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雲の細く

　書き始めはどうすればいいのだろう。趣味で小説擬きを書いているのだけれど、ラブレターは書いたことがない。仮にも恋愛小説ではあるけれど、書くとしても恋歌くらいのものである。

　それだったら、詩のようにして綴ればいいのではないだろうか。私ではなく主人公が書く手紙、そう思えば少しは書き易くなるかも知れない。しかし物語の中ならば全て私の想い通りになるが、現実はそう甘くない。紫式部として書かなければ、想いは届きもしないんだよね……。

　家に帰ってからも、私の頭は彼の事で埋め尽くされていた。このままじゃ不味い。だから告白して、きっぱり振られたいと思うんだ。それでも私に勇気が無くて。文章力すら、偽物なんじゃないかと思ってしまう。彼の事を想う度、私は狂って行く気がしてっ。

　どうして書けないんだろう。恥ずかしげもなく、恋愛小説なんかを書いてネット上に晒していると言うのに。結構大胆な事も、ネット上でなら出来る。それなのに、現実になるとラブレターすら書けないなんて。そんなの、きっと五分もあれば簡単に書ける。その筈なのに。