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わたしをどらごんまでつれてって

Q.なんでシドニーさんの略称は「シド」ではなく「シッド」なの?


A.こむるさんは、ディック・フランシスの競馬ミステリーが大好きだからです。

特に、シッド・ハレー三部作と呼ばれていたシリーズはすばらしいもので、ディック・フランシスのほぼ唯一のシリーズものであり、三作目から十年余り、第一作から数えると実に四十年以上経ってからシッド・ハレー完結編ともいえる四作目が出たときのファンの喜びたるy……


Q.ではシッド・ハレーシリーズ以外にこむるさんのおすすめディック・フランシス競馬ミステリーを教えてください。


A.

・「証明」――タイトルが秀逸。主人公と相棒の関係が好き。

・「不屈」――主人公の伯父さんが素敵。「あなたは私を永遠にした」の台詞に痺れる。

・「反射」――主人公が自分のルーツを探る過程がなんか好き。

・「奪回」――七月鏡一、藤原芳秀作「闇のイージス」シリーズが好きなら一度は読むべき……ニッチすぎる……。




「そういえば姫さんって、ちょっと前が誕生日だったんだっけ?」


 とは、サキと同じテーブルでベリーのミニタルトをつまんでいるシドニー氏の発言である。


「城でも盛大にお祝いしたんだよな、いいなあ、俺も出たかったなあ」


 先日出会って以来、ジェラード、シドニー両氏とお茶をごいっしょすることも増えた。


 ジェラード氏が、自分の手が空いた時間にタイミングが合うようならどうだろうかとあらかじめお伺いを立ててくれるのに対し、シドニー氏はといえば、サキとおじいさんがお散歩をしているところにひょっこりあらわれ、あるいは交流会のお友だちと遊んでいるところにいつの間にか交ざって鬼ごっこをしていたり、魔法の練習ごっこの先生役をしていたり――ナタンかジェラード氏に捕まって仕事場に連行されていくまでがいつもの流れである――なぜかタニアといるときにはあらわれないのが不思議だけども。


「そうしたら姫さんにプレゼントを用意できたのに――そうだ! 今からでも何かほしいものはない?」


「ほしいもの……ですか」


 サキはちょっと首をかしげて(気持ちだけで十分うれしい、という意見はにこやかに却下された)


「プレゼントにほしいというのとはちょっと違うけど、それでもいいですか?」


 ぴっと指を伸ばした左手をテーブルの上に乗せた。


「ああこれは……魔石かなって思ってたけど、トゥッカヴァルトの鱗なのか」


「トゥッカ……?」


 サキの左手を取り、興味深そうにシドニー氏は指輪を眺めている。


「この指輪の材料の名前だよ」


「材料って――」


 力試しの記念品?にもらった鱗なのだから、くだんのドラゴン氏――トゥッカヴァルト氏はご健在のはずなのだが――


「なかなかいい仕事をしてるね。魔力もきれいに通ってるし――姫さんの魔力に馴染みはじめたってところかな」


「その、この指輪はアルスにもらったんですけど、指輪だけでなくて、他にもたくさんもらってばっかりで……」


「うん、自分の幼なじみが、わりと洒落にならないとこまで行きついちゃってるという事実に、なんとも言えないなにものかを感じるね」


 シドニー氏の視線は、主に耳の横にとめられた髪飾りと、首から下げられたペンダントを行き来していた。


「それで、わたしからもちゃんとしたお返しができたらいいなって」


「なるほどね、何を贈ろうかっていう相談?」


「それもあるけど、材料の入手方法について……えっと、トゥッカヴァルトさんの鱗って、わたしでももらうことはできますか?」





 ずっと考えていたのだ。


 アルスからペンダントや髪飾りをもらったときとてもうれしかったし、実際何度かそれらに助けられもした。


 これだけでも十分すぎるというのに、指輪までもらってしまうとは(しかもドラゴンの鱗製!)、さすがにもらいすぎではないだろうか、と――サキの方からはお弁当やお菓子を用意するくらいだったというのに。


 これらに見合う――とまではいかなくても、少しでも何か、特別な何かを贈りたい。


 そこで白羽の矢が立ったのが、ドラゴンの鱗だった。


 では、実際にどうやって手に入れればいいだろうか――?


