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蒐集少女の拾遺譚  作者: 伏見 七尾
Ⅰ.綺羅と累囚
15/58

13.

「その、私はまだ新米の部類なんだけど……そういうのってよくあることなの?」

 ちらちらと空太の様子をうかがいつつ、累は慎重に問いかけた。

 累にとって一番身近な蒐集師であるめぐるは人形に対して異様な執着を保っていたものの、生身の人間に対する関心は淡泊だった。

 だから他の蒐集師も同じように、人間に対して興味が薄いものだとばかり思っていた。

 ギャップに戸惑う累に対し、梨沙は深くうなずいた。

「あるある! なんていうの? キャッチアンドリリース?」

「ギブアンドテイク?」

「それー! 蒐集師はみんなそんな感じよ。協力できるとこは協力するワケ。あたしと空太が組んだのもさ、あたしらの欲しい物が同じ場所にあるからなのよ」

「ボ、ボクは梨沙さんのお願いならいつでも――」

「やっぱりさ、多人数の方が良いと思うのよねー」

 真っ赤な顔でつっかえながら話す空太の言葉を遮り、梨沙は扇子を振る。

「キラ集めようと思ったら喰虫とか怖いし? それにはざまも入るのが上手な人と、へったくそな人がいるわけだしさぁ」

「えっと……それはまぁ、わかったけど。でも……」

 まじないが苦手だという梨沙と空太は、累の力を借りれば赤匣屋敷に入れる。

 だが、累にとって梨沙達と組む利点はなんなのだろう。

「あたしさぁ、こう見えて格闘技得意なのよ」

 それを問おうとした累に対し、梨沙は空中に蹴りを繰り出して見せた。

 草が揺れ、空気が震える。武術についてはあまり知らない累でも、梨沙の実力はすでに達人の域に達している事を瞬時に理解できた。

 足を高々と挙げたままの姿勢を保ちつつ、梨沙はにやっと笑う。

「絶対役に立つし。それに空太も一応メカに強いしぃ?」

「さ、最新技術ならまかせてください……梨沙さんのために、頑張りました」

 空太は得意げな様子で、背中に背負ったリュックを揺らす。

 梨沙は足を下ろし、可愛らしく小首をかしげた。

「だから、ねっ? 入れてくれなぁい?」

「……うぅん」

 累は親指の爪を噛み、うなった。

 めぐると二人で蒐集を行ったことはある。だから複数での行動に抵抗があるわけではない。問題は、梨沙と空太がたった今出会ったばかりの蒐集師ということ。

 ただ、小柄な累は体術に関してはあまり自信がない。機械技術などサッパリだ。

「……なら、お願いするよ」

「あ、ありがとうございます!」

「まかせてぇ。――じゃ、はざまを開いてくれる?」

 ぱっと梨沙は微笑み、空太は何度も頭を下げた。

 累は小さくうなずくと、マギペンを手に梨沙に背を向けた。もうすでに辺りはだいぶ暗くなり、夏草の影で蛍がちらほらと飛んでいる。


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