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ぬるくゆるび
だけど私は成長するの。一方的に思いを押し付けるような手紙じゃない。謝るだけの手紙じゃない。私を下に言い過ぎても、優しい道長様は、きっと対応に困ってしまうわ。そして優しくて優しくて、優しさに溢れた道長様ならば、自分勝手な私の手紙だとしても、優しく包み込んでくれてしまうのでしょう。
彼にとって、ラブレターなんて貰い慣れた物でしょう。衝撃的なまでのモテ方をしているから、毎日だって貰っているかもしれないわね。ラブレターを貰わないなんて、今日は珍しいな、みたいな状態なのでしょうね。そうよ、だって私とは生きている世界が違うのだから。でも卑屈になってはいけないわ。道長様に好きという気持ちを伝える、それが私の目的なんだもの。
もう季節は冬だし、別れの季節はすぐそこよ。道長様は卒業していってしまうんだわ。だから……、だからこの冬のうちに、ラブレターは渡さないといけない。渡すのに心の準備もタイミングも重要だから、早く書き終えていないといけないわね。タイミングを逃したら嫌だわ。よし、私は負けないわよ。絶対に、ね。