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蒐集少女の拾遺譚  作者: 伏見 七尾
Ⅰ.綺羅と累囚
7/58

5.

「何度も聞いてる。――ねぇ、服を着ちゃだめ? 寒いんだけど」

 累は鼻を鳴らし、軽くベビードールの裾をつまんでみせた。

 束ね髪の女は首を振った。

「ダメ。もう少しでデッサンが終わるから。――そんな怪我して、まったくこの子は……」

「心配してくれてるの?」

「心配してるよ。モデルが傷ついたら困るじゃない」

「ああ、そう」

 ベビードールの刺繍を軽く弄りつつ、累は唇をへの字にする。

「累、何故貴女を弟子にしたかわかる?」

「顔がいいから」

 累が即答すると、めぐるはスケッチブックから顔もあげずにうなずいた。

「そう。あの施設で一番の美少女で、絵のモデルとして最適だったから貴女を引き取った。だからあまり派手に怪我をされちゃ困る」

「人格最悪だよね、めぐる先生」

「知ってる」

 表情も変えず、束ね髪の女は肩をすくめた。

 女の名前は暮井くれいめぐる。一応、累の保護者ということになっている。

「でも蒐集師なんて人格歪んでなきゃできないよ。なにせキラなんて滅茶苦茶なモノを追いかける蒐集家。皆どこかしらおかしいよ」

「私はおかしくない」

「大丈夫、どうせすぐにおかしくなるから。あるいは気づいてないだけでもう――」

「やめてよ」

 累は唇を歪め、椅子をぎしぎしと傾ける。

 めぐるは鉛筆を止め、冷え切ったまなざしを累に向けた。

「それでどうしたの、今回のキラは」

「ん、牙の事? もちろん私の宝箱の中に入れておいたけど。だって記念すべき私の蒐集品第一号だし。初めてにしてはなかなか良い物手に入れたでしょ?」

「うーん、まぁまぁだね。私の持ってるヤツに比べたら」

「持ってる……?」

 ぴたりと累は動きを止めた。

 どこもかしこも薄く細い累の体を描きつつ、めぐるはうなずいた。

「うん。私も似たようなの二十本ほど持ってる」

「そ、そんなバカな! そんなたくさんあるはずない!」

「ある。あの牙飾り、昔流行ったことがあったからね。わりとよく見かけるわ、あれ」

「そんな……」

「それに貴女の持ってきたの、あまり状態が良くなかった。大方、最後の封印処理が良くなかったんだろうね」

「うっ……」

 累は思わずうめく。

 綺羅縛匣はキラの怪異を封じ、蒐集するためにかける最後の術だ。ある程度キラの力を弱らせてから行使する物だが、累はこの術がいまいち苦手だった。


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