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蒐集少女の拾遺譚  作者: 伏見 七尾
Ⅰ.綺羅と累囚
14/58

12.

 チャイナドレスの女――梨沙は言いながら、ずいずいと累に近づいてきた。

 累は思わず後ずさる。

「お、岡崎さん……ですか」

「梨沙って呼んで。あと敬語はやめてよ。――そんで、こっちが葵空太あおいくうた。あたし達と同じく蒐集師で、良いとこの坊ちゃん」

「同じくって――この子も蒐集師なんですか!?」

 空太が目を見開いた。

 その視線にややたじろぎつつ、累は梨沙と空太とを交互に見る。

「……梨沙さんは、私になにか用なの?」

「『さん』付けもいらない」

 言いながら、梨沙はパチンと扇子を閉じた。

「貴女、赤匣屋敷に入るんでしょ? だったらあたし達もご一緒しちゃおうかなーって」

「え、それは」

「あたしさ、まじないニガテなんだよね。空太もどっちかというと機械の方が得意だし。その機械もほとんど役に立たないし……」

「や、役に立たないとか言わないで下さい!」

 顔を真っ赤にして空太が首を振る。

「我が葵一族の功績により、キラ蒐集の技術は日々進歩しています! ボ、ボクのこの道具も、かならず梨沙さんのお役に立ちま――」

「はいはい。ま、いいよ」

 梨沙はしれっとした様子で空太の手を払いのける。

 そして身を屈めると、子供がおねだりをするときのような声音でたずねた。

「だから、さ……貴女について行っちゃダメ?」

「な――」

 なんだ、この馴れ馴れしい女は。

 絶句する累をよそに、梨沙は困ったように小首をかしげた。

「ダメ? 邪魔しないからさぁ。あたしはそんな大した物蒐集しないし。貴女と蒐集対象が被ったときにはちゃんと話し合うよ」

「ボクはどうすればいいんですか!」

「空太も同じように話し合えばいいじゃない」

 梨沙は苛立ったように扇子をぱちぱちと鳴らす。

 すると空太は大きく首を振った。

「さっき言ったじゃないですか! ボクはあの屋敷に手に入れなければならないモノがあるんです! それが、彼女の蒐集対象と被ってしまった場合はどうすれば――!」

「その時はその時でしょ。というか……あたしの言うことが聞けないの?」

 ぱちん、と梨沙が一際大きな音を立てて扇子を閉じた。

 すると空太はハッとした顔で首を振る。

「ち、違います! ごめんなさい!」

「空太はあたしの事、嫌い?」

 唇に扇子を当て、梨沙は悲しげな瞳で空太を見る。

 空太は真っ赤な顔になって、よりいっそう激しく首と手を横に振った。

「き、嫌いじゃないです! ボクは梨沙さんのためなら――!」

「そう。なら、黙っててよ」

 梨沙が素っ気なく言うと、空太はぐっと言葉を呑み込んだ。


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