだった。


「とにかく、きっちりお断りしてきたから、もうこれ以上ないとは思う」


「ふうん……」


 とにかくやましいことは一切ないと理解していただき、それぞれギルドと工房に別れて数時間、再び合流して城門に向かい今に至る――わけなのだが……。





「なあ、サキ……」


「なあに?」


 アルスが目をやっているのは、膝の上に乗った大きな葉っぱの包み――ほどくと、まばゆいばかりに白い三角のおにぎりがみっつほど顔を出した。


「あの、今日の弁当は……」


「うん、お弁当がどうしたの?」


 ()の入ったコップを手渡される。


「あ、いえ……なんでもないです」


 さすがに塩味はついていた。





「別にね、勇者のお姉さんがアルスのことを好きになるのがだめだって言ってるわけじゃないの――とってもいやだけど」


 自らもおにぎりを食べながら、サキは不機嫌そうに足をぶらぶらさせている。


「どうせあれでしょ、アルスは人がいいしお城のお客さんだからってお姉さんの話に付き合ってあげて、なんかよくわからない流れで告白なんてされちゃったんでしょう? しょうがないってわかってるけど、ものすっごくおもしろくはないけど」


「反省しています……」


 むすっとほっぺたを膨らませている姿がかわいいなどと、不謹慎にも考えてしまい、緩んだ頬を軽くつねられてしまった。


「なに笑ってるのよ、もう」


「いや、好きだなあって」


「ちょ――」


 目をどんぐりのように丸くしておにぎりを取り落としそうになったサキを膝の上に乗せ、抱き締める。


「夕べ、勇者に何も具体的なことは答えなかったって言ったけどさ」


 顎の下で、無言でもぐもぐと口を動かす気配。


「それは、言質を取られたくないってだけじゃなくて、なんて言うんだろう、サキ以外のことを心の中に置くスペースをほんの少しでも取りたくなかったからなんだ」


 あのとき勇者が求めていたようなお決まりの台詞――気持ちはうれしいとかそういった類いの――を言ってしまうと、彼女の気持ちを受け取ったという()()がアルスの中で残り続けてしまうような気がしたのだ。


 アルスの心はサキでいっぱいで、勇者のことでいちいち心を揺らしている余裕などないのである――もっとも今現在、数ヶ月ぶりの草原での弁当を奪われたことへの恨みが募りつつあるのだが。


「だから、うっかり告白されはしたけど、それでサキへの愛が一瞬でも揺らぐことはなかったって断言で――――」


 断言できる、と言おうとしたとき、鶏の唐揚げがひとつ口に押し込まれた。


 しっかり味わって飲み込んで、耳を赤くしてうつむいているサキににやりと笑いかける。


「サキってさ、照れると食べ物でごまかす癖があ――――むぐ……」


 追加でもう一個。


「――あ、そういえばもうすぐあいつらこっちに戻るんだけどさ、距離と人数の関係で俺が担当することになりそうなんだよ。だから、その日はもしかしたら草原には――」


「それはだめ」


「うわっ、急にどうしたんだ、サキ」


 いったい何がだめなのか、突然顔を上げるサキの額と自分の顎が衝突しそうになり、慌ててのけぞる。


「勇者さまたちがヨランダに帰るなら()()を使って」


「いや、そうは言っても」


 たしかにそのほうが楽ではあるが、いろいろと思うところのある相手に自分のとこの庭を通らせるのは嫌ではないのかと問うと、


「勇者のお姉さんたちのためにアルスの魔力を使わせるほうがもっといやだもの」


 と口を尖らせる。


 それは“勇者のお姉さんたち”ではなくて“勇者のお姉さん”にではないのかとか、その口にキスしたいとかそんなもろもろを飲み込んで、アルスは大げさに一礼する真似をした。


「仰せのままに、お姫さま」


冷やし中華はじめました



たれとか作るのめんどうだから市販品だけど。

基本ごまだれ派。


入れる具はオーソドックスに錦糸卵、きゅうり、トマト、あとなんか肉。


ハムよりも、茹でた(蒸した)鶏むね肉やささみをほぐしたもの、冷凍ストックしてあるサラダチキン(塩こしょう味)をほぐしたもの、ひき肉を甘辛く炒めたものなどを使うことが多い。



ひき肉のピリ辛風

材料:

・合い挽き肉または豚のひき肉 適当

・白ネギ 肉100グラムに対して4分の1本とか3分の1本とか。

・中華スープのもと 肉100グラムに対して小さじ1くらい

・甜麺醤 肉100グラムに対して小さじ1くらい

・豆板醤 お好みで


作り方:

・ひき肉、ネギを炒めて調味料を加えそぼろ状にする。


メモ:

・多分おわかりのとおり、麻婆豆腐の豆腐、とろみなしバージョンである。

・味加減はお好みで調節しよう。

・味噌と砂糖、塩こしょうと豆板醤で作るのも可。



きゅうり

・斜めにスライスしたのを千切りに……わざわざ言うまでのことでもないとは思うけど。



錦糸卵


・薄焼き卵を破れにくくするコツは卵液に片栗粉少々を混ぜること――だけど、けっこうだまになりやすいのであとから片栗粉を降り入れるのではなく、最初にボウルに片栗粉を入れておいてから卵を割り入れる、少量の水で片栗粉を溶くなどするとよいかもしれない。


・味付けはなしでも、砂糖(卵1に対して小さじ1程度)と塩ひとつまみで甘くしても。


・焦げ付きやすくなったフライパンは油多め、テフロンがまだ生きているフライパンは油少なめ。


・よく熱して油をひいたフライパンに卵液を流し入れ、フライパンに張り付いた分以外の卵液を素早くボウルに戻し、表面が乾いたら菜箸などで周囲を軽くはがして、フライパンを逆さにしてまな板に平らになるように落とす。


・どんどん焼いて重ねていく。


・お好みの幅に切り揃えた薄焼き卵を千切りにする。巻き寿司みたいにくるっと丸めて切ると切りやすい。



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