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蒐集少女の拾遺譚  作者: 伏見 七尾
Ⅰ.綺羅と累囚
4/58

2.

「……かかった」

 累はにやりと笑い、地を蹴った。

 その瞬間、オオカミが振り返った。迫り来る累に向かって牙をむき出し、地の底から響くような唸り声で威嚇してくる。

 しかし累は構わず、右手の指を素早く動かした。

 その指先に光の糸が絡み、六つの円環をモチーフにした複雑な紋様を描き出す。

「【六道輪ろくどうりん】!」

 累は叫び、輝く掌を前に押し出した。

 その掌中から、六つの光の枷が飛びだした。それらはまるで拘束具の如くオオカミの手足や胴体に嵌まり、ギリギリと体を締め上げらる。

 苦悶の唸りとともに身をよじるオオカミを前に、累は腰のホルダーから短刀を抜き放った。

 雲間から注ぐ月光を照り返し、鋭い刃が暗闇に閃く。

「もらった――!」

 裂帛の叫び声とともに、累は青く輝くオオカミの胸元に短刀を叩き込んだ。

 湿った暗闇に青白い光が飛び散った。

 甲高い悲鳴を上げ、オオカミがのけぞる。地面に着地した累はすぐさまその後に飛び、苦し紛れに振り下ろされた獣の前足をかわした。

 ずんっと音を立て狼の爪が地面にめりこむ。

 直後、その足の輪郭が一瞬揺らいだ。

 胸元から青白い光をぼろぼろと零しつつ、オオカミの体が崩れていく。その毛並みはじょじょにかげろうのように揺らぎ、闇に溶けていった。

 崩壊を始めるオオカミを前に、累は指先を揃えて立てる。

綺羅きら――ッ!」

 オオカミの周囲に赤く輝く壁が現れた。

 光の壁は立方体を形成し、獣の体を閉じ込める。封じ込まれたオオカミは狂ったように吠え立て、壁を裏側から掻き毟った。

「――縛匣ばっこう!」

 累は叫び、十文字に宙を切る。

 立方体が一気に収縮。爆音とともに、肉片すら残さずオオカミの体を押し潰した。

 そうして、辺りに静寂が訪れた。

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