元気の出るお薬
人気作品が、これまで毎日更新してたのに急に滞る、なんか忙しくなりそうで……とか言いはじめる。
あ、これ書籍化する流れだ。ってなりますよね。
わりと攻めてる“ハンドルネーム”って感じだった名前を、名字付きのわりと常識的な“ペンネーム”に改名したりなんかするともう決定的だなぁって。
まああれです、なろうで成り上がってゆくゆくは書籍作家に! なんて野望を抱いているような方は、いざというときに慌てないですむようなユーザー名をつけましょうってことです。
さくさくと、軽い足音が近づいてくる。
「こんなところにいたのか」
奥まった庭の一角、そこに隠れるように据えられている小さなあずま屋に小さく丸くなっていたサキは、手の甲で涙を拭って顔を上げた。
「アルス――」
何か甘い匂いがする。それは、アルスが持っているかごから漂っているようだった。
「サキのところに行くのならお菓子を持って行けって押し付けられた。王さま使いの荒いやつらだと思わないか?」
そう笑ってアルスはかごをベンチの端に置き、サキを抱き上げた。
つられてサキも、ほんの少しではあるがくすりと笑う。
「お話し合いはもう終わったの?」
「ああ、とりあえずはな」
「そっか……」
そのままアルスは腰を下ろし、サキを自分の膝に座らせた。ぎりぎりふたり掛けのベンチを置くのが精一杯のあずま屋は、これでもう満員状態である。
「ごめんね、アルス」
ぱたんとアルスにもたれかかると、そうするのが当たり前というような自然さで頭をなでられた。
「わたし、自分ではもう少し冷静に話せると思ってたの……」
「まあ、あれは仕方ないさ。俺もまさかあそこまで斜め上に話が飛ぶとは思ってなかった……」
昨日、あれからそう時間はかからずにカティーナ嬢とその侍女は確保されたのだが、何を目的としていたのか、城内で何をしでかしたのか、ふたりが黙秘を続けるために取り調べは難航していた。
どうせろくでもないことだとはわかりきっていたのだが、まさか勇者のお姉さんにあることないことを吹き込んで場を混乱させにかかってくるとは――
(確かに、妨害にはこれ以上ないほど的確な人選だったわね……)
「……純粋な好意って、時と場合によってはあそこまで暴力的になれるのね。わたし知らなかったわ」
「暴力……はは、言い得て妙だな」
ふたり揃って、げんなりとため息をついた。
「――ええっと、でもまあ、勇者のお姉さんたちにはわかってもらえたのよね?」
気を取り直して、うまく話し合いはまとまったのかどうか尋ねる。
「そうだな。どこにあるかもわからない世界のことだから関係ない、ではすまないということは理解してもらえたはずだ」
「そうね、向こうから人を引っ張ってくるんだもの。その時点で無関係とは言えないとは思うわ」
サキはうなずく。
「――あと、“知らなかったんだからしょうがない”は、これから先は通用しないし絶対に通用させないってこともきっちりと理解させたつもりだ」
にっこりと笑ってそうのたまうアルスの背面からは、どす黒い“何か”が渦を巻いているような、そんな錯覚を覚えるというか、なんというか……。
魔王さまは、大変お怒りのようだった。
いったい、サキが退室したあとどんな会話が繰り広げられたのだろう? 知りたいような知りたくないような――
(あ、でもどうせお姉さんが、なにかしら“よかれと思って”余計なことを言うかしたかして、お兄さんたちが火に油を注いだ感じかも)
もしくはその逆も可。
「なんにせよ、ひとまずはスタートラインに立てたってとこか」
「ええ――」
勇者を召喚することの問題について理解したところで、では今日明日にも魔法陣を破棄しましょう、とはならない。国と相談、もしかしたら他国とも調整を重ねなければならないだろうし、最終的にベルーカとの合意に至ったとしても、ただ“魔族は本当はいませんでした、これからはみんな仲良しです”ではない、もっと耳ざわりのいい建前が必要になってくるだろう。