 そんなところにシドニー氏からの質問があり、ちょうどいい機会と相談してみたわけなのだが、


「えっと……? トゥッカヴァルトの鱗? ……えっ? あれ?」


 どうやら、予想以上にシドニー氏の受けた衝撃は大きかったらしい。


 混乱した様子で紅茶を飲みかけては下ろし、もう片方の手はタルトを盛った大皿と自分の取り皿との間を反復横飛びしている。


「やつの鱗がほしいなら、お兄さんが持ってるの何枚でもあげちゃうよ。ほら、あいつ暇人……人……ひと?ドラゴン?だからさ、定期的に鱗送り付けてくるの。“暇だ~かまえ~”って」


 たしかに、アルスもそんなことを言っていた。


「どうしても無理そうだったら、お願いするかもしれないけど、でもまずは」


「大好きな陛下のためだから自分で手に入れたい?」


 サキはこっくりうなずく。


「何か他のもので……それじゃだめか。それ、特別な指輪だもんね、お返しだって特別なのがいいよね――例えば“自力”で入手した“お揃いの”鱗とか」


 シドニー氏はいたずらっぽく、サキの方は当然、という顔で笑い合った。


「そっかそっか、だったら協力しないわけにはいかないな。幸い今日はそこまで忙しくないし、さっそく行くか!」


「えっ?」


 どうやら、首尾よく協力――戦いの苦手なサキが鱗を手に入れるにはどのような勝負を持ちかければいいかの作戦会議、特訓、のちにトゥッカヴァルト氏のお宅訪問――を取り付けたとほっとしたのもつかの間、シドニー氏は立ち上がるとサキを腕に抱き、


「ちょっとふわっとなるよー、つかまっててね、姫さん」


「あれ?」


 転移魔法を発動させた。


「姫様!? お待ちくださいませ閣下!」


「シッド、そろそろ戻って――シッド!?」


 視界が暗転する直前、少し離れていたところに控えていたメイシーら侍女さんたちがあわてふためき、ちょうど休憩時間終わりを告げに来た(シドニー氏の部下らに泣きつかれたともいう)ジェラード氏が、突然のことに一瞬たたらを踏み、それから駆け出そうとするのが見えた。



 あ、このパターンなんか知ってる――サキはそう思った。



次回はなるべく早いうちに。





・タケノコと小松菜の中華風炒め


ピーマン(主にナス科)のアレルギーで青椒肉絲を食べられない悲しみを詰め込んだ一品。


材料:

・水煮にしたタケノコ 小一個(100グラムくらい)

・小松菜 2~3株

・豚肉のこま切れ 100グラム


・ショウガのすりおろし 少々

・塩糀 小さじ2分の1

・しょうゆ 小さじ2分の1

・こしょう 少々――――ここまで豚肉の下味

・片栗粉 適量


・中華スープの素 小さじ1

・しょうゆ 小さじ1くらい?

・砂糖 小さじ2分の1~1

・塩こしょう 少々――――味付け用

・サラダ油

・ゴマ油


作り方:

・タケノコは千切り、小松菜は3~4センチ程度のざく切りにする。

・豚肉を食べやすい大きさに切り、下味用の調味料を揉み込み片栗粉をまぶしておく。

・サラダ油を多めにフライパンに入れ、豚肉を揚げ焼きにし、皿に移す。

・フライパンの油が多すぎるようなら他に移すなど調節し、よく熱してタケノコ、小松菜をさっと炒め、塩こしょう以外の調味料を加え、豚肉をフライパンに戻す。

・塩こしょうで味を調え、ゴマ油少々を回しかけて香りをつける。



メモ:

・チンゲン菜でもおいしくできる。

・塩糀の代わりにみりんを使ってもよい。こむるは塩糀派。

・豚肉はかたまりを細切りにするとより青椒肉絲っぽくなる……青椒肉絲……好きなのに食べられない……(´ノω;`)

・しょうゆの代わりにオイスターソースを使うとよりよいでしょう。しょうゆと半々で使う、砂糖を加減するなどして甘味を調節。

・仕上げに水溶き片栗粉少々でとろみをつけてもよいでしょう。



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