考えてはならない
アメリカ産の小説やドラマは、どんなに話が面白くても恋愛方面の感覚に馴染めなくて苦手。
奴ら、くっついては別れくっついては別れくっついてはわか――
じれじれと勘違いすれ違いを繰り返す日本のあれとはまた違ったあの感じ、なんなんでしょうね、不思議です。
さてソーマ・ユートといえば、魔力が高いほどその生物の寿命は延びる傾向にあるという、両者の密接な関係を解き明かした人物としても有名である。しかし、当時人びとを震撼させた誘拐事件、通称魔石事件を解決した功績については、なぜかあまり知られていない。とはいえこの事件の凄惨さを考えるに、むしろそうであるべきという何者かの意志が働いていたとしても、少しも不思議ではないのである。
魔力を持つ動物、つまり魔物が体内に魔石を作り出すなら、高い魔力を持つことで知られている魔族も同様なのではないかと考えた研究者集団が、魔族を捕らえ、魔石を取り出すあるいは生み出す実験を繰り返し、果ては人間からも魔石を作り出そうという、神をも恐れぬ行為に手を染めたというのが事件の概要である。
このとき救出された被害者の中に、身寄りをなくしてソーマ・ユートに引き取られ、後に彼の妻のひとりとなっ――(ヤカンの沸く音)
サキとアルスは、定期的に森の入り口の倒木でお弁当を食べるようになった。
他のところの依頼を受けなくてよいのかきいたら、どうせ暇つぶしだし弁当のほうが大事と言われた。
それに、別の場所が目的地の依頼や昼をまたぐような場合もないではないらしく、そんなときアルスは転移魔法でわざわざサキに会いにきているようだった。
(お弁当への執着が凄まじい……)
ちなみに、もし雨が降ったら次の日に待ち合わせることになっている。
今日は約束の日ではないが、サキは収穫時期の終わりに近づいた木苺を摘みに来ていた。工房から帰る途中、市場でクリームチーズを買ったのだ。ケーキにして木苺のソースをかけよう。
――と思い立ち、その前の日はジャムの追加のためにと、なんやかやと理由を作ってはサキは毎日のように森にやって来ている。
約束の日ではなくても、もしかしたらと思ってしまうのだ。木苺が終わったら、次は薬草取りでもはじめてしまいそうだ。
(これは相当浮かれてるわ)
サキはペンダントの黄緑色の石を片手でさわりながらため息をついた。
何度見ても恐ろしく精巧な魔法だ。この大きさでこれだけの魔法を込められるということは、魔石の質もかなりのものである。
複雑なパズルのように組合わさったその内容は、攻撃に反応して強力な結界を張ることとその維持――と、ここまでは読み取れた。それからもういくつか隠された機能があるようなのだが、なにかしら位置情報に関わることらしいとしかまだ解読できていない。
(魔石といえば――)
先日読んだ本の内容を思い出した。もう千年単位で昔の話だが、魔石に関わる誘拐事件についてだった。
結局、人の体内から魔石はとれるのか、その実験の結果については書かれていなかった。気になったので神さまからもらった知識を探ってみたが、魔石の出来やすさはその生き物の体質によって変わり、ゴブリンやオークなどの人型の魔物は出来にくい傾向にあることまでしか知識の中にはなかった。
だから人から魔石ができることはない、それが魔物と人とを決定的に分けている――というのが神殿の主張らしい。その先は考えることすら神に対する冒涜である、と。
(まあつまり、もし出来たとしても確率はごく低いってことかな)
サキには、それよりももっと気になることがあった。
件の本には、魔石事件はまず魔族が実験の対象になったとあった。しかし、まだ実物を確かめてはいないが別の本には、人のみが被害にあったとあるのだ。
頭の中で仕分けしていくと、古い時代に書かれたものほど魔族についての記述がなくなっていく。
(いったいこれはどういうこと?)
そもそも、なぜ“魔族”という単語がサキの気を引いたかというと、神さまからこの世界の説明を受けたとき、魔物がいるとは聞いたが魔族がいるとは神さまは一言も言わなかったからなのだ。
それなのに、与えられた常識では「魔族は人と似ているが恐ろしいほどの魔力を持ち長命で、魔物たちを従えて世界の支配を企んで」いるらしい。過去何度も魔族と彼らを束ねる魔王の討伐が試みられたが、いずれも失敗に終わっている。
単に神さまが説明を省いただけと言ってしまえばそれまでかもしれない。しかし――
(魔族って、ただ魔力が高いだけのただの人みたいなんですもの)
木苺をとる手を休めてそんなことを考えていると、森の奥から複数の足音、枝の折れる音、かすかな地響きが聞こえてきた。
「え、何?」
立ち上がって音の近づいてくる方に向き直る。
突然目の前の茂みが大きく揺れた。
とりのから揚げメモ
味付けはもちろん、どんな粉を使うのか、たまごや牛乳の有無は、ていうかそれ竜田揚げじゃん!フライドチキンじゃん!な事案まで、どんなとりの揚げ物をおうちでから揚げと呼んでいるかは千差万別。蓋をあけてみるまでわからない。
我が家のから揚げは、いわゆる竜田揚げに分類されるタイプらしい?よくわからん。
作り方
とり肉にすりおろしたニンニク、塩、こしょうを馴染ませて片栗粉をつけて揚げる。
モモ一枚にたいして、ニンニクは小さめのやつを3から2分の1程度、塩は小さじ3分の1くらい。
カレー粉を片栗粉に混ぜるアレンジもgood。
我が家の正式(?)な肉はとりの手羽元。揚げるのに時間はかかるけどおいしいよね。
でもお弁当がニンニクっぽくなってしまうのだ……