道は長いが、それでも、次の召喚の時期に間に合えばいいのだから。
「アルス――本当にありがとう」
「どうってことないさ」
ぽふっと頭に手を乗せられた。しかしすぐに申し訳なさそうな声で、
「ああ……でもすまない、結局サキの事情について話すことになっちまった。話さずにすませればと思ってたんだがな……」
と謝られ、
「それこそしょうがないわよ」
サキは、ついさっきアルスから言われたばかりの言葉を返した。
きっと召喚の問題について話したところで、世界をまたいだ場所のことをどう確認すればよいというのか、証拠がないと一蹴されるだけだろう。
だからこそ、この話を神さまから直接聞かされたサキが自分で説明しなければ――それこそ嘘発見器的な魔法でもなんでも使ってもらって――と思っていたのだ。
……とはいえ、カティーナ嬢と勇者のお姉さんによる奇跡のコラボレーションによって、それも台無しになってしまったけれど。
「わたしのほうこそ、全部アルスにまかせちゃったし……。だめね、あのお姉さんは全然悪くないってわかってるし、お兄さんたちだって知りようもなかったのだから、どうしようもないことだったってわかってるの。でも、どうしても考えてしまうのよ……なぜ、あの日あのときのお姉さんを召喚したの、どうして巻き込まれたのが母さんだったの、って」
思い返すと、再びじわりと涙がにじむ。
「わかってるの。――母さんはわたしが助かってほしかったんだって。でも……わたしだって、母さんに生きててほしかったわ」
「ああ、そうだな――」
ぎゅっと抱き締められた腕に顔を押し付ける。
袖が濡れるのも構わず、アルスはそのままでいてくれた。
やがて、サキが鼻をすすって顔をあげると「そろそろ食べるか?」と脇に置いてあったかごを渡される。
上にかかっている布巾を取ると、お酒のきいたシロップが塗られたケーキに、ぴんと尖った赤い耳も鮮やかなうさぎが添えられていた。
「りんごのうさぎ……」
ぽつりとつぶやいてアルスの顔を見ると、どこか照れたように
「こういう気分のときもあるんだよ」
とアルスはうさぎを手にした。
「サキもいるか? 耳なしがよければそっちも用意できるぞ」
「ううん、これがいい。アルスが作ってくれたの?」
「それなりに長生きしてれば、料理なんてさっぱりだった男子でもこれくらいにはなれるってことさ」
口元に差し出されたうさぎの首をひと思いに介錯してやると、相変わらずの皮の微妙な味わい。
「おいしくないか?」
「――おいしくない」
眉間にしわを寄せながらもっしゃもっしゃとりんごを食べるサキに、アルスは苦笑した。
「ねえ、アルス」
つんつん、と袖を引くと、優しげな瞳が向けられる。
「どうした?」
「また今度……例えば、わたしが風邪をひいたときにでもうさぎを作ってくれる?」
「もちろん」
「約束?」
「ああ、約束だ」
差し出した小指に、自分より幾分大きい小指が絡み、軽く上下に振られ、それから、アルスはサキを抱き締めた。
「この役目は絶対に他の誰にも譲らない、俺だけのものだ――そうしてもいいか?」
「うん――」
「まあ、作る機会が少ないほうが、俺としてはうれしいんだけどな……」
「そうね。わたし、りんごのうさぎ嫌いだもの」
と、ため息まじりのアルスにそう答えると、耳のすぐ横でかすかに笑う気配がした。
感想で、スコーンとクロテッドクリームの話題が出て食べたくなったので作ってみた。
昔、姉ちゃんと姪っ子ちゃんがスコーンを手作りするのに付き合ったことがあったけど、牛乳にレモン汁を入れてカッテージチーズにして、フードカッターをぶんぶん糸を引いて回して小麦粉とバターを混ぜて、コップで抜いてとやっていて、こう、スコーンってずいぶんと手間なお菓子なんだなあと思っていたんです。
でも自分で作ってみたらあれですね、簡単でしたね。
