side千鶴――魔王さまはお怒りのようです
本日四話投稿 4/4
ひとりの台詞が長く続くのを避けるために、適当に合いの手を入れる、地の文をはさむなどといったやり方がありますね。それからもうひとつ、その人の台詞を適当に「」で閉じながら連続で並べるというのがありますが、「あ、これ同じキャラの台詞が続いているんだ」って判断するのにちょっとタイムラグができてしまって苦手なんですよね。
むしろそれくらいなら、1ページまるまる台詞で埋め尽くすくらいの気概を見せてほしいとも思うのでした。
「だがサキは違う。彼女は神との会話の中で地球に流れ込む魔力の問題について、それからこの世界への転移や転生がなぜ起こるのかについて教えられたそうだ」
「え? でもそれは神様の手違いで……なんですよね?」
召喚魔法の問題点を神様から直接指摘されたのなら、納得するしかないのかなって、そう思うけど。
でも、今は召喚の話をしてたのに、急に転移者や転生者の話に飛んだりして、何だかついて行くのが大変だ。
「ではその“手違い”の原因は? まさか神が手を滑らせて物を落としたからとでも?」
えっと、確かにラノベとかでそんな展開も見たことはあるかも知れないけど……そんな訳ないですよね、はい。
「勇者を召喚するということは、元の世界で生まれて死ぬ定めにあったものを無理やり引っ張ってくるということ、つまりその者の運命を歪めることでもある」
「“こちら”であれば大きな目で見ればそれも“魔力の歪み”として対処できるのかもしれないが、“向こう”ではそうもいかない。ひとつの運命の歪みが周囲に影響を与えていき、やがて大きな歪みへとなる」
「それに巻き込まれて本来死ぬべきでなかった者が命を落とし、“手違いの詫び”と称してこの世界へ送り込まれる――召喚で流れ込んだ余剰魔力の消費も兼ねて、な」
しん……と会議室は静まり返る。
想像以上の勇者召喚の影響の大きさに、皆言葉も出ない。
事前に知っていたのか、アルスさんの後ろに控えるセニエさんたちの表情に驚きはないが、それでも――特にソーマさんとアトリさんは――苦々しげに眉を寄せたり、どこか哀しげに目を伏せたりしていた。
――後に知ったことだけど、アトリさんは相馬さんと共に魔の森に赴いたという初代勇者の子孫なのだそう。
召喚魔法の元になった相馬さんの魔法を使えば日本に戻ることも出来たけど、旅のメンバーの一人と愛し合うようになり、相馬さんと同じくこちらに残ることを決断したのだとか。
相馬さんと初代勇者さん――キョウヤ・アトリさんというらしい――の直系の子孫である二人は、祖先がそのようなことに巻き込まれたということに、やはり思うところがあったのだろう――
「だがアルス、召喚に巻き込まれたとは言うが」
半信半疑、というよりは到底信じられない、といった様子のエドガー。
「そもそも、それはあの娘一人が言っていることなのだろう……? 口からの出任せではないという保証は……――っ!?」
その瞬間。この部屋の温度が一気に下がったかと思った。
真正面からアルスさんの冷気――というか殺気というか――を受けてしまったエドガーの顔色は青く、表情も強張っていた。
エドガーだけじゃない、キースさんやレオン君、それから勿論わたしの顔もひきつっていて。
――うん、あれはちょっと無理だ。怖すぎる。
「……春の、四月も後半の頃だったそうだ」
何か――多分それは怒りとか憤りとか。そんな何かを押し殺したような静かな声音で、アルスさんは語り出す。
「その日は就職して初めての給料日で――それまで女手ひとつで育ててくれた母親を、食事に連れて行ったのだと」
就職――? 給料日――?
アルスさんは一体誰のことを話して……?
「帰る途中、横断歩道を渡ろうとしたところに信号無視したトラックがやってきて、咄嗟に母親を庇おうとしたが逆に突き飛ばされた」
「っ――!?」
わたし――……わたし、その光景を知って、る…………?
脳裏に浮かぶのは、道の向こうに見えた幸せそうな母娘連れ。
一歩ごとにミントグリーンのスカートが揺れて――――
「なあ、これってもしかしてチズルが召喚された時の……」
そう。レオン君の言う通り、これはわたしがこの世界に召喚される直前に巻き込まれた事故そのものだ。
でも、視点がわたしじゃなくて、あのお姉さん――たぶん、そういうこと……なんだよね……?――のものになっていて……
「本来なら母親は助かるはずだったが、運命の歪みによってふたりとも命を落とすことになった――召喚される者の近くにいた者が巻き込まれやすい傾向にあると、神は言っていたらしいな――そして、母親は自分より娘を生き返らせてほしいと願い、サキは今ここにいる」
「っ……サキ、ちゃん――――?」
――サキちゃんが、あの時のお姉さん……?
