表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒐集少女の拾遺譚  作者: 伏見 七尾
Ⅰ.綺羅と累囚
11/58

9.

 累はじろっとめぐるを見上げる。

「……それで、この画家の屋敷がどうしたの」

「ん、あぁ。夜真は希代のコレクターだったって話が伝わっているんだ」

「コレクター……?」

 髪を掻き上げようとしていた累の手がぴたりと止まる。

 めぐるは画集の表紙を撫でながらうなずいた。

「そう。開国後、この国には様々な種類のコレクターが現れた。海外の文化を取り入れようとするもの、消えゆく日本の文物を守ろうとするもの、あるいは欲望のままに古今東西の珍品を蒐集するもの――夜真もその一人。かなりのコレクションを持っていたらしい」

「その中にキラがあるかもしれない、と?」

「というか、確実にあるだろうね。――どう、気にならない?」

 突然、めぐるの声が猫撫で声に変わった。

 それまで表情のなかった顔に微笑みを浮かべ、めぐるは累の頬に触れた。

 その指の冷たさに、累の背筋がぞくりと震える。

「……っ」

「夜真は不老不死の研究に取り憑かれていたらしくてね……古今東西、様々な宝物を集めていたそうだ。――その中には、どれだけのキラがあると思う?」

「夜真のコレクション……」

「中には貴女の好みのものもあるかもしれない――どう、行ってみたくない?」

「……なんか、いやに煽るね。逆に先生は興味ないの? これ、元々先生が茉莉花さんから聞いたネタでしょ? なんで私に教えてくれるの?」

「弟子が可愛いから」

「嘘吐け」

「嘘じゃないよ。ただそれよりも大きな理由はね、私も夜真あんまり好きじゃないんだよね。画風というか、色々」

「私も苦手だってのに……それでその赤匣屋敷って、どこにあるの?」

 累はじっとめぐるを睨んだ。

 めぐるは累の頬に手を這わせたまま、薄く笑った。

「結局乗るんだ? 素直じゃないね」

「まぁ、ちょっと気になるよ。どんなコレクションなんだろうなって――そこに私の欲しい物があるかもしれないし。それで、屋敷の地図とかないの?」

「地図はある。ただ、これだけでは意味がない」

「……どういうこと?」

 めぐるは累の顔から手を離すと、本棚へと歩いて行った。

 戻ってきたその手には、この街の地図を持っている。めぐるは累の前でそれを広げると、地図中のある箇所を指さした。

「赤匣屋敷はここにある。だけど、普通のやり方では入れない。屋敷内にある何かのキラの影響なのか、屋敷は普段はこの世界とは違う空間にある」

「たしか……キラが異空間を作るという怪異があったよね」

「うん。その空間を『はざま』という。良く覚えていたね、えらい」

 相変わらず淡々とした口調でめぐるが賞賛した。

 キラは大小様々な怪異を起こす。その最たるモノが『はざま』と呼ばれる、キラが異空間を作り出してしまう怪異だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