side千鶴――垣間見た魔王軍は……
2話連続更新 1/2
会話というか、誰かひとりがいろいろ説明したり持論を述べたり長々としゃべってるとき(ミステリーの謎解きパートみたいな?)、台詞が長くなりすぎるのを嫌ってだと思うのですが、聞き役の人が相づちを打つじゃないですか。
「なんとかかんとかで、なんとかかんとかなのは、かくかくしかじか(ドヤッ)」
「あ……」
「さらに、これこれこうで、云々かんぬん(キリッ)」
「あっ――」
「つまり、人類は滅亡するっ!!(ババーン!)」
みたいな感じで、「あ」しか言わないの、意味あるのかしら? 他の台詞も言わせるとか地の文を入れるとか、も少しバリエーションを増やしてあげてほしい。
2018/05/01 落書き倉庫に落書きを一枚追加
木漏れ日の森が段々深い森になって、注連縄とかが掛かってる御神木クラスの木だらけになって。
そして、今ではまるで屋久島の縄文杉――。
木と木の間隔が比較的開いているからか、昼なのに夜みたいに暗い、ということはないのだけど、圧迫感がですね……あと、魔力が濃密過ぎて息苦しいというか……。
召喚チート付き勇者のわたしは比較的平気なんだけど、エドガーやキースさんはこのところ顔色も悪く辛そうにしてる。
レオン君ですら、気を抜くと胸焼けしそうだと辟易としていた。
アルスさんは……全然普段と変わった様子を見せないんだけど、やっぱり辛いんだと思う。森に入ってから日が経つにつれて、だんだん言葉数も少なく、表情なんかも、こう、無表情を通り越して無機質な感じ――? うん、上手く表現できないや。
出てくる魔物も、ワイバーンがどうのとかフェンリル的なのがどうとか、洒落にならない感じになってきてるし。
なるべく戦闘にならないよう、魔物避けや隠蔽魔法、気配遮断の魔道具諸々を駆使して抜き足差し足でちょっと傍を失礼しますよ~って……。
運悪く見つかってしまうこともないではないけど、アルスさんに鍛えられたわたし達の敵ではないのであった――嘘です、アルスさんがいなかったら危なかった場面とか結構ありました。もっと、ちゃんと足手まといにならないように頑張ろうと思います……。
アルスさんの予測によると、そろそろこの森の最深部に到達したのではないかとのこと。
魔の森でも特に魔力の濃いこの一帯には、ドラゴンといった魔王軍でも中核を成すような超大物が巣を作っている可能性が高く、森を抜けて魔王城に辿り着こうというのなら、彼らを刺激しないよう、万が一にも戦闘になってこちらが消耗するのを避けるよう細心の注意を払わなければならない。
なので、わたしもレオン君も無理にウサギや鳥を獲ろうとはせずに、野草や木の実を探すのに専念している、という訳だ。
ちなみにキースさんは本日の夜営地で結界の展開と火の確保、アルスさんとエドガーは次の砦までの道を確認中だ。
“道”、“砦”――そう、深層に差し掛かった辺りから、獣道レベルではあるけれど、明らかにかつて道だったであろう痕跡や、夜営地にしたのではと見られる開けた場所が見つかるようになったのだ。
砦だって、もう“跡”なんて呼べない程の、しっかりと形を保った石造りの塔がわたしたちの前に姿を現して――。
最近使った形跡が見られないこと、備蓄等もなく残されていた藁や布等も埃を被っていたこと等から、ここは過去の勇者に押し込まれて既に放棄された砦か、若しくは普段は魔王軍は森には常駐しておらず、今のところ人類に対して進軍も始まっていないのではないか、とエドガーやキースさんは考えているみたい。
ここはもう、魔族の領域なんだ――。
「チズル、そろそろ戻ろうぜ」
収穫した野生のニンジンみたいな草の根を“収納”しながら、レオン君がこちらに笑顔を向ける。
わたしも木苺を採る手を止めて立ち上がり、自分の収穫分をレオン君に“収納”して貰った。
「結構採れたね。まだ木苺なんて、時期的に早いんじゃないかって思ってたけど」
「この森の魔力のせいかな、木だけじゃなく野草の生育とかにも影響を及ぼしてるのかも」
確かに、と周囲の木を見上げる。
「ほんと、大きくなり過ぎだよね、この木。まるで自分が小人か何かになっちゃったみたいだよ」
「だよなあ――ああでも、小さくなったチズルって可愛いかも」
「かっ、可愛いって……!?」
いやいや、今の話の流れでどうしてそんな結論に落ち着くのっ!?