「確かに、証明のしようもないことではある。だが、勇者殿が召喚されたその場に居合わせた者が時を同じくしてこの世界に連れて来られている――それは偶然だと、本当に貴殿らは思われるのか?」
「それ、は……」
言葉に詰まるエドガー達の横で、わたしは足元から冷たいものが這い上がって来るような感覚に襲われていた。
『へぇ? そんな状況で相手のことを思いやれるって、なんか凄いな』
『ね、凄いよね? わたしもそう思うの』
わたし、あの時――魔法屋敷の庭で、サキちゃんの目の前でどんな話をしていた……?
『その二人は、とても強い絆で結ばれていたのでしょうね……大丈夫、きっと無事ですよ』
『そうさ、チズルのその優しい気持ちが、祈りが届かないはずがない』
テレビとかネットなんかでたまに見掛ける“ちょっといい話”、“感動的な美談”を披露するような気分で。
『だね、あんなに素敵な人達なんだもの。絶対助かってるよね!』
無邪気に笑い合っていたのだ、わたしは、わたし達は……。
助からなかった母親と、助からなかった自分の話を。
わたしの“優しい祈り”があの二人を助けたような気にさえなって。
結局祈りなんて届かなかったというのに。
『どうして、母さんはここにいないの――?』
サキちゃんは、わたし達の会話を一体どんな想いで聞いていたのだろう――――?
「謝らなきゃ……」
「「「チズル(様)……」」」
「わたし――サキちゃんに謝らないと……」
ふらりと立ち上がる。
「謝ってどうするというのだ?」
「――っ!」
しかし、それを遮るアルスさんの声はまるでナイフのように鋭く。
「だ、だって……知らなかったとはいえわたし……」
「知らなかった、悪気はなかった、“サキちゃんの為”を思ってのことだった――謝りさえすればそれを受け入れてもらえるのが当たり前と思っている者の言葉だな」
「「「なっ――!」」」
「そんな……アルス、さん……」
エドガー達は気色ばみ、わたしはアルスさんがわたし達に向ける冷たい――冷たすぎる視線に身を竦ませた。
「アルスさん――! チズル様の純粋なお心を貶めるようなその仰り様は、余りにも――」
「そして、貴殿らはお優しい勇者様がわざわざ謝ってくださったのだ、許さないなんてあり得ないと寄って集って謝罪を受け入れさせるのか? まだそんな心の余裕もないような状態の相手に――?」
とんだ“優しさ”だな、とアルスさんは吐き捨てた。
「相手の気持ちも何もかもを無視して、自分がただ満足したいだけの“謝罪”に何の意味がある?」
「あ――……」
ざくざくと、鋭い刃が突き刺さる。
――ずっと、アルスさんとの間に隔たりのようなものを感じていた。
いつか、心の壁を取り払ってくれたらと思っていた。
“本当”のアルスさんに会えたら、と。
そうしたら。
きっと、もっとアルスさんと――
「お前たちは……あと何回サキを泣かせれば気がすむんだ?」
今、多分アルスさんは初めて剥き出しの感情でわたし達に相対している。
そう、ずっと待ち望んでいた瞬間の筈なのに――
だというのにどうしてだろう、わたしの心は冷え込んだままなのだ……――――
長丁場お疲れさまでした。
めんつゆのカスタマイズについて
めんつゆ、白だしの類いはとても便利。中華におけるうぇいぱーのように、全てがめんつゆ味になる危険性もなきにしもあらずではあるが、一本冷蔵庫にあるとやっぱり便利。
でも、おそばをめんつゆの味で食べるのはちょっと……とか、めんつゆ味の親子丼はなんか何かの味が足りないような気がする……なんてこともあるかもしれません。
そんなときは遠慮せずに砂糖だのしょうゆなどで味を自分好みに調えてやればよいのです。
あ、そんなの常識でしたか、はい。
そばつゆっぽい感じにするには:
・けっこう思い切りよく砂糖としょうゆを追加する。みりんの風味なんて消してやるんだ!くらいの気持ちで。
丼もの用:
・砂糖としょうゆをえいやって追加。けっこう甘めに。
だし巻き風:
・甘めが好きなら、めんつゆで塩加減を調整したあとに卵1個につき砂糖を小さじ2分の1~1くらい加える。塩味の鋭さがほしいなと思ったら塩ひとつまみもしくは薄口しょうゆひとたらし。
ほうれん草のだし入り卵焼き
作り方:
・茹でて1~2センチ(我が家の場合)に切ったほうれん草に白だしもしくは薄口しょうゆ少々をあえて水気を絞る。
・味をつけた卵液にほうれん草を混ぜて焼く。
メモ:
・ほうれん草が入ると切りにくいので注意。
・甘めでも甘さ控えめでも。