ふわふわがいいとか、しっとりがいいとかいろいろ意見はありますが、こむるは、紅茶やコーヒーと一緒じゃないと口の中の水分が奪われて食べられないくらいのぼっそぼそのやつが好きです。
あ、牛乳と一緒でもいいですね。
材料(直径5~6センチ×6個分):
パターン1
・薄力粉 200グラム
・ベーキングパウダー 5グラム
・バターまたはマーガリン 50グラム
・砂糖 30グラム
・牛乳 90cc
・バターが無塩の場合は塩ひとつまみ
パターン2
・薄力粉 100グラム
・強力粉 100グラム
・ベーキングパウダー 5グラム
・バターまたはマーガリン 50グラム
・砂糖 30グラム
・牛乳 90cc
・バターが無塩の場合は塩ひとつまみ
パターン3
・小麦粉 2カップ(薄力粉のみ、薄力粉と強力粉半々どっちでも可)
・ベーキングパウダー 小さじ1強
・バターまたはマーガリン 50グラム
・牛乳100cc
・砂糖 大さじ3
・バターが無塩の場合は塩ひとつまみ
メモ:
・ベーキングパウダーは4~10グラム(小さじ1~2くらい)の間で好みによって調節。
・砂糖は30~50グラム(大さじ3~5)の間で好みによって調節。
・牛乳は小麦粉200グラムの場合、100ccではちょっとべたつくし80ccだとちょっとぱさつくかなって感じ。
・小麦粉1カップは、約110グラムなので少し牛乳多め。
作り方:
・オーブンを220℃に余熱開始。
・食品用のポリ袋に小麦粉とベーキングパウダー、必要なら塩を次々計量して入れていく。
・空気をしっかり入れるようにして袋の口を握り、がっしがっしとシェイクする。
・ボウルに袋の中身をあけてバターを入れ、すりつぶすというかひねるような感じで、さらさらのパン粉みたいになじませる。←手早く作業する!
・砂糖を入れて全体を混ぜ合わせる。
・牛乳を入れて混ぜ、手早くまとめる。粉っぽくない程度に、あまりこねすぎない。
・打ち粉をした台で2センチの厚さに伸ばし、型で抜くか、包丁、スケッパーなどで切り分ける。
・余熱したオーブンで10分ほど焼く。
メモ:
・その気になれば、全部袋の中で作業できると思われる。
・小麦粉と砂糖をあらかじめ一緒にしておいても可。
・綿棒で伸ばしてももちろんいいのだけど、でもこれ、綿棒を使うほどの生地なのだろうか?
・鋭くすぱっと型で抜くor切り分けることが、あのぱかっと側面の割れたスコーンの秘訣らしい。
・小さめな型でたくさん作ってもかわいいしお子のおやつに量の調節がしやすくてグッド。
・焦げるようなら、オーブンの温度を200℃に下げて15分焼くなど適宜調整。
クロテッドクリームを食べる
スコーンのお供というイメージが強いクロテッドクリーム。何か他の食べ方はあるのだろうかと考えてみた。
どうやらサンドイッチなんかにバターの要領で使うらしいということなので、
・トーストに塗ってみる
おいしいのだけど、いうなれば無塩バターを縫っているようなものなので、なんと無く塩気が足りない。ジャムを足したら大変おいしかった。
・じゃがクロテッドクリームにする
あつあつ茹でたて(ふかしたて、レンジでチンしたて)のじゃがいもに十字の切り込みを入れてクロテッドクリームをのせ、トーストの反省を生かして塩をぱらぱらする。バターとクリームチーズの中間みたいな味わいで、大変おいしかった。しょうゆをちょっと垂らすのもグッド。
・茹でアスパラガスのクロテッドクリーム添え
上記のじゃがクロテッドクリームに付け合わせていたアスパラガスに、熱で溶けたクロテッドクリーム(with塩)が流れたもの。超うまい、いや、まじで! ほんとだから!
・安心と信頼のスコーン
スコーンにクロテッドクリームを山盛りにして、気分次第でジャムなんかもつけて、たっぷりミルクを入れた紅茶でティータイム。あれだね、クロテッドクリームって、スコーンと一緒に食べるために生まれたんじゃないかなって、真剣に思うね。
クロテッドクリーム、もう少し安くならないもんかね……