10.
「ちょうどいい、せっかくだからこれ課題にしようか。はざまの中にある赤匣屋敷の探索。そしてできるならキラを持ってくること」
「か、課題って……」
「たまには先生らしい事しないとね。できなかったら夕飯抜きにするよ」
めぐるは作業机に座り、ポケットからシガレットケースを取り出した。
累は親指の爪を噛み、渋い表情で考え込んだ。
「いきなりそんなこと言われても……屋敷そのものがはざまの中にあるなら手の打ちようがない。私はまじないは得意だけど、そんな事は」
「いや、入れるよ。貴女なら。――これを使えば良い」
細い煙草をくわえながら、めぐるは近くの棚から何かを取り出した。
そして累の前に立ち、取り出した物を無造作に突き出す。
「これは……?」
それは光沢のある黒いケースだった。ちょうど掌にのるほどの大きさだ。
累は戸惑い、ケースとめぐるとを交互に見る。
「……いつになく、私に甘い気がするよ。なにか企んでる?」
「ちょっとだけ甘やかしたくなっただけ」
めぐるはせかすように、よりケースを近づけてくる。
累はおずおずと手を伸ばし、それを受け取った。重みはほとんど感じない。ひんやりとした金属の冷たさが掌に伝わってくる。
「蓋を開けて」
ケースに顔を近づけて細部まで観察する累に対し、めぐるが命令した。
累は警戒のまなざしを彼女に向ける。
「何が入ってる? 今までろくなものを受け取ったためしがないし、気になるんだけど」
「貴女に必要なもの。ほら、開けて」
せきたてるめぐるの言葉ににやや眉をしかめつつ、累は恐る恐る蓋を開けた。
「これ、は――」