真っ赤になって動揺してるわたしを楽しそうに見詰めながら、レオン君は続ける。
「そうしたらポケットか何かに入れて、誰の目に触れさせることもなくずっと一緒に――っ!?チズル!」
「えっ、きゃぁ――……っ!」
突然、周囲に弾けるように魔力が膨れ上がり、空気が震えた――それが風なのか轟音なのかも分からない程の圧力――レオンが言い掛けていた言葉もかき消されてしまい、次の瞬間、わたしは近くの茂みの中に引き倒されるようにして身を隠していた。
「レ、レオン君……」
「しっ、顔を上げちゃ駄目だ、チズル――」
半ばわたしの上に覆い被さるように身を屈め、レオン君は素早く隠蔽の魔法を強化させる。
「……ほんとは、防御結界も張りたいけど、あんまり派手なことをすると見つかるかもしれないから……」
「うん……」
緊迫した声のレオン君に、わたしも強張った顔で頷く。
木々の切れ目から覗く空には、物語やゲームの中でしか見たことのなかった――ううん、鱗でしか知らなかった存在が、悠々と羽ばたく姿が――
「ドラ……ゴン……」
わたしの肩を抱くレオン君の手にぐっと力が入る。
深い緑色の体躯が煌めく。鱗を透過した日の光が、影に緑色のステンドグラスを書き加えて行く――以前に、レオン君から教わったことを思い出す――そう、あれは、きっととても力あるドラゴンだ……。
その姿が見えなくなってどれ位経ったろうか。じっと息を詰めていたわたし達は、どちらからともなく顔を見合わせ、大きく溜め息をついた。
「はああ~、助かった……」
「うぅ、生きた心地がしなかったよ……」
肩の力が抜けたところで、レオン君と密着状態であることに漸く思い至、る……って、ひいいぃっ!? 近い、近過ぎるっ! いや分かってるんだよ、緊急事態だもんね、でもイケメンの破壊力がっていうかさあっ!
「チズル、立てるか?」
「あ……う、うん、ありがと……」
がさがさと立ち上がったレオン君が、手を差し出してくれるのに掴まる。
服や頭に付いた葉っぱや土を払い落とし、さりげなくレオン君から距離を取ってこっそり頬に手をやった。
ドラゴンに青ざめてイケメンオーラに赤くなって……今自分がどんな顔色をしてるのかも分からない。
「それにしても……」
レオン君は、厳しい顔付きでドラゴンの飛んで行った先――東の空を見ていた。
それは、つまり魔王城のある方角であり、最終的にわたし達が目指す場所で――。
「おかしいとは思ってたんだ――」
「レオン君?」
「チズルはさ、思わなかったか? 話に聞いていたより……思い描いてたのよりも、この森に出て来る魔物は随分と少ない、ってさ」
「それ、はー」
言われてみれば、確かにその通りなのだ。
“魔の森”というからには、もっと絶え間なく魔物が襲ってきたりするのかと思ってたけど、その強さはともかく、魔物をやり過ごしたり運悪く戦闘になる回数というのは、エスター国の王都ヨランダの森と比べて大差なくて。
「さっき、あのドラゴンが飛んで行くのを見てもしかしたら、って思ったんだ。もしかしたら、俺達のことに勘づいた魔王が、軍を魔王城に呼び寄せているのかもしれない、今この森にいる魔物は、魔族に操られていない云わば“はぐれ”の魔物なんじゃないか……って」
「あ――」
「だとしたら、この状況にも説明がつくんじゃないか――?」
使われた跡の薄い砦、未だ一人として現れることのない魔族、不自然な迄に数の少ない魔物達――これらの情報がひとつに繋がる。
「そっ、か……総攻撃を仕掛けるつもりで待ち構えてるんだね……」
「きっと、厳しい戦いになるだろうな」
ドラゴン(!)を始めとする凶悪な魔物に魔族達。対するこちらはたったの五人……。
わたし達は魔王との和平を目指しているのだから出来る限り戦いは避けるつもりでいる――とはいえ、どうしても避けられない場面なんかも出て来るだろう。
「チズル、チズル――大丈夫だ」
「あ、……」
両手を包み込むように握られて初めて、わたし手を爪が食い込む程に握り締めていたことに気付いた。
「……大丈夫、言っただろ? 俺、絶対にチズルのこと守ってやるって」
そう言って、レオン君はニッと笑った。
「何があっても守るから、俺達が――俺が、魔王の所まで連れて行ってやるから。だから、チズルはチズルの思った通りに行動すればいい」
「レオン、君――……」
「その目で、魔族について見極めるんだろ? チズルなら絶対出来るって。……な?」
その日溜まりのような笑顔に不安も溶けていき……。
大丈夫、きっとどんな困難も乗り越えられる――そんな気持ちになれたのだった。
そういえば、冬にキングダムだったかユーベルブラットだったかを読み返して上がりきったテンションのままに、
「そうだ! なんか大賞に応募したら確実に読者がひとり増えるってことじゃん! こむるさんってば超天才!」
って感じで応募してそのまま忘れ去ってたんですよ、アイリス恋愛ファンタジー大賞。
で、最近になって、すっかり忘れてたけどもう審査結果とか出てるころじゃね?って見に行ってみたわけです。
いやー、驚きましたね。こんなカオスな構成(前書き、後書き含む)の作品に、一次審査を通過する余地があったとは。ほんと、びっくりです。